第一章 エピローグ

 ルーナの奪還騒動から数日が過ぎた。

 あれからアメリアはまた魔王討伐を目指す日常に戻り、ルーナはアメリア付きのメイドへと戻る事ができた。


 ただ少し変わったのは——


「姫様、朝ですよ」


 ちゅっ……


「んっ……ルーナ、あなたまたキスしたわね? 魔王に怒られても知らないわよ」

「だってぇ、魔王様からキスOKの許可貰っちゃいましたもーん」

 ルーナがアメリアをキスで起こすようになり、日常でもアメリアを見ながら時折顔を赤くするようになった。


 そしてマチルダは——


「えぇい! 貴様等! 私は今からフィナンシェを作るのだ! どっか行かんか!」

「お願いしますマチルダ様! お菓子など作っておらずに、どうか我々にも修行をつけてください!」

「菓子作りを舐めるなぁ!! 貴様等には剣よりも、まずはクッキーの焼き方から教えてやる!!」

 あれ以降、その強さに惚れ込んだブランシュ兵達に懐かれて、毎日のように押しかけられているようだ。


 そしてプリムは——


「いいかい? 女の子の魅力というのはね、可愛さとかっこよさのバランスが……」

「「はい、プリムお姉様」」

 あの夜何があったのか我々の知る由ではないが、ヴァルキリー隊達はプリムをマチルダと同じように『お姉様』と呼ぶようになり、なんだか色っぽくなったと城内で話題になっている。プリム当人も友達が増えたと喜んでいるようだ。


 メルティアも相変わらずアメリアと共に修行に励んでおり、少しずつ言葉も上手くなってきているようだ。先日はルーナが絵本の読み聞かせをしたらしい。


 そして、相変わらずお茶会も続いている。


「剣の音も良くなってきたし、そろそろ次の段階に入ろうと思うのだが……」

「アメちゃん最近引き締まってきたよねー、ヌルヌルしてたらわかるよー」

「メルティアちゃん、お口についてますよ」

「アジガ、イイ!」

 丸テーブルを囲んで紅茶を飲む皆を見渡して、アメリアは思う。

 こんな日々がいつまで続くかはわからない。

 だからこそ、こんな日々を大切にしたい、と。


 エスポワール王国王姫、アメリア・エスポワールの魔王討伐は、まだ始まったばかりである。

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