第39話 婚約者内定発表

冬季休暇明けにサリバン様が戻って、お母様のご実家の方の子爵位を継ぐ予定だと話した。初め、腫れ物に触るような扱いだったが、フリップ王子様が学園に現れれば、輪の中心になっていた。

そこにソリオ様とフランツ様もいた。フランツ様は学園にこのまま在籍し、フリップ王子の側近として学生生活をするらしい。

デマルシア帝国のレガシー王子とクリスティーナ王女は、自分の国が大変忙しいらしく、帰国したまま留学は終了。ナタリア王女は、どこか遠い国にお嫁に行くと聞いた。

デマルシア帝国は、金銭的にも食糧支援が必要なほど不作だったのかなと思ったが、お父様は、首を振っただけで教えてはくれない。

何が起こったのかわからないが、お父様の時代もデマルシア帝国の王子と王女が突然帰国した、ゲームの強制力?サリバン様がゲームの終わりを告げたし、関係あるのかわからない。


フリップ王子様が学園に来るようになってしばらくして、我が家に手紙が届いた。

『婚約申し込み』


驚いた。いえ、期待していたと思う。あの日サリバン様が言った、ゲームの終わり、エンディングの選択肢は君だとの言葉に淡い期待を寄せていた。

あの日から考えていた。

私に出来る事、私は、見目はお母様に似ているけど、性格は、地味だしオーラはない。きっと他国の王女様達に貶されてしまうかもしれない。

でも見目だけで、オーラだけで、国を守れない、民を守れない、フリップ王子様を見て、あんな疲れた顔をしながら駆けずり回り、必死になって動いていた。

見かけだけで判断しているのは、私だと気づいた。

私が出来る事、魔法だって領地で役に立った。知識を深めれば、フリップ王子様の役に立つかもしれない。

彼の横に立つ人は、一緒に努力出来る人だと気づいた。

この答えを出すまで五日もかかり、お母様が、ずっと気にしてくれた。申し込みが来た時も高笑いもなかった。お父様、お母様がずっと寄り添って、

「自分の未来をゆっくり、自分が正しいと思う方でいい」

と言ってくれた。

本当に二人の娘で良かったと心から思った。

二人に自分の思いを告げ、数日経つとフリップ王子様からお茶会の誘いがあった。


私達は、Aクラスのクラスメートで生徒会のメンバーという関係。

まだ正式でない事を口にはしない。

だから私もその件に触れないし、いつも通りに過ごしている。…つもりだ。


「すいません、ルイーゼ様少しよろしいですか?」

とライラさんに生徒会の帰り、呼ばれた。

「いかがしましたか?」

「ずるいです、ルイーゼ様」

と突然言われた。

「何がかしら?」

と聞くと、ライラさんは、

「憑き物が落ちたかのように、穏やかになって、悪役令嬢から脱皮した王妃様のような気品が見えます。内定されたんですか?」

「えっ、気品?出てないけど」

申し込みと内定は違うわよね。気品なんて私には出てないと思うけど。

「でも、ルイーゼ様に決まりですね。フリップ王子様は、いつもルイーゼ様を見ているもの」

「…ライラさん、あの、ライバル宣言」

というと

「やってみたかっただけですよ、なんかカッコいいじゃないですか?たぶんフリップ王子様を救出した時からルイーゼ様はヒロインだったんです。自信がないから、影が薄いし、存在感ないしで、全然レイラ様の方が光輝いていたから見誤ったし。でもルイーゼ様は、民の為になる方だと同じ平民から聞きました。柵の補強をしたり芋洗いもしたりって。この国にとって貴女ほど相応しい王妃候補はいません。私もこの国が良くなるように尽くしてみます。もちろん、成り上がりも諦めていませんよ。サリバン様と言っているんです、転生者舐めんなよって」


涙が出てきた。欲しい言葉、勇気が出る言葉をくれた。

「ありがとう、とっても嬉しい」

これを言うのが精一杯だった。


そして王宮の庭園での宣言を貰い、私は、王妃教育のスタートも切る。そして翌日、一斉に王宮から内達が配布され、私、ルイーゼ・マリノティス侯爵令嬢は、フリップ第一王子の婚約者に内定しました。


明日は卒業式です。

生徒会メンバーは、ニヤニヤしています。

最終準備で忙しいはずです。

言いたいことあればはっきり言ってと思ったら、

「婚約おめでとうございます」

と言って、花束をくれた。

「私、卒業しませんけど」

と言って、また泣いた。

教室に入ると、またシーンとなって

「ルイーゼ様おめでとうございます」

とまさかAクラスのみんなから言われると思わなかった。中央で笑ってるライラさんは、してやったりの顔をしていた。フリップ王子は、卒業式の生徒代表の言葉や式典の確認もあるので教室には来なかったけど、みんなに祝われたことを話したいと思った。


私は自分が思っていた以上にこの婚約内定を祝福されていることに驚いた。

マリノティス領は、今日も祭りらしい。

こんな風に声をかけて貰えるなんて、祝って貰えるなんて、輪の中心から外れている私には信じられない事だ。私には沢山キャラが乗っていて、それがなかったらとずっと考えていた。

見向きもされないと落ち込んでいた。

私なりでいいと努力していくことで、作られる人との関係性もあると知れた。

もちろん、キャラが乗ってなかったら、フリップ王子様は、私を見つけてくれないかもしれない。

でもそれだけが全てではない。

誰もがヒロインでライバル令嬢で悪役令嬢にもなり得る。私の生きる道を見失わなければいいのだ。

卒業式に生徒代表の挨拶をしている王子様を見て思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る