第5話 脱出後

戦場を何とか離脱した俺は進路を小惑星帯アイダに向けて舵をとっていた。


「ライさん、何で小惑星帯アイダを目指すのですか?」

艦が安全圏に来たとき、ミラが質問してくる。

「アイダを目指すのは、船を弄る為だ。」

「船を弄る?」

「アイダは非合法な所が多くてね、この艦のままだと直ぐに見つかるだろ?

それなら、わからなくしてしまえということだよ。」

「そんなこと出来るの?」

「出来るさ、なあリュウ?」

「任せとけ、あそこにはそういった事が出来る知り合いがいる、しっかり偽装してやるよ。」

「偽装って・・・」

「何せ、どさくさ紛れに軍艦を奪ったからね、いい艦には違いないけど、このままじゃ犯罪者になってしまう。」

「・・・あのですね、ライ、犯罪者になってしまう。じゃなくてもう犯罪者ですよね。」

アヤカはジト目を俺に向けてくる。


「アヤカ、これは・・・ほら仕方なかったじゃん?」

「それなら艦を返却すればいいのでは無いですか?」

「・・・やだ。」

「やだって・・・ライ子供じゃないんだから。」

「折角手に入れた艦なんだ、絶対手放さない!」

俺は艦長席にしがみつく。

「ライ、何をだだこねてるのよ。」


「これは俺の艦だ、登録もしたし!」

「ちょ、ちょっと本当に艦長登録してるじゃない!」

アヤカはデータを見て眼を丸くする。


「もちろん!だから俺の艦だ!」

「こういう時は、臨時艦長として登録して返却するって決まりでしょ?」

「・・・ツイマチガッタナァ。」

俺はアヤカから眼をそらす。


「確信犯ね。ちょっとどうするの!ライが捕まっちゃうよ!」

「・・・だから、偽装するんだよ。」

「はぁ、何でここまで用意周到なのかな?」

「いつかチャンスがあれば、と思ってね。」

「ライ!少しは反省しなさい!」

俺はひとしきりアヤカに怒られたあと、今後について相談する。


「真面目な話、今後どうする?

俺はこの艦で商売を開始するつもりだが、みんなは?」

「聞かなくてもいいだろ?俺達はお前の夢にかけているんだ、一緒にいくさ。」

アヤカ以外のフウマ達はあっさり受け入れる。


「みんな、普通じゃないと思わないの?」

アヤカはあっさり受け入れているみんなが不思議でならなかった。

「こいつが普通なわけない、どうせやるならトコトンやっちまおうぜ。」

「夢が早まっただけじゃねえか。」

「バレなきゃ罪じゃないんだよ。」

俺の計画に参加してくるだけあってみんなアウトローであり、楽観的だった。


「ねえ、ミラちゃんは違うよね?

ライに真っ当な道を歩いてもらいたいでしょ?」

アヤカは数少ない常識人と思われるミラに問いかける。

「わ、わたしはライさんが行くなら何処にでもついていきますから・・・」

ミラは恥ずかしそうにモジモジしながら言ってくるのだった。


明らかにライが狙いなのはアヤカにもわかっていた。

しかし、鈍いライだけがミラの想いに気付いておらず・・・


「ミラは何処か安全な所で学校に通ったらいいんじゃないか?」

俺の言葉にみんなが頭を抱えていたのだった・・・


「ライさんはひどすぎます!私も一緒に行きますから。

それに航行中の食事はどうするんですか?

私以外に料理できる人いないでしょ?」

ミラは勝ち誇ったように言う。

「・・・ほ、保存食がある。」

「「「ブーブー!」」」

俺の苦し紛れの言葉に周りからクレームが出る。

「ほら、味気の無い保存食何てみんな嫌なのよ。」

ミラは料理上手な為にみんなの期待も高かった。


「わかったよ、ミラもついて来てくれるかい?」

「はい♪」

ミラは笑顔でこたえてくれる。

それを面白くなさそうにアヤカは眺めていたのだった。

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宇宙の彼方へ カティ @fortune-Katty

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