第41話 幸せな結末と始まり 

卒業式が無事に終わり、レイラ様が私の方に来た。

「婚約おめでとうございます、ルイーゼ様。不思議なんだけど、婚約発表されるまでなんの根拠もないのに、私、フリップ王子様と結婚するのではと思っていたの」

それってお母様と一緒じゃないかしら。

晴れやかな顔をしているレイラ様が、

「これからは、貴族の一員として、王族とルイーゼ様を支えます。私は、騎士学校に行って更に成長するわ。あなたは王妃教育でしょう。お互い頑張っていきましょうね」

と言った。私は、

「ありがとうございます、レイラ様もご卒業おめでとうございます。挫けそうな時手紙を書いても良いですか?」

と言うと、

「もちろんよ」

と言ってくれた。二人で笑い別れた。本当の事はわからない、恋をしたのかも知れない。考えても下を向くのはやめようと思う。落ち込んで辛い時は、こうやって相談していこう。


これがゲームのエンディングなんだろうか?

今私の目の前には、国王陛下がいて、その横に王妃様がいる。

私は、跪き、教会長の話を聞いている。私の横には、フリップ王子様がいて、跪いている。話が終わり、国王陛下から、王冠とティアラが授与された。

これが婚約式らしい。

お父様とお母様は、傍らにいて笑っている。

これは、夢と言われた方が納得できる。

フリップ王子様は、私の手を取り、握る。人の温もりを感じる。これは、現実だ。

私は、フリップ王子様の目を見る。私が映っている。私は、びっくり顔をしてるみたいだ。

音楽も聞こえない。

花も天井から降ってこない。

もちろんスポットライトなんてない。


これは、ゲームでゲームじゃないんだと一人で納得していた。

「どうした?ルイーゼ」

とフリップ王子様が聞いた。

「フリップ様、ゲームだ物語だと言われましたが、現実は、天井から花は降らないし、音楽もかからない、もちろん光輝いているなんて事もないんだと思ったんです」

「あぁ、レガシー王子や、サリバン、ライラ嬢が話していたストーリーだかイベントの話か」

「はい、サリバン様はゲームの終わり、エンディングだと、決めるのは君だと言われました。これは、決めたに当てはまらないのでしょうか?」

と言えば、フリップ王子様は、

「エンディングって終わりって事だろう。いやいや終わらないだろう、だってまだ、私達の代にもなってないじゃないか、王太子にも国王にもなってない。ルイーゼだってそうだろう、まだ婚約者だし、これから王太子妃を経て王妃そして行く末は、皇后」


ちょっと待て、凄く大事なとこを私、忘れていた気がする。

「まだ婚約者だし」

乙女ゲームの定番と言えば

『婚約破棄』

『ざまぁ』

このゲームにあるかわからないけど、まだお約束を誰も体験していないかも。

それにどんどん役職進化していくし、まだまだ続くキャラの上乗せを考えると、武者振るいのような震えが来た。すぐにお父様に確認しなければと思えば、フリップ王子が私を捉えた。私の頬に、フリップ王子の唇が当たる。

「余計なこと考えすぎ、今日は、私達の婚約式だよ」

傍らで

「まぁまぁ、あらぁ」

と言っているお母様。

確かに今日は、婚約式。

不安はあるけど、今日は、笑顔で。また後でこれからを考えましょう。


翌日から王妃教育は激化した。

歴史、他国の貿易、外国語、家名、主要人物、地理、礼儀作法、ダンス

お母様の比じゃないほど、深く、そして広く学ぶ。そんな短い休みを王妃教育に捧げ、間に合わないじゃないかなんて、言わないでー。

「ヴルフゥー」

慰めてくれるバードに癒されながら、日々過ごした。


「おはようございます」

と言えば、ライラさんが近づいてきて、

「入学式ですね」

と言われた。受け付の資料に目を通しながら、

「だから、入学式ですよルイーゼ様。始まりですよ。ワクワクしますね」

「何が?」

「二周目じゃないですか?次こそは私がヒロインでありたいですね」

とライラさんは、空の向こうを見ながら話し、私は、慌て、

「二周目って何?ゲームって終わったんでしょう」

と言えば、ライラさんは、笑って

「まだまだ、これから」

と言った。

入学式に関係者入り口から入るフリップ王子様と挨拶を交わし、今日から留学するため連れて来たガルバン共和国の王子、シェン王子が笑った。

「初めまして、シェン・ガルバンです。よろしくお願いします。遺恨があるようでしたらマリノティス侯爵令嬢には謝罪します」

と言われた。

頭の中に選択肢が浮かんだ。


謝罪を受け入れる

謝罪を拒否する


無理です、もう無理です。

「シェン王子様、なんか色々わからないことがありましたら私含め生徒会メンバーが協力します。謝罪だなんだと言わないでください。同じ学生です。勘弁してください。ごめんなさい」

と言って扉とは逆に行けば、門の近くにキョロキョロしている新入生がいて

「おはようございます、入学式までご案内します」

と声をかければ、

「なんで最初に会うのが悪役令嬢の娘なの」

と呟いた。そして私の前で転ぶ。


ハンカチを出して助ける

無視して行く


頭の中に選択肢が出る。

「ライラさん、ライラさん来て下さい」

と大きな声で受付けにいる彼女を呼んだ。

「どうしたの?ルイーゼ様、そんな大きな声で」

と言うやいなや、転んでいる新入生を見た。

にやりと笑ったライラさん。

「ライバル発見」

と言うとライラさんは、

「自称ヒロイン?誰狙いとかある?被りたくないから決まってたら教えて」

目をぱちくりする新入生。

「平民のライラ、転生者ーー」

と叫んでた。


二つとも選択肢は消えたけど、ゲーム終わってないじゃないですか?二周目って入学式が始まりなの?

私は、婚約破棄、ざまぁに怯える令嬢になるのか…

続くじゃなく続かないから、

「バード」

と呼べば腕に止まる大きな鳥

「ヴルフゥー」

「あぁ大好きバード、今日も素敵な羽心地よ。慰めて」

と言うと後ろから、

「バードばっかりずるいぞ」

といつの間にかいた王子様。

すると、バードがまたフリップ王子の頭を突く。

「痛いぞバード、それで何を慰めてって言っているんだ?」

と私を見る。

「また、ゲームの始まりだの入学式がスタートでまた転生者がいて、ライラさんが二周目とか言って、頭の中に選択肢が出て、婚約破棄でざまぁがあるかもで、それでヒロインだのライバルだのがあって…」

目の前にはフリップ王子様の顔があって、


私の唇は、塞がれた。


どこかで悲鳴が聞こえるような、ただそれから何も考えられなくなって…


「うぷッ、はあ、はあ、息ができない」

「大丈夫さ、始まっても私達は私達、毎日が同じようで同じじゃない。二人で考えよう」

「良い事言っているのに、もう、こんな学園で生徒もいるのに、突然キスするなんて、驚きですよ」

と言えば、

「印っていうか、もうこちらは相手がいるのでご遠慮してください的なやつだよ。それに、学園じゃなくて人前でもないなら、いつでも良いってことかな」

と笑っている。

全くこの王子は、これから大変かも知れないってわかってないのか?あんな去年大変な事ばかりあったっていうのに。次は、私が大変なことばかりなんてあり得る。


でも印か。もしゲームをしてる人がいるなら、私とフリップ王子様はご遠慮してください。

「えい」

と背伸びして私は、フリップ王子の唇を奪う。

どこかで悲鳴と笑い声と賑やかしが聞こえる。

頭の上には、ピンク色の花が降って来た。


「これって桜?」

風が運ぶ花びらがまるで太陽の光を浴びてキラキラとエフェクトされる。ピンク色の花びらは一体何処からやって来た?

「意外に大胆だなルイーゼ」

と言われ、

「負けられませんからね。元悪役令嬢の娘としては」

と言い、二人で笑いあった。


これが、エンディングなのかオープニングなのか一体どちらなんでしょう?

ただ春の景色は輝いて、私達は笑っている。




〜 fin〜




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キャラの上乗せが過分です 兎乃マロン @usaginomaron

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