第14話 コミケ
クリスマス新衣装発表までの日数が二週間を切った月曜日。
日曜日の配信はお休みをしてリフレッシュ。気持ちも晴れやかに朝を迎えた。
スマホに通知が届いていた。
〈康介〉
『3Dできたから確認してほしいんだけど今晩大丈夫?』
新衣装の3Dが完成したようだ。
元々ベースがあったとはいえ2週間そこらで完成させるとは驚くべきスピードだ。というか物理的に不可能な気がする。
「あいつ、ちゃんと寝てんのか?」
昔から夢中になると周りが見えなくなるヤツではあったが身体を壊していないか心配だ。
『了解。今回めっちゃ早いじゃん、無理すんなよ』
『好きでやってることだからね。修正終わったら死んだように寝るから大丈夫!』
『お、おう。いつもすまないな』
『おk。先にデータだけ送っとくね』
PCを確認すると康介からデータが送られてきていた。
「完璧じゃん」
細かなところまで作りこまれた3Dはとても短納期で作られたとは思えない。
それでも微妙に動きについてこない髪や衣装の部分をリストアップして紙に記していく。今晩のミーティングですぐに意見を渡せるようにしておかなければならない。
「こんなもんかな」
小一時間ほどチェックをして確認作業を終了する。
すると、家のインターホンが鳴った。
「誰だ?」
自慢じゃないが家にまで来るような知り合いはほとんどいない。
可能性としては宅配便くらいだが今日は荷物が届くような予定は無かったはずだ。
ドアホンのカメラで来客者を確認するとそこには千鶴が立っていた。
玄関に移動してドアを開けてやると、寒い寒いと言いながら部屋へと入ってきた。
「お前どうしたんだ? いきなり来て」
「ラインしたけど全然既読つかなかったから来た」
「どんな理屈だよ」
「マジ急ぎの用事だったんだって。わざわざ来てあげたんだから感謝してほしいくらいだわ」
そんな急ぎの用事があったっけ?と首をかしげながらホットの珈琲を入れてやる。
「〈にゃん太〉先生から連絡があってさ、コミケの売り子やってくれないかってさ」
〈にゃん太〉先生とのラインを表示させる。
仕事用のメアドだけでなくプライベートのラインまでいつの間にか交換しているなんて丼だけコミュ力お化けだよ。恐るべしJDだ。
詳しく話を聞くと、今まで売り子は両親がやってくれていたようだが今年は用事があって参加できそうにないのだそうな。そこで知り合いである俺たちに協力を要請してきたということらしい。
「なんで俺たちなんだ?」
「〈にゃん太〉先生友達少ないから、頼れる人いないんだってさ」
「悲しいことサラッと言うなよ」
「兄貴が聞いてきたんじゃん」
理由はさておき助けてあげたいとは思う。個人的には全然大丈夫だが〈にゃん太〉先生は人気の壁サークルだ。俺と千鶴二人だけのヘルプで人手が足りるとは思えない。
「俺たちだけじゃ人手足りなくないか?」
「康介兄ちゃんは?」
「アイツは3Dで死んでるから休ませてやりてーんだよな」
「あー、確かに殺人的スケジュールで動いてたしね」
「だからウチからは俺とお前の二人だけだな」
「んー、了解。一応返事しとくね」
「おう」
千鶴はポチポチとスマホを操作して〈にゃん太〉先生に返事をした。
すると、すぐに返信が返ってきた。
「二人でOKだって。後は他の知り合いが一人と出版者の人が手伝ってくれるらしいよ」
「そうか、お前以外にも友達いたみたいでよかったな」
「余計なお世話でしょ」
こうして俺たちの年末の予定は決定した。
コミケ参加なんて何年ぶりだろうか。
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