1.3
“お兄さん、綺麗ね”
そう言葉を発しようとするが、声は出ず、パクパクと口を動かす。
「……ん?」
眉を顰めるお兄さんに“ダメだよ、シワになるよ”と綺麗な肌に触れて眉間を優しくくりくりする。
「…お嬢さん、もしかして…声出ないの?」
私の手に触れてぎゅっと握りながら私の視線に合わせるように屈んで優しい顔でそう言ったお兄さんにニコッと笑って頷く。
“耳は聞こえるよ、でもね、声は出ないんだよ”
そうジェスチャーをしながら声の出ない声を乗せる。
そっか、と笑ったお兄さんは優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。
優しいな、触れてくれるなんて…暖かいな人の手は…
さっきまでの悲しさも寂しさもお兄さんの優しい手でふわりとどこかに飛んで行ってしまった。
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