42話 親バレ

 父親に俺がバ美肉Vtuberとして活動しいることを説明していると喫茶店に千鶴がやってきた。

 「〈にゃん太〉先生一応落ち着いたよ」

 「そうか、サンキュー」

 〈にゃん太〉先生と話をして何とか引きこもりルートを回避できたみたいだ。

 身だしなみを整えて店に降りてくるという。

 「でも、まだ表で活動をする気とかは無いみたいだからあんまり仕事の話はやめて上げてね」

 「了解」

 千鶴は俺の隣の席に着くと店長が持ってきてくれた珈琲を飲んで一息ついた。

 ちなみに店長は千鶴に珈琲を入れると〈にゃん太〉先生の様子を見に自宅の2階へと下がっていった。

 「……千鶴」

 向かいに座る父親が口を開くと隣の千鶴は気まずそうに俺の方を向いた。

 「兄貴に話聞いたんじゃないの?」

 「あぁ聞いた」

 控えめに話しているがキレていそうな雰囲気がある。

 そりゃ俺でもこの時期に内定蹴って俺の配信手伝うなんて何考えてるんだと正気を疑う。

 「お前の考えは分かった。コイツの収入についても聞いた。そのうえでもう一度聞くが本当に内定を辞退するつもりか?」

 千鶴はギュッと口を結ぶと

 「……うん」

 「それは将来のことまで考えてのことなのか? 俺にはコイツのやってることがいつまでも続くとは考えられない。いつかボロが出るのか飽きられるのがオチだ」

 それについては俺も考えていた。配信業は水物だ。企業所属であればイベントを行ったりグッズ展開でリスナーを飽きさせないようにできるかも知れない。だが個人で活動している俺ではそこまで大きなことはできない。それにバ美肉をしている関係もあってなかなか案件なども受けずらい状況にある。

 控えめに言ってかなり将来は不安だ。父親はそこまで考えたうえで千鶴に本当に将来のことについて考えているのかと聞いていた。

 それを知ってか知らずか千鶴は安易にうなずく。

 「もちろん。考えてる」

 はぁ、とため息をつくと父親はカップに残った珈琲を飲み干した。

 「とりあえず帰るぞ。話はそれからだ」

 そういうと父親は席を立ち、カウンターへと向かった。

 ちょうどタイミングよく店の裏から現れた店長に会計をすまして足早に店を出る。

 あとを追う俺たちに店長が話しかけてきた。

 「ありがとう。何とか娘も部屋から出てくれたよ」

 「いえ、〈にゃん太〉先生元気になってくれたら良かったです」

 「チラッと聞こえちゃったんだけど同じ父親としては君たちのお父さんの気持ちもよく分かるよ。しっかり話し合ったほうが良いよ」

 しみじみとした感じで助言をしてくれた店長は実感のこもった感じだ。

 〈にゃん太〉先生家族にも色々あったのだろう。

 「そうですね。分かりました」

 「うん。それじゃあまたね」

 そうあいさつをすると俺たちは店を出た。

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