第2話 新たな脅威

 いやー良い空気ですねぇ。どこまでも続くのは木だけだけど、空気も美味しいし、とにかく自然が綺麗だね! ま、だからといって探検家になるつもりはないけどね!


 森を歩くこと1時間。だんだん疲れてきた。座りたい。無性に座りたい! でも座ったら死ぬ可能性高いんだよなぁ。

 木にもたれ掛かるのもやめた方が良い。木の破片が背中にブッ刺さるかもしれないから。


 あと……今一番危険だと感じているのは……腹が減ったああああぁ!

 復活というループを永遠と繰り返していたから空腹という感覚を暫く忘れてた!

 まぁアレだ。空腹感はそう頻繁に訪れる訳じゃないから餓死なんてものは何度も体験することじゃあないでしょ。死んだら死んだらで……うん。


 そんな時に俺の鼻に動物が出す特有の匂いが来た。犬か猫かその辺りの糞の匂いなんだっけアレって。だがここは異世界。ってことはこの匂いから分かるのは、熊か狼ってところか!?


 やばいやばいやばい! 食われて死ぬのは何度も体験したくない死に方だ! いや、今まで死ぬ瞬間を思い出せば、死ぬ時は痛みなく一瞬だけど……引っ掻かれたり喰われたりする痛みは健在なんだろうなぁ。

 嫌だなぁ。怖いなぁ……。


 そう考えていれば、俺の予想は的中した。熊では無かったけど、どう見てもあれば狼だ。

 やっべ武器とか一つも持ってねぇや! えっと……木の枝だ!


「オラァ! こいや!」


「グルアァァァッ!」


「ぎゃあああぁっ……!」


 俺ははっと目を覚ます。何やってんだろ俺。狼相手に木の枝で勝てる訳ないじゃん!? これゲームじゃないんだよ!? えーっとその前にステータスステータスっと。


 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.1%、喰らいつき耐性0.1%


 はい新しいの来ましたー。多分これも今後成長しても無効にまで成長することは無いんだろうなぁ。通算1000回喰われるとかどんな不幸野郎だよ。


 まずはだな。恐らくこの先に何処かで出会う狼をなんとか対処しなくてはならない。

 だが逃げるのは絶対に無理だ。熊相手にさえ逃げるのは不可能って言われてるんだから、すばしっこい狼とか尚更だろ。

 石とかぶん投げるか? そんで少しでもダメージを与えられたら……。


 森を歩いて1時間。またヤツと出会った。


「これでもくらえ! モン○ターボ○ル!(石)!」


 俺はフルパワーで地面に落ちていた石を狼に向かってぶん投げる。


「キャウンッ! グルルル……グルアァァァ!!!」


 そう来ると思ったぜ!! でも対処法は……無い!!


 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.1%、食らいつき耐性0.2%


 あーどうしよ。なんとか狼を避けて森を出られねぇかなぁ。

 狼つーか犬って聴覚も嗅覚も人の数倍はあるって言うからなぁ。こっそりと通り抜けるのも論外か。

 なんならいっそのこと飼えないかな? どうやって懐かせるのかは分からねえけど、あいつは今も腹を空かせている筈だ。


 どうせ生肉とかどっかで見つけても食中毒で俺は死ぬ。餓死するのも空腹が限界突破した時に限るだろうから。食べられるものは食べる! 食べられない物を見つけたら狼にあげる! これ良い作戦じゃね?


 よーし、そうと決まったら狼を見つけた方角より逆方向に……どっちかわかんねえけど多分こっち!


 歩くこと1時間。狼と出会うことは無かった。運が良い!

 さて、なんか食糧あるかなー。


 というところで俺はなんと人が住んでいたあろうテントを見つけた。


 テントだあああぁ! 人、人がいた痕跡!! 


「すみませえぇん、どなたかいませんかぁ!」


 お! 中から人が!


「ᚹᚺᛟ!?」


 あ、これまずいやつだ。何言ってのか分かんねぇ。ゔっ……!

 んー死ぬ瞬間、なんか弓矢で射抜かれたような気がするな。


 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.2%


 気がするでもなく、確実に刺突耐性上がってますねぇ!!

 いやぁ、多分アレは俺が悪かったな。そりゃ意味不明の言葉をしゃべるおっさんが突然迫ってきたら弓矢を……射るかもしれない。つぎは全力で謙っていこう。どうせ向こうはこっちのことを覚えいない。


 歩くこと1時間。ようやく例のテントを見つけた。


「すみませえぇん。どなたかいますかー?」


「ᚹᚺᚨᛏ ᚹᚺᛟ?」


 今だ! 究極謝罪奥義! 土下座だあああああ!!

 これは大抵のことは許されるという全身全霊の儀。この上位互換に頭を何度も床に打ち付けるという方法もあるが、俺は一撃目で死ぬのでそれは出来ない!


「ᚹᚺᚨᛏ ᚺᚨᛈᛈᛖᚾᛖᛞ ᛋᚢᛞᛞᛖᚾᛚᚣ? ᚹᚺᚨᛏ ᚨᚱᛖ ᚣᛟᚢ ᛞᛟᛁᚾᚷ!?」


 何言ってんのか分からないけど、語調からして狼狽えている! これは効いてるぞぉ〜。だがまだ頭を上げてはならない。

 彼はまだ俺を敵かどうかを見極めているはずだ。だからこそ、ここで追い打ちを掛ける。

 その名も……物乞い!


 土下座の頭は上げずに、両手でお椀の形を作り、ゆっくりと相手の下から持ち上げていく。


「ᛒᛖᚷᚷᚨᚱ……」


 するとひんやりとした硬い物が、俺の手に乗せられた。俺はそっと頭を上げてその正体をみる。

 こ、こ、これは……! ジャーキーだああああ!! 肉うううぅ!


 俺は勢いよく齧り付く。


 うめえええええ! 腹減ってるから余計に美味く感じる……!


「……」


 相手の広角が若干あがった……? すると、彼は俺の視線にまでしゃがみ込み何かを言う。


「ᚹᛖᚱᛖ ᚣᛟᚢ ᛋᛟ ᛟᚾ ᚨᚾ ᛖᛗᛈᛏᚣ ᛋᛏᛟᛗᚨᚲᚺ?」


「すみません。何を言っているのか分からないんです」


「……」


 彼は頭を掻いて困り顔をする。まー言葉分からないってほんと不便だよなぁ。

 暫く彼は俺に唸り声を上げると、俺の手を引いて立ち上がらせてくれた。


 何をしようとしているか分からないけど絶対に良い人だこれ……!

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