第20話

「疑わしい男を捕まえた?」

 少年武官は驚いた声を上げた。報告をした若い武士は、「内密にお願いしますよ」と言う。

「本人の申し出があったので、一晩ここで見張ることになりました。もしその間に鬼が出れば、男は鬼ではないということになりますから」

「あれ、でも、鬼の仕業なんじゃ……? あ、鬼が人間に化けているんでしたか?」

 少年武官が首を傾げると、若い武士は慌てて言う。

「あの陰陽師がどうしてもと言うので、調べて見ようということですよ。本人も良いと言うし、どこか、奇怪な雰囲気がありまして……まあ一応小耳にということで」

「そう、ですか。でも、今日鬼が出るとは限らないのでは」

「出なければ、私が陰陽師を適当に言いくるめますから、ご心配なく。なので今日は、相良の君には、別の人に付いていてもらうことにしました。もちろん、何かあれば私もすぐに駆け付ける準備はしておきます」

「分かりました」

 少年武官は頷いた。若い武士は言う。

「相良の君は、まだ落ち込んでいらっしゃるようですね。早くどうにかしないと」

「そうですよね、本当に……お忙しいのに、すいません」

 少年武官は頭を下げた。若い武士は、とんでもないと手を振る。

「相良の君をお守り出来るなんて、光栄なことです。明日からは有難く、しっかりと役目を果たさせてもらいます」

「よろしくお願いします」

 二人は別れた。

 しだいに太陽は沈んで行き、夜が這い寄って来る。人々は恐れ、闇から逃れるように屋内へ逃げ込んだ。

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