第5話 死神の証明


 翌日、僕は冒険者ギルドへと向かう。

 ラフラさんは白銀の死神を連れてくると言ってたけど……。

 本当に大丈夫なのだろうか……?


「あの……ラフラさんは?」

「ああ、ラフラなら今日は休みよ」

「えぇ……!?」


 お、終わった……。

 頼みの綱のラフラさんが休みってことは……。

 それってもう白銀の死神も来ないってことじゃないか!

 きっとガイアの嘘に丸め込まれて、なかったことにされるぞ……。


「ようゼン! どうやらラフラさんは休みのようだな?」


 ニヤニヤした顔で、ガイアたちがやってきた。


「もう終りね、ゼン」

「私たちのほうが正しいのよ!」

「俺たちに逆らうからいけない」


 などと、みんなで僕をあざわらう。

 っく……シロさんさえきてくれれば、証言してもらえるのに……!

 そうすれば、こんな奴ら……!


 そのとき、後ろから声がした。


「お待たせ、ゼンくん」

「シロさん……!」


 現れたのは白銀の死神――シロさんだった。

 安心した……もうシロさんは来ないのかと思っていた。


「ごめんね、ラフラさんに呼ばれたんだけど、彼女、今日は休みみたいだね」

「そうですね……でも、来てくれてありがとうござます!」


 シロさんが来たからには、もう安心だ。

 僕たちがいっしょに【深淵の大穴ブラッドアビス】から帰って来たことを、証言してもらえばいい。

 彼女は僕が奈落へ落ちるところを、実際に目撃しているんだから。


「おいおい、そいつがどうして白銀の死神だってわかるんだ!?」

「え……!?」


 安心しきっている僕を、ガイアがそんな言葉で攻撃する。


「だ、だって……ホラ」


 ここにいるのは、まぎれもなくホンモノの白銀の死神だ。

 僕は彼女の戦いっぷりをこの目で見ている。

 そうじゃなければ、あんな危険なダンジョンから戻ってくるのは不可能だ。


「こいつが白銀の死神だとは思えねえなあ!? お前が用意したニセモノじゃねえのか?」

「っく……! わ、私はホンモノの白銀の死神だ! ギルド長に確認すればわかる!」

「ほう……? 今日はギルド長はいないようだが? だったらその実力を見せてもらおうじゃねえか!」

「望むところだよ……。こっちもゼンくんをコケにされて、腹が立ってるんだ。表に出よう」


 あわわわ……。

 なんだか知らないうちに、ガイアとシロさんが戦うことになってしまった。

 大丈夫なのかな……主にガイアが……。


「さあ、どこからでもかかってくるといい」


 シロさんは、無防備な構えで堂々と立っている。

 それを挑発と受け取ったのか、ガイアは……。


「うおおおおおおお! Aランクパーティーのエースの力、見せてやる!」


 ――キン!


 ガイアは剣でシロさんに斬りかかるけど、簡単に受け止められてしまう。


「なに……!? いったいいつ剣を抜いた……!?」


 僕にも見えなかった……。

 シロさんは目にも見えない速さで剣を抜いて、ガイアの剣を受け止めていた。


「君はゼンくんに、そうとう酷いことをしたようだな!」

「それがどうした!」


 ――キン、キン!


「私の友人を傷つけた! 絶対に許さないからなぁ!」


 ――ガキーン!!


 シロさんの剣が、ガイアの剣をはじいた!

 これで、勝負は決したようなものだ。

 シロさんはガイアの首に剣を突きつけ、こういった。


「私が白銀の死神だ。文句はないな……?」

「は、はい……」


 こうして、白銀の死神は初めて大衆に姿を現した。

 僕なんかを守るために……!

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