第9話

ローザーが馬車の方に走ってしばらくすると、かわいい女の子を連れてきた。


「あの、この子は…?」


「このお方は、グレイス公爵家が長女、シャーロット・グレイス様だ。」


俺はその場でひざまずいた。


貴族について、父さんが教えてくれたことがある。


貴族は、準男爵→男爵→子爵→伯爵→辺境伯→侯爵→公爵となっているらしい。


公爵家という事は、貴族の中でも最上位の爵位じゃないか!


その公爵家のお嬢様が何故ここに?


「あ、あの!ローザーから伺いました!貴方は私の恩人です!本当にありがとうございます。」


そう言って、頭を下げてきた。


「ちょっ!頭を上げてください!」


公爵家の令嬢に頭を下げさせるって、打ち首になったりしないよな!?


「あの…」


「は、はい!」


「随分とお若いようですが、何故お一人でこんな所に?」


「実は、王都の学園の入学試験を受けに行くんです。」


「まぁ!そうなんですの!?私も試験を受けに行くんです!」


「ええ!そうなんですか!?」


「そうです!これもなにかの縁ですので一緒に王都に行きませんか?」


「えぇと…いいですかね?ローザーさん。」


「いいんじゃねえの?お嬢様が良いって言ってるわけだし。」


「そうですか。ならお言葉に甘えて。」


というわけで、王都まで一緒に行くことになった。


馬車の中では色々な話をした。


魔物との戦いや、狩りのことを。


シャーロットの話も聞いた。


どうやら、シャーロットはこの国の王子と婚約しているらしい。


まぁ公爵家のご令嬢なんだから不思議じゃないけど。


◆◆◆


時々出てくる魔物をローザーと駆除しながら半月掛けて王都に足を踏み入れた。


「ここが王都かあ!」


そこは人が多く、活気に満ちていた。


「では早速、試験の受付に行きましょう。」


「はい。」


そう言ったが学園はかなり遠いらしい。


学園は王都の東側にあるんだが、王都自体が広すぎて、学園まで距離があるのだ。


そこから3時間程馬車で移動していると、学園の門が見えてきた。


「では、私はこちらですので。」


「分かりました。」


どうやら貴族と平民は分かれているようだ。


俺も受付を済ませるか。


「お名前と出身を。」


「ルイと言います。出身は名前もない小さな村です。」


「分かりました。これがあなたの試験番号です。無くさないようにして下さい。」


そう言って受付のお姉さんは102と書かれている木の札を渡してきた。


「遠方から来たということですが、宿は取られたでしょうか。」


「いや…お金が…」


「お金がないのですか…。」


お姉さんは、少し考えたあとに切り出した。


「では冒険者になるのはどうでしょう。依頼をこなせば報酬が支払われますよ。ちなみに登録料は銅貨一枚です。」


銅貨一枚なら大丈夫だな。


「分かりました。どこに行けば冒険者になれますか?」


「ここを出て真っ直ぐ行くと右手側に大きな建物がありまして、そこが冒険者ギルドとなっております。」


「分かりました。ありがとうございます。」


えっとまっすぐ行って右…ここか。


冒険者ギルドに入ると、厳つい冒険者達がいた。


「おい…ガキが来たぞ。」


「何しに来たんだ?」


ざわめきが起こったが気にしない。


受付は…ここか。


「あの…冒険者になりたいんですけど。」


「え?でも君は若すぎるんじゃないかしら?」


「だめなんですか?」


「だめじゃないわ。でも冒険者は危険なの。」


心配してくれているのか?


「大丈夫です!」


「あなたがいいなら良いわ。銅貨一枚よ。」


懐から銅貨一枚を取り出し、お姉さんに渡した。


「じゃあ冒険者の事を説明します。まず冒険者ランクというのがあり、F級からSS級まであります。ランクが上がるごとに難しい依頼を受けることができます。依頼の受注はあそこにある依頼ボードから取ってきて、受付に持ってくると依頼開始です。」


「ありがとう、お姉さん。」 


「どういたしまして。…ハイこれ。」


そう言って渡してきたのはプレートだった。


「それは冒険者プレートよ。君はF級だから銅色。ランクを上げるように頑張ってね。」


そうして俺は冒険者になった。

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転生先は村人でした 膝からレンコン @Onigiriyuusya

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