第4話 ~受付嬢さん視点~


 私、ラフラ・フランシオンはギルドの受付嬢をやっている。

 だけど、その顔は昼の顔……。

 実は私の正体は、S級冒険者の白銀の死神だった。


 別に、冒険者をやりたくてやっているわけではない。

 私はもともと受付嬢として雇われた。

 だけど、ギルド職員として先行調査などをやっているうちに……。

 いつのまにか謎のS級冒険者などと呼ばれるようになっていたのだ。


 しかし、それは誰にもバレてはいけない秘密だ……。

 私の存在は、規格外すぎて外には漏らせないのだ。

 副業で冒険者をやっているのに、世界最強だなんて、他の冒険者たちに知れたら、みんながやる気をなくすというものだ。

 だって、受付嬢が片手間でやっている冒険者業に負けるなんて……。

 誰も冒険者に真剣に取り組まなくなってしまう。

 それは私の本意ではなかった。


 それなのに――。


「はぁ……ゼンくん……心臓に悪すぎる……」


 ゼン・フォワードくん。

 私が付いている冒険者の男の子だ。

 彼が帰ったあと、私は一人赤面していた。


「美しい……だって……えへへ……」


 そんなふうに言われたのは初めてだった。

 まあ、普段の私はこうして地味な格好で、目立たないようにしている。

 それに、冒険者のときはなるべく人と関わらないようにしている。

 必然、人から褒められるようなことなんてないのだ。


「それに……かっこいいって……。そうかぁ……男の子から見てもかっこいいのかぁ……私。なんだか照れちゃうなぁ……」


 ゼンくんの言葉と顔を思い出すと、からだがかゆくなる。

 そして、自然と口元がにやけてしまう。


 彼と出会ったのはたまたまの偶然だった。

 ダンジョンの探索中に、彼が落ちてきて……私がそれを受け止めたのだ。


「ゼンくんをあんな目にあわせるなんて……! あの人たち、許せない……!」


 私はゼンくんのために、彼らと戦うつもりだ。

 彼らに罪を認めさせ、ギルドに罰を与えてもらうんだ!

 そうじゃないと、ゼンくんがあまりにも可哀そうだ。


「ゼンくん、可愛いなぁ……」


 私の目から見ても、ゼンくんは可愛い男の子だ。

 そんな彼が私にあこがれを抱いてくれた……。

 冒険者として、一人の女性として、本当にうれしいことだ。


 そんな彼のことを、私は助けたいと思った。

 なぜか彼は、そういう気持ちにさせるのだ。

 私は理不尽なことは許せない……!


 明日、私は白銀の死神となってゼンくんを助けにいく。

 ギルドに、ガイアたちがやったことを証言するんだ。

 直接現場を見ていない私の証言が、どこまで通用するかはわからないが……。

 でも、私の言葉はギルドにとって、かなり重たく響くはずだ。


「それにしても……ゼンくんは不思議な子だ……」


 彼の身のこなしは、本当にびっくりした。

 今までは、あのAランクパーティーのただの荷物持ちをしているだけの子だと思っていた。

 でも、あの動きはきっと剣士だ。

 彼らの間になにがあったのかは知らないけど、彼はきっといい剣士になる。


 まあ、アイテムボックスのスキルや、ゼンくんの剣の才能に嫉妬して、追放されたのかもなぁ……。

 なんてふうに考える。


「だって……ゼンくん可愛いからなぁ。そりゃあ、嫉妬もされるよ……。彼女、いるのかなぁ……?」


 いや……別に、私がどうこうというわけはないけれど……。

 だって、普段の私は地味な受付嬢だし。

 それに、白銀の死神として付き合うというのも無理すぎる……。

 って……私はなにを急に付き合うだのなんだの考えているんだ……!?


「はぁ……これが、恋なのかな……?」


 こんな感情は初めてだった。

 ゼンくんは、なぜか私の感情を揺さぶってくる。


「そうだ……! 受付嬢として、陰ながら彼をサポートしよう!」


 そしてゼンくんを、一流の剣士に育てるんだ!

 そうすれば、もう彼が虐められなくなる。

 彼が白銀の死神に追いつくほどの強さになれば……。

 そのとき初めて、私は彼に告白しよう!


「同じくらいの強さになれば、秘密を共有しあって、いっしょに生きていけるかもしれない!」


 このとき、私の目標は決定した。

 ゼンくんを陰で見守り、サポートし、強くする。

 まずはその第一弾として、ガイアたちのパーティーに報いを受けさせる!


 これが私の、計画だ――!



――――――――――――――――――――――

【あとがき】《新連載》を始めました!


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