記録 9ページ目

それからも、色々な衝撃的な事実を知ることとなった片付けは 、午後8時頃に終わった。

色々なものが出てきたな。ゴキブリの卵とか、エロ本とか、0点のテストとか。

なぜか腐った食べ物は意外と少なかった。


「おわったー!」


「良かったですね」


「なんかできる人みたいだね、この部屋」


「片付けたのほとんど俺なんですけど……」


「ありがとね!」


先輩は満面の笑みでそう言う。


ほんと、こういうの心臓に悪い。こんなに生活能力が低くなかったら世の中の男、今ので全員落ちてるわ。


その時インターホンが鳴り、抜けかけていた魂が戻ってくる。今日一日の精神攻撃で死ぬところだった。


あの人が玄関までの廊下を走っていく。さっきは走るのなんて不可能だったからな。頑張ったよ、俺。


明日、掃除もしないと。


「みーおー!」


「ぐふぇ」


今、カエルが潰れたみたいな音したけど大丈夫?


「美緒、あんたまた食中毒になったの!?」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ、まだ死んでないから」


「大丈夫のレベルが低すぎるわ!」


おぉ、うるさい女の人が来たよ。お姉さんかな。


お姉さんらしき人がちらりとこちらを見る。


「ねぇ美緒、あの男誰?」


「んー? 友達」


えっ、こんなアホな人と友達になった覚えないんだけど。嘘つかないで。


「ちょっと、あんた。美緒の彼氏になろうとか変なこと思わないでよ」


怖い怖い怖い怖い。このアホな人の彼氏とか考えただけで鳥肌立ったわ。


「あの、勘違いされてるところ悪いんですけど俺、友達じゃないんです」


「美緒の彼氏だって言いたいの? やめといた方がいいわよ。今まで1人残らず玉砕してきたから」


なんなの、この女たち。普通に怖いんだけど。


「いや、そういう意味ではなくてただのお隣さんなんですけど……」


「は? じゃあなんでここにいるの」


「こいつが死にかけていたからです」


お姉さんらしき人は呆気にとられた顔をしている。


まぁ先輩、顔だけは良いもんね。お姉さんらしき人が、変な虫がつかないか心配するのはわかる。


「ぷっ、あはははは」


「大丈夫ですか?」


「いやー、君最高だよ。顔がいいこの子に全く惚れてないんだもん」


「この人、顔以外は最悪ですから」


「おっ、わかってくれる?」




その後、お姉さんらしき人と意気投合し話が弾んだ。


「お姉さんも大変ですね……」


「えっ、私お姉さんじゃないよ?」


「え?」


「私、美緒の幼馴染の真津まなつ桃栗みくり。よろしく! いや〜、それにしても迷惑かけたね。私、季節外れのインフルエンザにかかっちゃって一週間美緒の家に来てなかったんだよね」


話によると、幼馴染さんは毎日このアホな人のためにここに来ているらしい。

アホな人が中学に入ってから一年間生存していたのは、幼馴染様のおかげだということだ。


「いつもご苦労様です」


「でも、君がいるなら一安心だね」


「えっ?」


「だって私が諦めた片付けを一日でやってのけたんだもん」


嫌な予感がするんだが……。



「これからは美緒のこと全部任せたよ! 今まで大変だったなー。買い出しとか、宿題探しとか、ほかには……」





やばい、吐き気してきた……。










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