第7話 王子様御一行は悪役です

「目覚めたか」

と部屋に入ってきたフリップ王子様達。

「お前にはこいつの世話をしてもらう」

と檻を指す。

半分にやけているフリップ王子様とマーク様、しかしカリバ様は、厳しい顔つきをしている。

何故だろう、絶対こいつらは悪役だとわかる言動。

自身を守る為わからないが、怖がるふりをして首を横に振る。

そして、わざと声を出した。


「ウッウッ」

私の中で魔法が強気になっていた、それを知られてはいけない。

「こいつも短そうだな、いつまでもつか、壊れやすそうだもんな、ただのガリ勉は」

とマーク様が言った。前に誰かいたのか、行方不明って言えばアリーナ・タオ!

「悪役令嬢はどうせ物語から退場していくわけだから早いか遅いかの違いだ」

と笑って言うマーク様、それに一緒に笑うフリップ王子様。何か違和感を感じるが、カリバ様の顔は厳しいままだ。


一体何だ、これは。

場を回しているのは、マーク様。それを楽しんでいるのは、フリップ王子様そして横につくカリバ様。


「臭いね、まぁ2か月以上風呂に入らなければ、臭いよな、あの令嬢は怖がるばかりで、お世話してくれず壊れちゃったしな。その前の孤児は随分世話してくれたけど、逃げちゃったしな、次はガリ勉だよ、お世話してくれるといいなぁ?」

とマーク様は声高らかに言う。

「まだ、頑張っちゃう感じか、返事ぐらいしろよ」

と檻を蹴る。


ガシャーン

響き渡る鉄製の音。


目が慣れてきた黒い塊は、人の形をしていて手と足に何か括りつけられているように固定されている。


「面白くないな、早く譲れよ」

と一言言ってフリップ王子様が立ち上がり出て行く。カリバ様が私の口の布を取り、手の縛られ紐を外し出て行く。マーク様が

「下に下男と下女がいる。食事はそいつらから貰え、逃げることは出来ないぞ。足についている鉄球の重さは、3k gはある」

目を見ずに震えているようにする。

こんな鉄球はどうにでもなる。まず、逃げだす準備が必要だ。下男と下女の存在も気にはなる。

そして言いたいことだけ言ってマーク様は出て行った。この部屋に窓がない。窓に板がはめられている。


「まず、重くて足が痺れるわ、この鉄球を外しましょう」

と言って、気を溜めて鎖の一部を握り、柔らかくしてから鍵穴に押し込み、鍵を作る。

「ガチャリ」

去年庭師の倉庫で練習した鍵あけの技術、役に立ったな、アクション系って誘拐、盗賊かなぁと検討をしていた。当たりたくなかったけど、お父様も知ってはいるから慌ててはいないだろう。

身軽になったところで時刻は知りたい。打ちつけられた窓の一部を柔らかくして捲る。

夕方が終わりかけ夜になりそうだ。

次にこの檻に閉じ込められた人だ。

とにかく臭い。しかし

「すいません、あなたはどちら様ですか?何故閉じ込められているのですか?」

と聞くと、声が掠れてる。

水も飲んでないのかと檻を見ると鍋のようなものと皿のようなものが入っていた。

「これで食事を取らされているのね」

納得して、まず檻の奥3本を柔らかくして端に寄せ、出入りがギリギリ出来る大きさに調整した。鍋と皿を取り、捕まった人はとても驚いていた。

「とりあえず話すのは待って、衛生的にもよくないわ、水、着替え、身体を拭くものを探す。私が捕まり戻らない場合、ここから逃げだすチャンスがあれば逃げて」

と言って扉に耳を当て、人がいないことを確認したら、ノブを柔らかくして押し鍵ごとずらして外に出る。ログハウスのような場所だ。2階に部屋は、もう一つ、ゆっくり下に降りると玄関だ。そして音がする。調理場からか男と女の罵り合いだ。

上に戻る。もう一つの部屋を見る。鍵も開いていて水差しがある。クローゼットに下男と下女のものか服もある。拝借して戻った。こちらの部屋の扉鍵を戻し、水差しを捕われている人に渡す前に、手枷の錠前を柔らかくして外す。驚いているぽいが構わず水差しを渡し、窓に行く。息を止めるほど臭い。窓を開けて空気を入れ替える。


「君は、誰?」

と掠れた声で話す男の人。

「私は、ルイーゼ・マリノティオです。セントバル学園の生徒で捕まりました」

また音がする。

慌てて皿と鍋を檻に入れ、軽く檻を治して、窓に打ちつけられた木を直し、破れたソファーで膝を抱えて錠前がついているかのように見せる。

下男と下女の服は破れたソファーに隠した。


「ほらご飯だ。ここに置くぞ。二人で分け合え。檻の鍵だ。後でくるからな」


と下男がドンと扉の近くに桶に入った水と鍋に入ったスープとパンを置いた。

そしてまた鍵を閉めた。


顔を上げてないのでどんな人か見てないが、靴を見た限り平民より少し良い靴に見えた。まずは桶の水を檻に運び、鍵を開け、足の錠前も柔らかくして外す。女ものの服の方を濡らして身体を拭いてもらい、下男の服に着替えてもらう。

食事はそのあとだ。

窓を開けて空気の入れ替えをしつつあの甘い香は、扉の端に置く。身体を拭いている間に水差しをもう一つの部屋に戻しに行く。


部屋に戻ると余った水で頭も洗ったようで檻の中はビチャビチャだ。

「凄い事になってる」

と言うと月明かりに照らされ檻から出てきた人物は、フリップ王子様にそっくりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る