第45話 『とぅー・でたーみねぇしょんず!』

「平よ、いよいよ残り二人だ。…よくここまで来たな。褒めてやろう。」

 サタンの微笑む顔を、平は初めて見た。

「誰が残ってんだ?」

「米沢乱流という男だ。契約している悪魔にも大層気に入られているらしい。」

「そうか…合理が生き残ってたら多少はドラマチックだったのにな。しっかし気に入られてるって…どんだけ強いヤツなんだよ、アイツ」

「いや…アスタロトは悪魔の中でもトップクラスに性格が悪い。強いかどうかは知らんが…マトモな奴ではないだろうな。」

「ふーん…」




 ─数十秒の静寂が、再び破られる。

「なぁ、悪魔…って、いつからいんだよ」

「あぁ…まぁ言ってもいいか。元々、我は人間だった。」

「マジ?」

「そうだ。同じような争いをしたことがあってな。アスタロトという悪魔と契約していた。」

「…生前はどんなことをしてたんだ?」

「ソルグレアという国で軍人をしていた。自慢になるが、白兵戦で我に適うものはおらんかったぞ?魔王相手でも同じだった。」

「その時の能力はなんだ?」

「加護は契約の関係上言えんが…契術は、炎を操る能力だ。流石にわかるだろう?」

「そういうことか、あと一つ。どうやって悪魔になった?」

「『資格』だ。」

「シカク?」

「悪魔になるには資格が必要なのだ。それは2つ。強い感情と…もう一つは、我にもよくわからん。」

「んだよ、テメェ悪魔だろ?」

「我は悪魔の中でも新参。アスタロトならわかるかもしれんが…」

「『サタン』の名を冠しているのにか?つーかそのアスタロトって…そんなに偉いんだな。」

「ヤツは、最初の悪魔だ。不明な点も多い。もしかすれば…元が人間ではないかもしれん。」

「そうか…まぁ、結局は勝つだけだ。掴み取るぞ、理想の未来を。」








「じゃじゃーん!残り2人ッスよ!ここまでお疲れ様ッス!」

「…治療は完璧だ。宮藤、よくやった。」

「贅沢な命の使い方ッスね…自分のために命を賭けてくれる人がいるなんて、羨ましいッス!」

「アスタロト、聞きたいことがある。」

「なンスか?」

「悪魔って…何をして生きているんだ?」

「悪魔の仕事は、この世界の監視ッス!そしてたまにちょっかいをかけることッスね!」

「今の世界より随分楽しそうだな、俺にその資格は…ない方がおかしい。」

「その意気ッス!こんな答えができないと、資格なんてあるわけないッスよ!」

「あと…興味本位だが俺は悪魔は元は人間だったと睨んでいるが、お前の生前について聞きたい。あ、嫌ならいいぜ?」

「うーん、難しい質問ッスね…。まぁ敢えて言うなら、最初の世界が生まれた時からいるッス!」

「そこまでしかわからないのか?」

「勝ったら教えてあげるッス!」

「じゃあ楽しみにしとくか。あぁそうそう…もう一ついいか?」

「どうぞッス!」




「お前…俺に何を期待している?」

「面白い質問ッスね…」

 アスタロトがニヤリと笑い、スッと米沢に近づく。

 そして後ろに回り込み、抱きつき、囁くように言った。

はちゃんと期待してるンスよ?米沢ちゃんが、間違いなく勝利するッス。」

「本当にそれだ…」

「大丈夫ッスよ、米沢ちゃん。今はシューチューッス。米沢ちゃんは勝てる。米沢ちゃんは間違いなく、悪魔になれる。だから…懸念することなんて何もない。驕らず立ち向かえば、敵なんているはずがない…ッスよ!」

「それもそうか…そろそろ勝ちに行くぞ。永遠に俺が楽しむためにな。」

(あぁ…米沢ちゃん…最高にカワイイッスよ…。後は期待通りの結果を…お願い、するッスよ?)








 午後6時、最後の夕焼けが閉じていく。

 二人は、瓦礫に囲まれながら佇んでいた。

「テメェが米沢乱流か…随分期待されてるようだな。」

「知らねぇよ、俺は暴力的に世界を染めるまでだ。」

「一つ聞くが…一体なんのために戦う?」

「俺のためだ。俺がこの世界を遊び尽くすため。お前の屍の上に立った後は、全てを創造し、嘲笑し、愛しよう。さて…お前も聞かせろよ。」

「世界のためだ。俺達のために、理不尽のない世界を創るため。テメェを骨の髄まで燃やし尽くした後は、全てを破壊し、庇護し、報いてやらァ。」

「知るか、俺の享楽の方が上だ」

「ほざけ、俺は復讐すんだよ」

「「俺のために…死ね!」」

 残り2人

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