う2qdじゃいだうyふじfくぁjこ(安居院視点)

 ちょっと変更して安居院視点だけです。


―――――――

(安居院視点)


「それじゃみんな、それぞれプリントした紙を折って、箱の中に入れてね。ただし、折り方はそれぞれ自分にだけわかるように、周りには見せないでね!」


 部活の備品として保管してある、抽選用の箱、いわゆるクジ箱を引っ張り出してきた翠川は、そう説明して机の下に手を忍ばせた。


 折り方を変えるのは、そうしなければ誤って自分のカードを引いてしまいかねないからだろう。

 ………だが、甘かったな、翠川。

 俺はちらりと視線を下げる。


 俺の手に握られたスマートフォン。そこには、『机の下の様子』が映っていた。

 翠川の手元はスケスケだぜ……!


 これはオリエンテーションのようなものだと、理解はしている。

 だが、ゲームはゲーム!

 ならば、勝ちに行くのは、テストで高い点を取りに行くくらい当然のこと!

 必然である!


 新入生二人はまだしも、翠川の好きな物を熟知しているわけではないが、一年近くも一緒の部活で活動したいたのだ。

 ある程度、予測することはできる!


「………ちょっと折り方を考えるので、待ってもらっていいですか?」


 月夜見がそう言って、背中をこちらに向けた。

 まあ、かぶらないようにするのは大事だろう。折り方なんて、結構かぶりやすいし。


「お待たせしました。このまま、引いていいですか?」

「いいわよ。自分のカードを引かなければいいだけだからね」

「ありがとうございます」


 月夜見はそう言って、握りこぶしを作りクジ箱の中に入れる。

 しばらくガサゴソとしていたが、やがて手を引くと、周りに見えないように手を隠した。


「じゃあ次は俺な」


 俺はさりげなく二番手を取ると、クジ箱に手を突っ込んだ。

 狙うは翠川の折った紙、ハート形……見つけた。


 俺は何でもないように装いながら、周りに見えないように紙をポケットに忍ばせた。

 クジ箱は次にチャチャへ、最後に翠川へと回った。


「全員引いたわね。組み合わせはどうしようかしら?」

「一年生と二年生で、わかれたほうがいいと思いますし、私は安居院先輩とやっていいですか?」

「なら、私はチャチャちゃんとやるわね」


 それぞれのペアのカードの中身がわからないように、俺たちはそれぞれ無駄に広い会議室の隅に移動する。


「それで、どうしたらいいですか?」


 俺の前に座った月夜見が聞いてきた。


「紙を広げて、おでこの上に掲げるんだ。自分に見えないようにな」

「わかりました」


 月夜見は言われた通り、紙を広げて俺にだけ見えるように掲げた。


 紙には、ラーメンと書いてあった。

 俺のではないし、ルール的に月夜見のものでもない。

 翠川の紙は俺が持っているから、これはチャチャのか。


 あいつ、ラーメン好きなのか……。穴場のラーメン屋、今度教えてやろうかな。


「ええと、先攻後攻は、じゃんけん決めますか?」

「ああ」




●●●



 じゃんけんは3回のあいこを経て月夜見が勝ち、俺が先行となった。

 曰く、質問の仕方を見ておきたい、とのことだった。


「んじゃ、いくぞー」

「よろしくお願いします」


 月夜見は丁寧にお辞儀をする。

 しかし、翠川のカードをひいたものの、あいつの好きな物の心当たりが多すぎて、ちょっと迷うな……。

 まあ、まずは定番の質問からいくとするか。


「質問1。これは手で触れるものか?」

「イエスです」

「…………ふむ」


 俺はこめかみに指を立てる。

 手で触れられるってことは、何かの概念じゃない……少なくとも、TRPG系ではないってことだ。

 翠川のことだから、多分、なにかのゲームが書かれているはず。手で触れるゲームってなると、トランプとか、何か道具を使ったボードゲームってところか?


「質問2。これはカードゲームか?」

「ノーです」


 首を横に振って否定する月夜見。

 カードゲームではない……しかも、月夜見が即答したってことは、月夜見が知っているゲームか、あるいはそもそもゲームではない、か?


 いや、ゲームであることは、多分、間違ってないはずだ。なら、月夜見が知っていそうな、有名どころのゲームに絞っていくか。


「質問3。これはスマホゲームか?」

「ノーです」

「……質問4。これは机の上で遊ぶゲームか?」

「ノーです」

「…………質問5。これは手を使って遊ぶゲームだよな?」

「ノーです」

「……………質問6。これはゲーム、だよな?」

「ノーです」


 無慈悲にも、月夜見は淡々とそう答えた。

 は、はあああああああ!?

 ま、まて、落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ……2、3、5、7、11、13、17、19………。

 考えろ、考えるんだ俺。思考を止めるな。


 まず、これはゲームではない……この時点で、翠川の紙を抜き取った俺の優位性は、完全に消え去った。

 それは仕方ない、イカサマをした戒めと考えよう。

 その上で、俺は翠川よりも早く、正解にたどり着いてやる……

 よ、よし、やるぞ。


 ゲーム以外であいつの好きなもの、好きなもの、好きなもの…………あれ?

 ………………。

 ………………………………。

 ………………………………………………。


 ………………何も、思い浮かばないぞ?


 思い返してみれば、翠川とは部活のこと以外で、ろくに話したことがない。

 あいつの好きなことなんて、ゲームくらいしかわからない……むしろ、翠川の紙を選択したことが、マイナスに働いてしまっている。


「し、質問7。これは有機物か?」

「イエスです」

「質問8……これは食べ物か?」

「ノーです」

「ぐっ……質問9! これは生き物か!?」

「おお、イエスです!」


 月夜見はようやくか、といった様子で、サムズアップを向けてくる。

 くそ、これはもう、翠川には勝てないかもしれない。

 ……よし、ポジティブに考えよう。

 翠川の好きな生き物を知る、チャンスだ。

 さりげなく話題を触れるようになるかもしれないし、ゲーム以外で仲良くなれるかもしれない。

 それに、生き物となれば、割と絞れるものだ。それも、案外簡単に。


「よし、質問10。四足歩行か?」

「ノーです」

「………じゃあ、水生生物?」

「質問11、ですね。答えはノーです」

「水生生物でも、四足歩行でもない生き物……?」


 ゴリラとか猿とか、そっち系か……あるいは虫、は流石にないとして、タコとか……ないな。食べ物ではないらしいし。

 ………ん?

 ま、ま、まさか………な?


「質問12。人間、か?」

「イエスです」


 まさかまさか。


「質問13。歴史上の人物?」

「ノーです」

「……………質問14。まさかとは思うけど、この教室にいる?」

「イエス、です」


 軽く顔を赤らめて、そう答える月夜見。

 FOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!


「安居院先輩? どうしたんですか? 気持ち悪いくらいに顔がにやけてますけど」

「え、そうかぁ? むふふふふ。そうみえるかぁ?」

「はい。控えめに言って不細工ですね!」


 月夜見が満面の笑みでなんか言ってるが、今は多少の罵倒は聞き流そう。

 しかし、そっかぁ。

 翠川、俺のこと好きだったんだぁ。

 ははは。今まで俺のことどんだけ嫌いなんだ、とか思ってたけど、そっかあ。

 まったく、素直じゃないやつME☆

 だが、まあ、これで外れてたらめちゃくちゃ恥ずかしいし?

 念のため、そう、念のため、あと何回か、質問してみよっかな?


「質問14。そいつは髪を染めてるか?」

「イエスです」


 だ、だめだ、まだだ、まだ、笑うな……堪えるんだ。

 次の質問だ、次の質問をしたら、勝ちを宣言しよう……!


「くく……し、質問15。それは、俺か?」


 ああ、しまった。これじゃ、質問じゃなくて答えだったわぁ。

 いやー、しくったなぁ。

 かーっ! これで外してたら死ねるわぁ!

 ま、はずしてるわけないけど?

 ほら、じらすなよ、月夜見ぃ! さっさとイエスっていうんだよぉ!


「ノーです」


 はい、死んだ。

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心の読める月夜見ちゃんは、ツンデレ二人で遊びたい 一般決闘者 @kagenora

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