第33話 借金 6784万4999ゴル

次の日、フリカエルの査定が出た。


同レベルのモンスターの買取基準額は11500ゴル。


果たして…。



「お、おいくらでしたか?」


「………。」


「安かったんですか!?」


「……5万ゴルだった。」


「え!?

 そんなに!?

 やった!!」


「なんでそんなに高かったんだ?」


「…肉が……うますぎる。」


「た、食べたのか…?」


「…食用にできるってわかったから、味見にな。

 ……気絶しそうなくらい美味かった。」



ゴ、ゴク……。



そこまで言われると食べたくなるのが人の性。



「テレージアさん。」


「ニクラス。」


2人は顔を見合わせ、頷き合った。


そして、代金も受け取らずにDランクダンジョンへ爆走した。



しかし、ダンジョン前についても、ニクラスの予知は発動しなかった。


「フリカエルに遭遇しないのか…、それともドロップしないのか…。」


「行ってみるしかないわね…!」



2人で敵を倒しながら最短距離で奥へ奥へと進む。


15体ほどのモンスターを倒したところで、最奥へと到着した。



「またあの細道の奥にいるかな?」


「どうかな?

 あんまり遭遇するモンスターじゃないけど、遭遇する時は道中でするのよね。」


「いますように…!」




細道を通って行く。





その先には、アイツがいた。



「「いた!!!」」



思わず大声を出す2人。


びっくりして振り返るフリカエル。



「うっ…。」


テレージアがフラついたのを見て、やっぱり近寄ってくるフリカエル。


そこを前回と同じようにニクラスが仕留めた。



「やった!!

 テレージアさん、大丈夫??」


「うん…。

 大丈夫。

 それより…、仕留めちゃったね!」


「ね!

 やっぱりドロップはなかったけど…、気絶するほど美味しい肉が…!」


「気絶しちゃったらどうしよう!」



節約生活の長かった2人は質素な食事が多かった。


帰りは10体ほどのモンスターを倒しながら、これまた最短距離で入り口に向かった。



「どんな味か楽しみだね!!」


「そうだね〜!


 あっ!」


「な、なに?

 テレージアさん。」


「フリカエルの代金もらうの忘れてた。」


「あ!

 そうだった!」


「まあ…。」


「いっか!」


「明日行こう!」



2人は有頂天で家に帰ると、テレージアが手際良くフリカエルを捌いた。


料理が得意でない2人はシンプルにスパイスを振って焼くことに。



「この方が素材の味がわかるわ。」


「うん!

 食べよう?」



期待を込めてフリカエルを食べる2人。



「あっ…。」


「…意識が…。」



あまりの美味しさに2人して意識を失いかけた。


この日、とても幸せな気分で2人は眠りについた。



翌日。



「さあ、昨日の分も売りに行きましょ!」


「1匹目のフリカエルの代金も一緒にもらわなきゃね!」


「あの場所がフリカエルの巣だったら、効率よく稼げるわね!

 ドロップも狙えるし!」


「ね!」





「……買い取れ…なくなった。」


「「え!?」」


「…あの肉、幻覚作用があるみたいだ……。」


「う、嘘…。」


「……1匹目の5万ゴルはちゃんと払うが、次からはもう…。」


業者さんの目に涙が浮かぶ。


「業者さん…。」


ニクラスとテレージアも涙ぐむ。


幻覚作用があるとわかっては、売れないし流石に食べられない。


「……ダニエルだ。」


「え?」


「…ダニエルっていう名前だ。」


「あ、ダニエルさん…ですね。」


「…また…、美味しいモンスターを…頼む。」


「…わかりました…!」


「がんばろう、ニクラス…!」



美味しい食材と、美味しい金稼ぎのあてはなくなってしまったが、ダニエルとの絆が深まったのだった。


なお、買取金額は前回のフリカエルと合わせて、25万ゴルだった。

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借金まみれの【予知者】、レアアイテムを集めて返済してたら救世主になってました 玉ねぎサーモン @tamanegi-salmon

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