闘え乙女

課題「出会い」


タイトル『闘え乙女』


人物

篠塚春奈(15)新高校1年生

北村志月(16)高校2年生・春奈の先輩

篠塚佳苗(48)春奈の母

篠塚彰浩(51)春奈の父

保健の先生



〇篠塚家・春奈の部屋(朝)

   ベッドで篠塚春奈(15)が寝ている。

   春奈を揺さぶる篠塚佳苗(48)の手。

佳苗「はるちゃんもう朝よ。起きなさい」

春奈「ん~?」

   春奈、目を覚まし体を起こす。

佳苗「朝ごはんできてるから降りてきなさい」

   佳苗、退室する。突如鳴り響くアラー

   ム。春奈が枕元の目覚まし時計を取る

   と、7時ちょうど。

春奈「はぁ……」

   アラームを止めベッドから出る。


〇篠塚家・リビング(朝)

   新聞を読むワイシャツ姿の篠塚彰浩

   (51)。お皿にフレンチトーストを盛

   る佳苗。そこへ制服に着替えた春奈が

   やってくる。髪型はポニーテール。

篠塚「おはよう」

春奈「おはようございます……。お母さん私

 自分で起きるから起こさなくていいって言

 ったよね」

   と、言いながら席に着く。

佳苗「そうだっけ? まあいいじゃない」

春奈「よくない! もう今日から高校生なん

 だよ?」

佳苗「そうね。入学式なんだからもっと女の

 子らしい髪型にしたら? ほら――」

  と、春奈の後ろにつき髪に触れる。

春奈「やめて! はぁ、もう、私行くから」

   春奈、立ち上がる。

佳苗「食べないの?」

春奈「いい。お腹すいてない」

篠塚「学校まで送ろうか」

春奈「いい!」

佳苗「でも――」

春奈「あーもう! 駅からすぐだし、それく

 らい一人で大丈夫だから!」


〇学校前・坂の下(朝)

   困惑する春奈の顔。

春奈「これは、大丈夫じゃなかったかも……」

   目の前には急こう配の坂が伸びている。

   春奈、首を横に振り、覚悟を決めた表

   情をして上り始める。

×  ×  ×

   苦しそうな表情で上る春奈。足取りは

   重く汗だく。息を切らして膝に手をつ

   く。再び歩き始めるが、

春奈「っ……!」

   顔を歪め、足を見る。ローファーを脱

   ぐと、かかとの方が赤くなっている。

佳苗(声)「スニーカーなんかやめときなさ

 い。女の子なんだからローファーがいいわ

 よ」

春奈「……いつもそうやって――」

   視界がぼやけ、大きく揺らぐ。そのま

   ま気を失ってしまう。


〇学校・保健室(朝)

   ベッドで目を覚ます春奈。

保健の先生「あ、おきた。体調はどう?」

   春奈、体を起こす。

保健の先生「軽い貧血ね」

   春奈、首にかかったタオルに気が付く。

   広げると、「闘う乙女、ここにあり!

    ××高校女子ボクシング部」とある。

保健の先生「女子ボクシング部の子があなた

 を背負ってきたのよ。たしか、2年の北村

 さんだったかしら」

春奈「女子ボクシング……」

保健の先生「この時間だったらまだ朝練中だ

 と思うわよ。校舎裏に部室があるわ」

春奈「ありがとうございます……」

   春奈、再びタオルに視線を落とす。


〇校舎裏・ボクシング部部室前(朝)

   扉の前に佇む春奈。激しいスパーリン

   グや靴の擦れる音が聞こえる。恐る恐

   る扉に手をかけ開ける。

春奈「失礼しま――」

   ドパァンと激しい音。サンドバックに

   渾身の右ストレートを放つ北村志月

   (16)が視界に飛び込んでくる。きら

   きらと飛び散る汗、大きく揺れるサン

   ドバッグ。息をのむ春奈。

志月「ふー! あれ、お客さんじゃん。って、

 朝の君か! もう大丈夫?」

   汗を拭き、さわやかに志月が微笑む。

   春奈、黙ってしまってぎゅっとタオル

   を握る。

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脚本演習・超短編シナリオ 四二一 @yoniichi421

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