第32話 コラボ2
”たまも”と合流した後、俺と千鶴は”たまも”宅へと招かれた。とはいっても自宅の横にあるレッスンスタジオだ。
「ここの部屋でボイトレのレッスンと配信をやってるんです」
俺とは違い”たまも”はマンションの2部屋を使い仕事とプライベートを分けているようだ。
「へー! すごいですね! 防音設備もヤバ!」
「結構大きな声出しても外には響かないから安心していいよ」
「そうなんですね! スゴ~めっちゃ配信者!」
「はははっ、”なな”ちゃんも配信者じゃん」
「あっ、そ、そうですよね~」
おいおい、さっそくボロが出そうになってるじゃねーか。確かに俺の部屋とは設備がまったく違うけどよ。
”たまも”の配信部屋は部屋全体に防音加工が施されており扉を閉めるのも少し力を入れて閉めないと完全には閉まらない。そのおかげで外にはほとんど音は漏れないようで多少大声を出しても近所迷惑や響いたりする心配はなさそうだ。
俺の部屋は一応個人でできる限り対策はしているが、大声を出すと若干外に声が漏れてしまう。配信中は特に声のボリュームに気を付けないと身バレにつながってしまう危険がある。
「”なな”ちゃんの家は防音室とかは無いの?」
「ないんですよね~、だから音漏れは気を付けないとなんですよ~」
「そうなんだ~、歌とか撮りたいときは言ってよ。ここの設備使ってもいいから」
「ホントですか! ありがとうございます!」
〇〇〇
千鶴と”たまも”の話が盛り上がってる間に俺は機材の設置を済ませた。
設定も完了し配信の準備が完了する。
「お兄さん手慣れてますね~」
千鶴との話がひと段落したのか機材のセッティングをしていた俺の元に”たまも”がやってきた。
「そうですか? そういえば”たまも”さんはどこのボイチェン使ってるんですか?」
「あぁ、それならコレです」
PC近くにあった機材を指差して見せてくれる。
「私耳にだけは自信があってコレが一番ノイズが乗りにくくていいんですよね~」
「へ~、そうなんですね。設定はどんな感じですか?」
「設定は~……」
それからしばらく声づくりの話題で盛り上がった。
”たまも”は地声だと女の子にしてはかなり低い。そのことがコンプレックスで、そこで見つけたのがボイチェンだったのだそうだ。
ボイチェンを使えば自分とはまったく違う声が出せることにハマった”たまも”は知り合いの後押しもありVtuberとしてデビューすることにしたんだそうだ。
「そういえば”なな”ちゃんの使ってる機材はお兄さんが選んでるんですか?」
「はい、そういうのに興味があって」
「そうなんですね。最近たまに違う機材使ってないですか?」
「え、あぁはい」
「やっぱり! 微妙に乗っかるノイズが違うなぁ~って思ってたんですよ」
そのことを聞いて何度目かのドッキっとさせられてしまう。
サウンドクリエイターの大村と話した時にもビックリしたが耳が良い人は普通の人が気づかないような微妙な音を聞き分けてしまう。そんな人相手にはバ美肉は通用しないのだろう、身近にそんな人が2人もいるとバ美肉してる側からすると生きた心地がしない。
「そういうの分かるもんなんですね」
「普通の人には分かんないと思いますけどね。私もいつバレるかいつも震えてますよ」
そういうところは俺も”たまも”も同じようで安心した。
「それじゃあテストしていきますか」
「了解です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます