第1話 森から出るまでナイトメア

 ショック死耐性0.1%ってなんだよ。今俺がショック死したから耐性が付いたってか? んなアホな。

 全く変な異世界転生しちまったもんだぜ。トラックに潰されるわ、ステータスもおかしいわついてねぇな俺。


「はぁ……」


 今日で二回目の溜め息だ。まずは座って状況を整理しよう。

 俺は地面にあぐらで座って、とりあえず落ち着こうとするが……お尻でパキッと音がすれば、小さな枝が俺の体重で折れたのか、尻に刺さって痛かった。


「ア"ッ……」


 俺ははっと目を覚ます。まさかとは思いステータスを開く。

 ショック死耐性0.1%、刺突耐性0.1%


 なんか増えてた。え、俺死ぬたびに成長すんの? 何それ……うわぁやっぱついてねぇええぇぇ! ゔっ……。


 おいおいおい! 何度目覚めんだよ! 俺ってどんだけ弱いんだ畜生! ゔっ……!


 はぁ……落ち着け。落ち着け混乱すると死ぬ。平常心だ。ふぅ……。えーと、ステータス。


 ショック死耐性0.3%、刺突耐性0.1%


 あー、俺死ぬたびにそれに関係する耐性を0.1%貰うのね。めんどくさっ!! ふむ。別にイラッとくることに関しては死なないようだ。


 さぁて? まずどうしようか? いやぁ、地面に座るのはやめよ? 枝踏んだら死ぬから。うん。

 まずは辺りを見回すことからだな! えーと……ゔっ……!


 ……。木漏れ日が眩しくても死ぬのね。いやーきついわ。太陽の光くらい別にいいんじゃん! 俺吸血鬼かよ。


 ショック死耐性0.3%、刺突耐性0.1%、光耐性0.1%


 馬鹿じゃねぇの? なんかもうどうでも良くなってきたわ。まずはな。森を出るところからだ。うん。俺あと何回しぬんだろ。


 よし、次は下を向きながら辺りを見回そう……いや何も見えねぇよ! どうしたら良いんだ!! そうだ! わざと死んで耐性上げればいいんじゃね? えっと、今太陽の位置は東だ。つまり復活した瞬間左向けば死ねる!


 ゔっ……!


◆◇◆◇◆◇


 ショック死耐性0.3%、刺突耐性0.1%、光耐性10%


 もう通算100回死んでる……まだ10%かよ。てかこれ100%になるまで1000回死ななきゃならん計算かよ。

 いや無理無理無理。いくらこれによってショック死耐性がついたとしても、心労によってガチで死ぬことになりそうだ。


 ここは大人しく手で陽を防ぎながら歩くとしよう。最初からそうやれよ!


 えー森を歩くこと30分。特に死ぬことなく順調に進んでおります。山に遭難するってこんな気持ちなんですねぇ。どこまで歩いて木、木、木……もはや進んでいるのか戻っているのかすら分からなくなってきた。

 あ、あ、あ、あああああぁ!! もういやだあああぁ! こんなの発狂ゔっ……!


 あぁ、これで復活何回目なのかなー。もう目覚めてもここが森のどの辺りなのかすら分からねぇ。


 ショック死耐性0.4%、刺突耐性0.1%、光耐性10%


 てか死んだら0.1%成長ってどんだけ地味なの!? この0.1%ってのはどこに役立つんだ? 光耐性10%でも太陽見上げるだけで死ぬんだぜ? はぁ〜……溜息が止まらねぇよぉ……。


 そういえばずううぅっと昼間のような気がするんだけど、太陽の位置が変わってないように見えるんだけど、これ復活したら時間も巻き戻っているとか言わないよな?

 だったら俺一生この森出られなくね?

 あ……。


 この時俺は急激に無限とも言える超高速ループを体験した。死んでも然程変わらないステータスに、死ねば時間が巻き戻るという事実に気が付いた瞬間、頭の中で同じ景色がぐるぐると回り出す。


 その間は正に虚無。同じ時間をループするだけに俺の頭はそれだけに埋め尽くされ、何も考えることが出来なかった。

 体感時間は数十分。


◆◇◆◇◆◇


────────────────────

 ショック死耐性100%、刺突耐性0.1%、光耐性100%


《条件を達成した為、耐性が進化します》


 ショック死無効、光属性無効、刺突耐性0.1%

────────────────────

 

 はっと俺は目を覚ます。なんかとてつもなく頭がスッキリした気分だ。全く混乱や焦りを感じない。そして一番最高なのは、ショック死と光属性が無効になってやがる!!

 やったぜええぇ! 一体何が起きたのか知らねぇけど、なんとかなったらしい。


 あぁ、この森の木漏れ日はこんなにも美しかったのか。心が洗われるようだぁ……。

 さ、森の探索と行こうか! はっはっはっは!

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る