60点の男

課題「魅力ある叔父さん」


タイトル『60点の男』


人物

荒木玲奈(16)女子高生

水谷翔悟(30)玲奈の叔父

女子大生くらいの女性二人


○渋谷・ハチ公前(夕)

   ベンチに座りスマホの画面を見つめる、

   制服姿の荒木玲奈(16)。

   「山本先輩」とのラインのトーク画面。

   相手から「ごめん」

   鼻をすすり、涙を拭う玲奈。

水谷(声)「あれ? 玲奈ちゃん?」

   玲奈、振り向くとそこに少しチャラつ

   いた格好の水谷翔悟(30)

水谷「おひさ~」

   ゲッ、というように顔をしかめる玲奈。


〇アミューズメント施設・ダーツ場(夕)

   筐体に「野球投げ禁止」の張り紙。

   玲奈、下手な野球投げでダーツを投げ

   る。ボードに刺さる三本目。全てバラ

   バラの位置。水谷がやってくる。

水谷「姉貴に連絡しといたよ。8時には帰っ

 て来いってさ」

玲奈「(ボードに向かいながら)私もさっき

 ママにラインした。ご飯おごってもらえって」

水谷「嘘マジ?」

玲奈「んっ。マジマジ。んんっ」

   玲奈、ダーツを抜こうとするがなかな

   か抜けない。

水谷(声)「ガッと掴んでグッてひねるように」

   玲奈、力づくで引き抜く。

水谷(声)「良ければダーツ教えようか?」

玲奈「いい」

   玲奈、振り返ると水谷が隣の女子大生

   くらいの女性二人をナンパしている。

   軽くあしらわれる水谷。水谷が戻って

   くるとしかめ面の玲奈が立っている。

玲奈「おじさん、相変わらずだね」

水谷「は~やれやれ。最近の子は年上の魅力

 ってもんをわかってないねぇ」

玲奈「おじさん全然年上感ないから。バカな

 弟って感じ」

水谷「なっ!? 姉貴からなんか聞いたな?」

玲奈「別に」

   と、野球投げで一本投げる。真ん中か

   ら少しずれた位置に刺さる。

水谷「……なんかイヤなことあった?」

玲奈「……別にっ」

   二本目を投げる。真ん中から大きくず

   れた位置。

水谷「バカな弟が相談のったげようか」

玲奈「あーもう! うっさいなあ」

   玲奈、三本目を構える。投げようと引

   いた手を、水谷が掴む。

水谷「ダメダメそんなんじゃ」

玲奈「だからいいって」

   水谷、玲奈の後ろにピッタリとつき、

   正しいフォームに構えなおさせる。

水谷「しっかり的を見て。ダーツはその視線

 に合わせる。力を抜いて、肘は90度」

   水谷の手が玲奈の手と重なる。水谷が

   顔を玲奈に寄せ、的を見る。

   玲奈、黙り込み、つばを飲み込む。

水谷「……よし」

   玲奈、綺麗なフォームで投げるが、す

   っぽ抜け上の方に刺さる。

玲奈「……ダメじゃん」

水谷「いや……大当たり!」

   20のトリプルに刺さっている。

水谷「知ってる? ど真ん中よりも、あそこ

 の方が得点高いんだ」

玲奈「……あっそ」

   少し早歩きでボードの方に向かう玲奈

   の後ろ姿。それをみて微笑む水谷。

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