45話 企画

 父親との話がまとまった? ことで千鶴は正式に俺たちの活動メンバーになることを許された。

 とはいえこの話はまだ俺たちだけでの話なので本決まりとするには康介や〈にゃん太〉先生の許可をもらう必要がある。そのことを千鶴に伝えたところ早速今晩話そうということになった。

 

 「ということで千鶴をバイトではなくて正式に雇おうと思うんだけど、どうだ?」

 『いいんじゃないかな。僕的には全然ウェルカムだよ』

 『わ、私もいいと思います』

 『ありがとうございます! 二人とも! これからよろしくお願いします!』

 思ってはいたがすんなりと二人の許可が出た。これまでの仕事ぶりを思うと当然といえば当然なのだが。

 『それにしても和樹のとこのパパさんもキツイ条件出したね』

 「それな、新卒の社会人でも1年で400万払うなんて難しいのにな」

 『何か支払いの条件とかはあるの?』

 「あまり厳格には言われてないけど俺が立て替えるとかはナシだろうな」

 『それだと意味ないもんね』

 「あぁ、そこで考えたんだけど、千鶴の立てた企画で出た利益からこれまでの平均利益を引いた残りを千鶴の給料にしようと思ったんだけど」

 このやり方なら実際に千鶴が考えた企画で稼いだお金だと言える気がする。

 『うーん。僕的にはかまわないけどマネージャーとしての仕事に対する報酬はどうするの?』

 そこが微妙なところだ。この給料システムだとマネージャーとしての仕事はしなくてもいいことになる。でも、それだとわざわざ千鶴を雇う意味が無い気がする。

 「基本給でいくらか出すか」

 『そうだね。金額はまた決めようか、〈にゃん太〉先生もこの条件で大丈夫?』

 『……あっ、はい。いいと思います』

 「ありがとうございます。こんな変な話に巻き込んでしまって」 

 『……いえ、私的には千鶴ちゃんが仲間になってくれるのは話しやすくてありがたいので……』

 「そう言ってもらえると助かります」

 そもそも俺たちの活動は康介の思い立ちから始まったモノのためこれまで厳格な給料の分配などをしてこなかった。

 活動で出た利益を綺麗に3等分。個人的には康介と〈にゃん太〉先生にはもっと貰って欲しいのだが「計算がめんどくさいからいいよ」とのことで今の感じに落ち着いている。

 そうは言っても実際に一番仕事をしてくれているのは康介なのでこの前の3Dライブの収益などは多めに渡したりしているのだが。

 『てか、いままで良くこんななーなーでやってこれたよね。他の人だと喧嘩どころか人殺しが起きそうだけど』

 『僕の個人的な趣味に付き合わせてる感じだしね。まさかここまで大事になるとは最初は考えてなかったよ』

 『……私も他に収入源があるし、そんなに負担は大きくないのであまり気にしたことが無いです……』

 良くも悪くもみんなそこまでガツガツ行く感じじゃなくて良かった。俺も改めて扱っている金額を思うと良くこれでトラブルが起こらなかったものだと感心した。

 『それじゃあ来月までに僕の方で千鶴ちゃんの基本給を含めて計算表を作っておくよ』

 「いや、さすがにそれは悪いだろ。俺の方でやっておくぞ」

 『一応パパさんのこともあるし公平な人間がやったほうがいいでしょ。それに最近は特に仕事もなくて暇だしね』

 「そういうことなら、いつも迷惑かけて悪いな」

 『いーよ全然』

 『なに、そのてーてー感じ』

 「おい、お前のことだぞ茶化すなよ」

 『男同士でてーてーも無いでしょ』

 『えーそんなことないけどなぁ。ねぇ〈にゃん太〉先生?』

 『全然アリです!』

 マジかよ……。

 

 その後もこれから千鶴にしてもらう仕事や決めなければならない社則みたいなモノを決めたところで千鶴から一つ提案がされた。

 『さっそく私から企画の提案があるんだけど!』

 「なんだよ? 言ってみ?」

 『オリ曲を作ろうと思います!』

 いきなりとんでもない提案だった。

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