第33話 コラボ3

 機材テストを開始して数十分してからのこと。

 「”なな”ちゃんさ~、なんか最近話し方変わった?」

 突然”たまも”が千鶴に問いかけた。

 「え? そうですか?」

 「うん、なんか最近めっちゃ丁寧だな~って、うまく言えないんだけど女の子らしくなった? って感じ」

 鋭いところを突いてくる。だって実際中身男から女に変わってるもん。

 同じことを千鶴も考えたのか若干顔がひきつっている。

 「女子力上がっちゃいましたかね~」

 「上がってるね、でも前の感じの方が私的には絡みやすくて好きだったな~。あっ、でもそんな深刻に受け止めないでね。今の”なな”ちゃんも可愛くて好きだから!」

 「は、はい……」

 

 お互いの機材の確認を終えて軽く打ち合わせを行うことになった。

 今日の配信は二人で鍋を囲みながら雑談配信となった。

 てっきりゲーム配信をすると思っていたが”たまも”の強い希望で鍋雑談となった。理由は知らない。

 ”たまも”と千鶴の二人は配信をするための部屋で鍋を囲みながらの雑談。俺は別室で配信を見守ることになった。

 万が一にも俺がいる音とかが入ったら大変なことになるしな。

 「鍋たのしみじゃの~」

 そして配信予定時間が近づくにつれて段々”たまも”の話し方が「のじゃ」になってくる。

 「生のじゃ感激です!」

 千鶴は完全にファン目線になってしまっている。

 「そうかの? まだ機材通してないから聞きにくいじゃろ」

 「そんなことないです! 凄いです! キャラに成りきってるっていうか本物だ~って感じです!」

 「そうか? そういわれると妾も悪い気はせんの~」

 ”たまも”も満更ではなさそうだ。

 そんな話をしながら鍋の準備を進め、いざ配信時間になった。

 「それじゃあ始めるかの」

 「っは、はい!」

 「リラックスじゃよ~」

 ”たまも”が画面を操作し配信がスタートする。まずはOPが数分間流れる。

 俺が近くにいられるのもここまでだ。部屋を出て別室で配信を確認する。

 OPが終わり”たまも”があいさつをする。

 『みんなこんばんわなのじゃ~! 今日は以前から計画してたオフコラボじゃ! それじゃあいさつよろしく!』

 『こんなな~! 〈子月 なな〉で~す。よろしくお願いしまーす』

 『よろしくなのじゃ~! 念願かなってようやくオフコラボ出来たの~』

 『ねー、出来て良かったよね』

 『妾めっちゃ嬉しいぞ! そして今日の配信はタイトルでも書いてあるように二人で鍋パじゃ! みんなうらやましいじゃろ~』

 『めっちゃおいしそう!』


 コメント

 :マジてぇてぇ

 :うらやま

 :たまも嬉しそうでなにより

  :

  :

  :


 好意的なコメントが多く、”なな”の正体に気づいている人は”たまも”も含めていないっぽい。ひとまず一安心といった感じだ。

 配信してる部屋は完全に防音室なのだが今回は室内で鍋をする都合上扉を少しだけ開けている。隣の部屋からいい匂いと共に楽しそうな二人の声が漏れてくる。

 「順調だな」

 スマホが震える。

 

 〈康介〉

 『いい感じだね』

 『だな、今のところ順調』

 『了解、何か困ったことあったら言ってね』

 『了解』

 

 隣から漏れてくる鍋のいい匂いをおかずに俺はコンビニで買ってきた冷めたおにぎりを食べるのだった。

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