ーー015 なし


今日はちびどらの狩り実習を始めるという。

当然俺も一緒に行く。うさぎもちびどらと兄弟同様なので行く。

まずはゴブリン狩りだとのこと。五分厘刈り、とかの坊主頭ではない。昔初めてゴブリンって聞いた時、五分刈じゃ済ませない酷い監督の居る野球部?とか思ったよ。

で、その部員達を五分厘って呼んでるのかと思った。


「森を火事にさせないで、獲物だけを燃やし尽くす、という練習です」

と、ドラゴン人おっちゃん。

なかなか高度な技だな。

俺も一緒に練習すればよかった、と思った。


「おっちゃん、今度俺にも教えて?」

「・・・いいですよ。そう言えば、魔力は異常にありますが、使える魔法は偏ってるし少ないんでしたね。」

ほう、そうなんだ?自分じゃわからんよ。つーか、この世界の一般人って、ギルドの禿さん、もみあげさん、それとおっちゃんと娘さんしか知り合い居ないし?


・・・この世界を見てみたいな、と、この時はじめて思った。

が、うさぎを連れて行くわけにはいかんよなー。うさぎはここに湧いた来た向こうの世界の者達の案内人だ。よそに行くと、湧いた人はここで訓練する機会を失うだろう。知識を得る機会を失うだろう。強く成れないだろうな。


まぁ、ちびどらが独り立ちするまではココに居るし。

街に顔出してりゃ、いろいろ知るだろう。



と、おっちゃんを迎えに行ってから街に戻って、ギルドに顔出したり、街をぶらついたりして毎日を過ごしていた。

稼ぐ必要無いんで・・・硬貨をコピーできたんで・・・・。本物の金とか銀とか銅なんで本物だからいいの。


ちなみに、ココの世界のおかねは、大昔の日本とかみたいなもの。日本は最初中国の銅銭を使っていた。自国で作れるように成ってはじめて硬貨を造って。

肝心なのは金属の種類と含有量と重さ。


なのでまるまんまコピーできれば本物だということ。

発行が利権になっていないのだ。

それだけでも本物の自由な世界だなーって思えるなー。


必要以上にコピーするつもり無いし。贅沢するつもり無いし。魔法で作るより買う方が確かなモノの場合が多いので(職人の経験には敵わない)、買うほうがいいけど、必要なもの以外買わないし?



数日後、朝から街をぶらついていると・・

あ、もみあげさん・・

先の方の店にでっかい体格のもみあげさんが、なんか売っている店頭でおばはんと話している。

近づいていくと・・

果物?


「・・うなんだよ、だから・・。・・あー、タコ、だっけ?」

と、そばに来た俺を目に止めて言う。

「当たりです。果物ですか?」

「おう、でも無いようでなー、聞いてるんだ。そうそうおかみ、もすこし丸くってな茶色でな、しゃきしゃきでなー、少し青臭いけどその匂いもよくてな、甘いんだ。」

「なし?」

「お?知ってるのか?長十吾郎なしってやつだ。」

おしいっつ!!


「ここらなら気候的にはありそうですね」

「だろう?」

「うんじゃ、こんど仕入れに行った時聞いとくよ。見つかったらギルドでいんだね?」

「おう、禿の方に伝えておいてくれればいい、たのむな!」

「わからんけどね。期待しないで待ってな!」

あっはっは!


「おう、またせたな、じゃ飲みに行くか?」

「ちょっとまってください。俺も土産に買ってくんで。これとそれとあれとあっちとその赤いのととなりの紫のを20個ずつください」

「「・・・・・・・・・・・」」

「・・おまえんち、どんだけ子供いるの?」もみあげ

「何人だろう?」うさぎが一匹、うさぎが二匹、うさぎが・・

えっと、18人?18匹?


「18人くらいすかね?」

「「孤児院?」」もみあげ+おばちゃん

「いや違います。動物小屋?」

何言ってんだこいつ?みたいな顔になった2人。

まーいーやとおばちゃんは木箱にわらを入れながら果物を詰め始め、木箱は10個くらいになった。


「で、馬車呼ぶかい?」おばちゃん

「いや、持って帰ります」

シュン!、と、ストレージにしまう。


・・・・「そういや、久々だね、こんなの見たの」おばちゃん

「他にもいるのか?こんなのが?」もみあげ

「随分前だけどね、ずっと見ないんでどっかに行っちまったんだろうねぇ」

前任者だなー


「やべぇな?お前みたいなのがまだいるんだとよ?」

いや、別に危なくないはずですよ?

「ダイジョブじゃないすか?以前も問題なんか起こさなかったんでしょ?」俺

「そういや、別に何もなかったねぇ、平和なもんだったよ」おばちゃん

多分、前任者が森を制圧していたんで余計な奴ら(魔獣)が森の外まで出なかったんだろうな、今みたいに。


「今は?」と、訊いてみる。

「今も、そうだね、あんときくらいに全く問題ないねぇ、森に関しては。」

「おう、だな。」もみあげ

「へぇ?じゃ人間社会で問題あるんすか。」

まーなー、ともみあげがいいながら俺を通りの向こうの飯屋に誘う。



飯屋で、肴になるようなものと、酒を注文するもみあげ。勿論2人分。

あ、

「こういうとこって、酒の持ち込みとかいんすかね?」

「おう、ダイジョブだぞ?おまえ、持ってんの?」

で、俺はポケット瓶を出す。


さっととって眺め回す。

「・・・なんじゃこりゃ、すげーな?カットでもなくこんなに均一に?刻印もだし、・・あ?知らん文字も・・何語だ?」

「・・・知りませんよ?」

とぼけておくのが一番だろう。


「でも、すげー良さそうなモノだな?」

さすがだな、動物並の・・・・嗅覚?勿論酒の匂いはまだ嗅いでいないけど。


「いっすよ開けて。蓋、回して開けてください。」

ぱきぱきぱき・・・

「うっすいなぁ、この鉄。よくこんなにできるもんだ!」

そう言われりゃそうだよな。アルミだけど。


それよりも匂いがそそったようで・・

ちっこいグラス2つくれっつ!!

ともみあげさんは奥に怒鳴った。


ほどなく給仕が持ってきてくれた。

とくとくとく・・

2つに注いで、一つを俺に渡し、自分は自分のグラスの酒の匂いを嗅ぐ。

「・・・はぁーー、、すげーな?なんだこれ?」


ドラゴンはこれを知っていたのだが・・・

「ウイスキーって酒です。」

「へぇ?んじゃ貰うぞ。この酒との出会いに!」

と、グラスをぶつける。


ちびちび飲むもみあげ

少しかわいそうにみえたんで、

「全部飲んでいいですよ?」

「え?なんて言った?」

「いや、全部飲んでいいですよって言ったんですけど?」

「・・まじに?、俺が?、この酒、ぜんぶ?飲んでいいの?」

「いいっすよ?」

「・・・おまえ、いいやつだなぁ!!」

酒飲みって奴らはっつ!!!



そんでもちびちびなので、ストレージから5本出して全部あげた。

俺はここの酒でもいいし。俺にはこっちのほうが目新しいので、こっちのが良かったってのもある。

一人じゃ家以外じゃ酒飲まないし。


やっとおっさんがばがば飲み始めた。

ても酒のグラスなのでそう大きくない。元の世界の水のコップの半分くらいだろうか?


夕方には切り上げた。

「家で子どもたちが待ってますんで」

と言うと、相変わらずもみあげさんは子供にやさしい。

「おう、そーだったな、土産もかってるしな、じゃ、今日はありがとな!楽しかったわ!」

「俺こそここ全部払ってもらっちゃってごちそうさまでした。」

「いや、ある者が払うのは当然だろう!しかもあんな幻級の酒まで大量に貰ってしまって!」

神超えたっつ!!!



家に帰ってちびどらとうさぎたちに土産を与えた。みな喜んでうまいうまいいいながら食べていた。

よかった。また買ってこよう♪


少し心配だったんだよねー、コピー品ばかり(桃缶)食べさせていて大丈夫かなー?って。

なので畑もがんがん実らせなきゃな!果物ばかりではなく野菜も食わせる。


ただ、なんかちびどらがうさぎ達の影響なのか、あまり肉食わないのが心配。おっちゃんは

「大丈夫、ドラゴンは雑食!」

とか言っていたけど、草食になってるからな?


みな腹を膨らませ、そこらじゅうに適当にごろごろ寝ている。

うさぎたち、最近ぜんぜん巣穴に帰っていないんじゃね?子うさぎ達もこっちにいるんでいいんだけど・・・


つまり、ちっこい小屋なのに大世帯になってしまっている。

小屋、作り変えようかなぁ?

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黄昏と黎明のヴァルプルギス ユニ @unittjtkhs

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