第13話 スキル強化


宿屋に戻ってから特訓を始めて更に三日程が経過した。

一日の睡眠時間を六時間に設定した場合、三日で約十八時間の消費となる。

残る十八時間の内、一日二回の特訓を二時間セットで行った場合、二時間が二回で合計四時間、そして特訓時間数に応じてその倍の時間が掛かる為に、休憩時間が四時間で、その二倍だから約八時間の休息を取る事になる。

睡眠時間=六時間、特訓時間=四時間、休憩時間=八時間、で自由時間が四時間程余る。

それが一日のスケジュールであり、それを三日程費やした。


すると合計特訓時間は十二時間。そしてそこから得られたステータスポイントは合計28ポイント。


この28ポイントはラックに10ポイント、敏捷に8ポイント、そして精神に10ポイント割り振っている。

この割り振りは基本的に能力値を伸ばし、次点で次に高いステータス、そして残るポイントは一番低いステータスに割り振った。


その結果のステータス変動はこうなっている。


【基本性能】

筋力値パワー:E/06 敏捷値スピード:D/11 耐久値タフネス:E/04

能力値スキル:C+/31 精神値マインド:D/16 幸福値ラック:E/05


敏捷値と精神値が両方Dランクにまで成長していて、能力値の方だが、予想外な事が起きていた。この能力値なのだが、Cの次はBだと思っていた、しかし、結果はBではなく、Cの横に+が付いているのである。


既にスキル取得枠が一つ増加しているが、C+になるとスキル所得枠が解放される事は無かった。

ならば、この+と言う概念は何なのかと思っていた、単純に、ランクを簡単にカンストさせない為に作られたかさましなのかと思ったのだが、それは違った。

スキル解放欄を確認していた時の事だ、今度はどのスキルを開放しようか悩んでいた矢先、手が既に取得しているスキルに触れてしまったのだ。すると、スキル欄には『スキルを強化しますか?』と言うメッセージが表示されていた。


これが一体何を意味するのか。

現在、アルトリクスが所持しているスキルを確認してみる。


【職能】

『万物の声』:E

・全ての言語を解読し、発音出来る。

・旧世界の言語のみ解読可能。

『記録の記憶』:E

・アカシックレコードに接続し知識を蓄える。

・ランクが低い為に知識に対する情報が限定的となる。

『詠唱省略』:E

・魔術詠唱を省略して発動出来る。

・魔術のレベルが高ければ高い程に省略し難くなる。

【スキル】

・『人鳥の共鳴』:E

・『現象転写』:E

・―――(取得可能枠)


これを見て分かった事だが、スキルには必ずランクが存在する。

そのランクは全てランクEから始まっており、往来のシステム通りならば、このスキルも進化する可能性があるのだ。

ならば、どうやって進化をするのか?それは多分、この+が関係しているのだろう。

ランクが上がる毎にスキル取得可能枠が増え、ランクが+に到達すると、そのスキルを強化する事が出来るのではないか?と俺はそう考えた。


だとすれば、まず強化すべきスキルはどれなのかを考える。

現状、『万物の声』は放置で良い、今は旧世界の言語で会話が成り立っているからだ。

『詠唱省略』も、現状は必要無いと思う。

まだ魔術書は空白の状態だから詠唱省略したくても、省略する詠唱を記録した魔術書が存在しない。

この職能の中で強化するのだとすれば、やはり『記録の記憶』だろうか。

アカシックレコードとの接続、過去未来現在、全ての事象や現象を記した世界の記憶とも言うべき概念。それとアルトリクスは接続して知識を得る事が出来るが、ランクが低い為に引き出す知識も限定的でしかない。

もしも、ランクを上げれば、より多くの知識を蓄えたり調べる事が出来る。

彼女のマップ能力が強化される事になるかも知れないし、『記録の記憶』を強化するのには賛成的だ。


他には『人鳥の共鳴』を強化すれば、呼び寄せるペンギンを増やせたり出来るかも知れないから、戦闘に役立つ事はまず間違いないだろう。


『現象転写』も中々に捨て難い、ランクが低い為に覚えられるのが一つだけと書いてあるので、強化すれば二つに増えるかもしれないのだ。


そして、これは第三の提案であるが、俺にはまだ、スキル習得可能枠が一つ残っている。

それで他のスキルを習得した後に、スキル強化する、と言う事も考えている。


「プロフェッサー、どうかされましたか?」


シャワーを浴び終わったアルトリクスが俺の顔を伺う。

花の様な香りを放つアルトリクスの髪の匂いが鼻元にまで嗅いできて、少しドキっとしてしまう。

じぃ、と俺の顔を見詰めるアルトリクス、そしてにへら、と嬉しそうな表情を浮かべる。

そんなにも、俺のペンギンマスクが気に入ったのか。

俺は溜息を吐いた。……まあ、俺が強化したいと思っているのは『記録の記憶』と『現象転写』、そして『人鳥の共鳴』の三つだ。


「……なあ、アルトリクス。ペンギンは好きか?」


俺がそう聞くと、顔を赤くしてアルトリクスは顔を頷ける。


「はい、ふっくらしていて、よちよち歩く姿が愛らしいです……それがどうかしましたか?」


「……いや、お前なら、このスキルを強化したら喜ぶだろうな、と思ってな」


俺は『人鳥の共鳴』を選択した。

『このスキルを強化しますか?』と言うメッセージを半ば無視する様にはいのボタンを選択。

すると、スキルが強化された。

俺の読み通り、『人鳥の共鳴』のランクがEからDへと変貌していた。


「これで多分、ペンギンを呼ぶ力が強くなるぞ」


「え?どういう事です?」


首を傾げるアルトリクス。

俺はスキルの内容を確認する。


『人鳥の共鳴』:D

・ペンギンを集めるスキル。

・ペンギンと長期間同行させ命令を聞かせる事が出来る。


……いきなり強化されたな、スキルの内容。

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