第40話 フリップside

サマーパーティー終了後


「なぁバード、なんか少しは興味持つよな。普通王子が花と手紙渡したら、普通、もう少し。生徒会に引き入れたのだって興味があったし、知ってもらいたかったから」

執務室の扉がバタンと開いて、フランツが

「何ぶつぶつ言っているんだフリップ」

「執務がこれでもかって溜まったから嘆いているんだろう」

とソリオも言う。

俺の机を見て、

「何、令嬢からの手紙かよ、流石王子様おもてになる」

と言われた。

「手紙じゃない、ただのお礼の返事」

と言えば、ソリオも

「あぁ、ルイーゼ嬢か。いや、驚いたな、あの婦人、この前までフリップ偽物に夢中だったミリナ嬢の母親だってな。とんだとばっちりだな。しかしルイーゼ嬢は、何故あの三つ編みで学園に来ているんだろう。サマーパーティーのドレス姿、似合ってたな」

「フリップ、見惚れていて、サリバンに美味しいところ持っていかれて怒っていたんだよ」

とフランツも言った。

「俺のことはいい、山のように高い書類が待ってる」

と言えば、フランツが嫌な顔をしてし、

「デマルシア帝国から手紙が来てた。たぶんナタリア王女失敗で双子の王子と王女が来ると言う内容だろうな」

「どこもかしこも隙あらば、食ってやろうとするな、捕食者ばかりだ」

ソリオが、

「マゼラン侯爵を誰かが逃がしたな。背後は誰だろうな」

と言った。

「ガルバン共和国だろう。あそこの山越えだろう。カトロ侯爵、マリノティス伯爵、トルネス公爵…バードに証拠を掴んで来てもらうつもりでいる」

「デマルシア帝国も動いてくるし、今年は、なんかとんでもない事が起きそうだな、最悪は、戦争だな」

「あぁ」



「大変だ、バードが怪我をして戻ってきた、大丈夫かバード?手当されてる」

「ヴルフゥー」

「元気だな、良かった」

「すぐ飛べるな、流石だバード。窓叩いてどうした?まさか外に出たいのか、大丈夫なのか?行きたそうにするなよ。わかった、じゃあ一応お礼状を持っててくれ」

「ヴルフゥー」

「なんだよ、向こうで美味しい餌でも貰ったか?」


「ヴルフゥー」

「帰って来たなバード。何だ、お気遣いしないでか、ありがたいなバード」


「おい、本当にやるのか仮面パーティー?」

とフランツが言う。

「あぁ、レガシー王子が、仮面パーティーがイベントだと言っていた。それで、ゲーム関係者は油断するし、動きが活発になれば、尻尾が掴めると言う。事件関与は、カトロ侯爵、最近養子縁組をした。それも手紙に書かれた通りだ。サリバンが関係していると言うし、明日から執務を助けてくれる、どちらを信じるかも含めて、見張る」

「わかったフリップがやるなら変更なしだ」

とフランツが言った。

「あの双子だが、レガシー王子が女装してクリスティーナ王女で一年の教室で、クリスティーナ王女は、レガシー王子として二年の教室に行くって、クリスティーナ王女の方に従者として付く」

「あぁ、わかった、任せる。レガシー王子がそこまで何を警戒しているのかわからないが、私達も警戒はしよう」


仮面パーティー

「レガシー王子、悪い、腹が痛くてパーティーに出られない。ファーストダンス頼む」

と言うと、レガシー王子は、肩を窄めて、

「わかった今回は、貸しだ。しっかり様子を見ておけよ。でも私は、妹、クリスティーナを勧めるよ、ヒロインも悪役令嬢もキャラは決まっている。注意しろよ王子様」

と言ってきた。


ゲームだヒロインだ悪役令嬢だと言われて頭がおかしくなりそうだ。でもレガシー王子がいう結末に戦争はお互い避けたいと言った言葉は、信じられると思った。きな臭さは昔からある。


サリバンの動きを見ていると、バードが旋回している。珍しいあんな近くでアピールするなんて。

慌て外庭に出る。そこには令嬢がいて、バードと呼ぶ。

声の感じ、知ってる声だ。

怪我の手当か、バードが随分と甘えている。初めてだ。せっかくなので踊ろう。

この手、どこかで、この背の高さ髪の色

『ルイーゼ嬢』

彼女とサマーパーティーでは、踊れなかった、それどころじゃなかったからな。しかし踊りやすい、伯爵令嬢だが、基礎知識もダンスもレベルが高い。なんて考えてると、曲が終わった。

すると、バードが突く、なんだ何だ。バードめ、かなり気に入ったな。もう一曲試しに誘ってみるか。

「バードがもう一曲踊りたいみたいなんだ。もう一曲踊ってくれませんか?」

と誘うと、明らかに迷っている。特別だと勘違いされてしまうからだ。これでルイーゼ嬢がサリバンが好きなら断るだろう。

そんな運試しみたいなものだった。


君は、迷いながらも俺の手を取った。

信じられないぐらい嬉しかったんだ。

楽しいダンスだった。

バードと三人仮面で見えないけど、笑いが絶えない世界があるって気がついたんだ。

あの日、あの時、俺は、どうしても君を手にしたいと心から思った。どんな事があっても。


デマルシア帝国は当分関与してこないだろう、サリバンからナタリア王女の署名入り書類をもらい、警告は充分出来た。同様にガルバン共和国もだ。

良い取引が出来た。


だから安心して明日、婚約式を迎える、もちろんただの約束だけど、心から、嬉しい。あの時マリノティス侯爵と約束は出来なかったが、絶対守ると言えるようにしたい。

そして、

「バード、お前には感謝だよ、流石兄弟。ナイスアシストだった」

ととびきり上等な肉をプレゼントした。

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