第17話

「よし…一度戻るか」


俺はそう言って入り口前から離れようとする。

今の状態でこの遺跡の中に入るのは正直自殺行為だろう。

入るにしても、それ相応の準備をして探索を試みた方がいい。


「アルトリクス、戻る…」


戻るぞ、と言うよりも先に、俺の体に何か掴む手の感触を感じた。

俺は振り向こうと思ったか、体が動かない。

それは、俺の関節の部分を掴む強大な手があった。


「プロフェッサーっ!」


そう叫び、俺の手元を伸ばすアルトリクス。

遺跡の入り口から、黒くて紫色の怪しい光を纏う無数の手が、俺の体を掴んでいた。

そのまま、俺を引き摺る謎の手。

その手を掴もうとして、空を掴んだアルトリクス。

体を引き摺って、俺は遺跡の中へと吸い取られるように遺跡の中へ入り込んだ。


「なんだ、この」


手は、なんだろうか。

このまま、俺は何処へ連れていかれるのだろうか。

恐怖で表情が蒼白となる、もしかすれば、俺は死んでしまうのかも知れない。

そう思った最中。

俺の足から、何かが這ってくる感覚があった。

それは、ペチペチと俺の体を掴む黒紫色の手を叩いて弾き取る。

『自爆破壊』のスキルを取り除かれた、その内の一体であるペンギンだった。

俺の危険を察して、ペンギンが俺の足を掴んでいてくれたのだ。


ペンギンが必死になって俺を掴む手を剥がすと、そのまま俺は勢いよく地面に体を滑らせた。

咄嗟に腕で受け身を取ったが、その際に腕の部分を擦りむいてしまった。

血を流しながら俺は立ち上がる。

出口への道を見るが、しかし入り口に繋がる光は何処にも無かった。

かなり遠くまで引き摺られたか、それとも、遺跡が出口を塞いでしまったのか。


どちらにしても、俺がその場から逃げなければならないと言う事実は変わらない。


「畜生っ!!」


迂闊だった。遺跡になんて近づくんじゃなかった。

後悔が押し寄せてくる。けれど、今は自分の行動に悔やんでいる場合じゃなかった。


俺は地面を蹴ってその場から逃げる。

再び手がこちらへと向かわない様に、なるべく遠くへと急ぎ出す。


「アルトリクス、なんとか、なんとかっ」


俺を見つけて欲しい。

そんな自分勝手、我が身可愛さに、スキルを彼女に取得させた。

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不遇な俺が手に入れた育成スキルで造られたヒロインのレベルマックスを目指す 三流木青二斎無一門 @itisyou

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