第7話 今日も



 そんな魔王軍で、私は今日も働き続ける。


 最近は抵抗感がなくなってきたので、新しい仲間を勧誘する事もある。


 みな、拾って来た時は最初の私のような態度だったが、魔王軍に世話になり続けると徐々にその態度も軟化してきた。


 魔王軍に入った例の一人目の人間は、たまに顔を見かける事がある。


 出世に出世を重ねた彼は、今は前線で魔王軍の一部隊を指揮して「みんな仲良く作戦」とかいう馬鹿げた名前の作戦を展開しているため、本部に戻ってくる事は少ない。


 けれど、たまに顔をみせると、人間を大勢連れてくるのでよく目立った。


 そんな日の夜、彼は、魔王と一緒に酒を飲み交わして親しく話しているらしい。


 遠くからその景色を見た事がある。





 人間のメイドと魔物のメイドが、一緒になって給仕をしている様子で。

 その様を眺めながら、人間のと魔物の王が仲良く談笑している光景。


 それは、英雄軍が魔物達を焼き払った後には、おそらく見られない光景だ。


 昔の自分だったら、なんとも思わなかっただろう。


 けれど、今の自分には何よりも大切なものに思えた。




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人類の敵に助けられた村人が、改革済みの魔王軍に入って驚く話 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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