最終話

 あつらえたような青い空、澄み渡る空気、瑞々しい草木。

 この世の真ん中に、男は一人、立っている。

「人間とは、どこから来て、どこへ行き、何を失うのか」

 切れ長の瞳に映るのは、この世の全てである。

 男は振り向くと、姿勢正しく正座をした。

「では、これにて」

 男は、畳の上で深く頭を下げる。

 ぱん、と誰かが手を叩く音。

 男の姿が消えた。

 最初から何もなかったような静寂が、この世を支配していた。

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糸坂有 @ny996

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