第6話 死神の証言


「それでだ……私がゼンくんを助けたんだ」

「なるほど……今の内容に、間違いはありませんか?」

「あ、ああ……」


 シロさんの証言を、受付嬢のリィンさんが調書に書き留める。

 それをガイアたちに確認していく。

 僕もところどころで口を挟んで、みんなで事実確認をしていく。


「と、いうことで……最終確認ですけど……」


 リィンさんがみんなの前で読み上げる。


「ゼンさんを殺すために、みなさんで結託してハメたってことですね?」


 リィンさんはまったく歯に衣着せぬ言い方で言った。

 それに、ダンが反論をとなえた。


「おいおい! それじゃあまるで、俺たちが人殺しみたいじゃねえか!」


 いや……実際そうなんだけど……。

 ダンは僕を崖から突き落とした張本人だしね。


「ええ、ですからそういうことですよね? これって、けっこうな重罪ですよ?」


 しかしリィンさんはまったく怯まずに応えた。

 やっぱりギルドの受付嬢さんは頼もしいや。


「っく……! もういい! こんなのくだらねえ! 付き合ってられるか!」


 ダンはそう言って、席を立った。

 まあ、自分に不利なことしかないから、逃げ出したくもなるのだろう。


「まあ、逃げるのはいいですけどね……。罪は償ってもらいますよ? あとでギルド職員がおうちをたずねると思いますから……お楽しみに……」

「っは……! 勝手にしろ……!」


 ダンはそう言って出ていってしまった。

 まったく、気の短い男だ。


「それで……ゼンさんは彼らにどんな罰を希望しますか?」

「え……? 僕、ですか……?」


 まさか、僕に振られるとは思ってなかった。

 でも、どんな罪を希望するって言われてもなぁ……。


「極刑に処しますか……?」

「な……! なにを言ってるんですかリィンさん!」


 リィンさんは澄ました顔で、物騒なことを言う。

 僕としては、そこまでしてほしいなんて思っていない。


「い、いちおう幼馴染で、元仲間なんですよ! 裏切られたからといって、そこまでは……」

「そうですか? 私なら、真っ先に殺したいとおもうでしょうけどね……こんなことをされたら……」

「えぇ……そうですか……?」

「ええ。それに、これだけの罪なら、可能ですよ? ギルドも裁判所も、文句はいいません」


 僕たちの話に、ガイアたちはどんどん顔色を悪くする。

 もはや言い逃れできないと思い、罪を受け入れる気なのだろう。

 だから、いったいどんな酷い罪を受けるのか、気が気でない感じだ。

 まあ、僕としてはそこまで重い罪にしてほしいとは思わないのだけど……。


「ゼンくん! ここはギロチンの刑でどうだろうか!」


 などと興奮した口ぶりで言ったのは、シロさんだ。

 まったく……シロさんもどうしてそんなに過激なんだ……。


「そ、そんなのいいですよ! もっと普通の刑にしてください!」


 僕は慌てて否定する。

 その後も、話し合いが続いた……。

 最後に、リィンさんがまとめに入る。


「では……パーティー全員のランクを、AからDに格下げっていうことでいいですか?」

「はい、それでいいです……」


 まあ、そこが落としどころかな……。

 重すぎる罪にして、また恨まれるのは嫌だ。

 それよりも、もう彼らとは会いたくもないんだ。


「あとは……ミーナさん? あなたがゼンさんから奪った荷物と、アイテムボックスのスキルを返してください」

「わ、わかったわよ……」


 ミーナはしぶしぶ、僕にアイテムボックスの中の物を返した。

 僕が奈落に落とされる前に、奪われた物たちだ。

 それから、彼女はなにやら呪文を唱えて、アイテムボックスのスキル自体を消し去ったようだった。

 これで、アイテムボックスはまた僕だけのものとなった。


「それから……ガイアさん、ミーナさん、ルカさん、みなさんでゼンさんに謝ってください。そして二度と彼に近づかないこと!」

「わ、わかりました……」


「「「ゼン、すまなかった……」」」


 僕は三人から謝罪を受ける。

 まあ、言葉だけもらってもあまり気分は変わらないのだけど……。

 それから、リィンさんはもう一つ付け加えた。

 これは僕としては反対したのだけど、リィンさんがギルドの決まりだからと推した罰だ。


「三人と……それからもうここにはいませんが、ダンさんは……。今後得る収入の半分を、ゼンさんに収めることとなります。いいですね……?」

「はい……」


 三人はとても暗い顔をしている。

 まあ、かなりキツい罰だと言っていい。


「じゃあそう言うことで、あとは裁判所のほうから詳しい通知が行くと思いますので……」


 とリィンさんは締めくくった。


「…………ッキ!」


 ガイアは僕を睨みつけると、ギルドを出ていった。

 ミーナとルカも、それに続く。


「はぁ……疲れた……」


 僕は一気に気が抜けてしまう。

 ああいう張り詰めた空気はどうも苦手だ。


「まあ、彼らに罪を償わせることができて、よかったじゃないか」


 とシロさんが僕の肩に手を置き、言った。


「ですね……。シロさんのおかげです」

「いやいや……私はなにも。ゼンくんは当然の権利を行使しただけだよ」


 僕は、あのときシロさんに出会えてなければ、あそこで死んでいただろう……。

 そして、今日また彼女が来てくれなければ、僕は適当に言いくるめられていただろう。

 全部、彼女のおかげなんだ……。


「本当に、ありがとうござます。シロさん」

「いいんだよ……私も、ゼンくんが報われて、嬉しい」


 僕とシロさんは、また会う約束をして、別れた。

 ぜひ僕にクエストに同行してほしいのだという。

 それだけ僕のアイテムボックスには使い道があるんだろうね……。

 まあ、僕としても、またあこがれの人と一緒に行動できるのは、すごく嬉しい。


 いつか、この思いを伝えたいけど……。

 そのまえにまず、僕ももっと強くならなきゃ!



――――――――――――――――――


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