月の無い夜も月は綺麗で

課題「一年後」


タイトル『月の無い夜も月は綺麗で』


人物

浜口めぐみ(19)天文サークルの新入生

園田敦也(20)天文サークルの先輩

天文サークルのメンバー


○キャンプ場(夜)

   大きなテントの前で、酒を飲み騒ぐ大

   学生たち。テントには「天文サークル

   ペルセウス座流星群の会2021」と

   書かれたホワイトボードがつるされて

   いる。

   焚火で周囲は煌々と照らされている。

   そこから少し離れた明かりの届かない

   場所にて、園田敦也(20)が折りたた

   み椅子の前に三脚を組み立てカメラを

   セッティングしている。

   その横に立ち園田の様子をうかがう浜

   口めぐみ(19)。

園田「(セッティングをしながら)いいの?」

めぐみ「はい?」

園田「みんなと飲んで来なよ」

めぐみ「えっと……いいんです。私は、星が

 好きで入ったので……」

園田「そっか」

   園田、黙々と作業を続ける。横でそわ

   そわするめぐみ。夜空に向けたカメラ、

   そのファインダーを園田が覗く。

園田「あー……」

   ファインダーから離れ、空を見上げる。

   園田の視線の先には満月に近い月。

   めぐみもつられ月を見る。めぐみ、

   はっとして、むっと口を結び、

めぐみ「つ、月が綺麗ですね~なんて……」

園田「ああほんと」

   めぐみ、もじもじしてうつむく。

園田「最悪だ」

めぐみ「(バッと顔を上げ)へぇっ!?」

園田「これじゃ見えて4等星かな。来年に期

 待だな」

めぐみ「あ、ああ、ああ! そうですヨネー」

   苦笑するめぐみ。それをじっと見る園

   田。月明かりにぼんやり照らされ、二

   人の目が合う。

園田「興味ないなら、無理に合わせなくてい

 い」

   めぐみ、はっとして

めぐみ「い、いや、興味あります! 好きで

 す! 星」

   園田、椅子に腰を下ろし空を見上げる。

   めぐみも慌てて隣の椅子に座る。

園田「(空を指さし)あれは何座?」

めぐみ「えっ、おっ、オリオン……?」

園田「それは冬の星座。あれは白鳥座。今日

 見に来たのは何?」

めぐみ「えっと、ぺ~、ぺる……」

園田「ペルセウス座流星群」

めぐみ「……すみません」

園田「好きならさ、まずはそれについて知ら

 ないと」

めぐみ「はい……」

園田「……例えば、俺はショートボブが好き」

めぐみ「(園田の方を向き)はいっ!?」

園田「あっ流れた」

めぐみ「えぇっ!? (慌てて空を向く)。い

 ま流れました?」

園田「嘘」

めぐみ「えー!?」

   月が浮かび、少し白みがかった星空。


〇同・一年後(夜)

   月のない、満天の星空。

   並んで椅子に座るショートボブのめ

   ぐみと園田。

めぐみ「あっいま流れましたね。デネブの横」

園田「うん、見えた」

めぐみ「今年は極大もいい時間ですし。条件

 よくてよかったですね」

園田「だな」

めぐみ「火球とか見れるかな!」

園田「ふふ……見れるといいね」

   暗闇の中、めぐみの方を向く園田。

   しばらく見てから再び空を向く。

園田「確かに、月が綺麗だね」

めぐみ「えー……えっ!?(慌てて園田の方を

 向く)」

   一つ星が流れる。

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