第24話 配信準備

 〈にゃん太〉先生に事情を話し、何とか理解してもらったところで今日のところは解散となった。

 千鶴と共に電車に乗って家へと帰る。

 「円満に解決できて良かったね~」

 「は? 何言ってんのお前」

 「いや、悪いとは思ってるよ! でもいつかは言わないとだったじゃん?」

 確かにその通りなのだが、千鶴に言われるとなんかイラつく。そもそもお前のミスが原因じゃねーか。

 「それはそうだがお前が言うな」

 ビシッと頭に手刀を入れる。

 「いったー」

 痛ててと頭をさすりながらスマホを眺め始める。

 「あっ、ん!」

 唐突にスマホの画面を俺に向けてくる

 「なんだよ?」

 「いいから見てみ?」

 スマホを覗き込んでみるとライン画面が表示されていた。

 

 [春町 月]

 『今日はちょっと言いすぎたかもしれません。ごめんなさいとお兄さんに伝えておいてください』

 

 ふむ。

 「ごめんなさいだってさ~」

 「それは分かるんだが 春町 月 って誰だ?」

 ちょっと覚えのない名前だ。俺と千鶴の共通の知人何だろうけど。

 「はぁ? 何言ってんの! 〈にゃん太〉先生じゃん!」

 「え! そうなのか?」

 「マジで言ってんの? それ最低なんだけど」

 「いや、俺ちゃんと自己紹介された覚えないし」

 記憶をたどってみても確か本名を聞いた覚えがない。単純に教えたくないのかと思っていたが千鶴は聞いていたんだな。

 「それでもコミケのとき〈にゃん太〉先生のお父さんと会った時気づかなかったの?」

 そういえば「春町です」と言っていた気がする。それにさっき喫茶店でも〈にゃん太〉先生のことを”月”と呼んでいた。

 「確かに言ってたような」

 「はぁ~、だから兄貴は駄目なんだよ」

 千鶴にダメ出しをくらい、俺が千鶴を責めてたはずが気づいたら逆に俺が責められる状況になってしまっていた。


                〇〇〇


 家に帰ってPCを確認するとDiscordにメッセージが来ていた。


 [九重 たまも]

 『今晩妾の誕生日配信があるんじゃが、凸待ち配信予定なので良ければ来てくれんかの?』


 そういえば今日は”たまも”の誕生日だった。

 「凸待ちかぁ」

 この間は俺のチャンネルに来てくれたし、今度はこちらがお邪魔するべきだろう。単純におめでたいしな。


 『了解。参加させていただきます』


 返信を終えて今日の配信の準備をする。

 今日の配信はストーリー物のRPG実況だ。

 キャプチャーボードを接続したり、ゲームの動作を確認する。

 「問題ないな」

 あとは凸待ちの準備だが……

 「まぁ、トークデッキは向こうが考えてくれているか」

 今日の配信は20時からだ。凸待ちは21時から、”たまも”は俺とは違い事務所所属のVtuber達とも頻繁にコラボをしているので今日もそれなりの人数が来ることだろう。となると俺が凸するタイミングもできるだけ早めにしてサックっと終わったほうがいいかもしれない。

 「念のため聞いとくか」


 『今日の凸するタイミングとかっていつぐらいがいいとかある?』


 すぐに”たまも”から返信が届いた。

 

 『参加ありがとうなのじゃ! できれば早めに来て流れを作ってくれると助かる』

 『りょ!』


 今日の予定が決定した。

 21時前にはきりのいいところで一旦ゲームを止めなくちゃな。

 康介達に凸待ちの件を報告し、配信準備を終えた。

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