第3話 読書の人


そう、今、一花はバスで魔法使いの隣の席に乗っていた。


あれから、何故定期を持っていたのかを聞いてもニコリと微笑むだけの彼だったが、バスに乗り込むと何故か一花をエスコートし、2人席の奥に座らせた。そして、その横に当たり前のように彼が座った。


彼は、席に着くとすぐに鞄から本を取り出して読みはじめたので、一花は大人しく窓の外をボーっと見ていた。


学校に着いたら比奈と同じクラスになれたか確認しよ。新しい友達も作らなきゃな〜。

そういや、今日この時間にバス乗ってるってことは、この人も同じ学年なのかな。



チラリと彼を見ると、熱心に小説を読んでいる。

わざわざ革のカバーに包まれたその本は、重厚感があり、難しそうな本に見えた。

分厚い本を読んでいる人というのは、急に賢そうに見えるものだ。

何読んでるんだろ。頭良さそうだなあ。


「その本、難しそうだね。」


一花が話しかけると、彼はかなり驚いたようにこちらを見た。

そして、照れくさそうに笑った。


「そうかな。これくらい誰だって読むよ。」


そう言って彼は足を組んだ。

可愛い笑顔を見せた彼に、一花はドギマギした。

そのスラリと伸びた足すら、何だかかっこよく見えてくる。

一花は、緩む頬に自分でも気づいてはいなかった。

窓の外に視線を移して「そっか。」と呟いた。




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