(第一部完結済)双剣使いの英雄譚 ~ロボやモンスターが飛び交う世界に転生したので、自由気ままに生きるために前世の経験を駆使して楽しみます~
第31話 女だろうと知ったことか! キッチリぶん殴ってヤキ入れてやらぁ!
第31話 女だろうと知ったことか! キッチリぶん殴ってヤキ入れてやらぁ!
娘竜は喋れないのか、喋らないのか。
俺の――正確にゃあヴェルリート・グレーセアの構えを見て、興味深げに首をかしげるだけで、何もしてこねぇ。
てっきり“遊び”を中断させられたことに怒るかと思ったがな。俺と
とにかく、興味の矛先が俺に向いたのは何よりだ。
性別的にゃあ女ってことになるが、知ったこっちゃねぇ。
俺のいる艦隊をメチャクチャにしやがって、キッチリぶん殴ってヤキ入れてやらぁ!
「オラァ!」
今回は俺から仕掛ける。
無理に顔を狙わず、ウロコが剥げそうな場所を狙う。
武器に頼らず徒手空拳でも戦えるようにする双天一真流の心構えが、この奥義に凝縮されてるってワケだ。専用の組手もあるくれぇだしな。
反撃の爪をいなしつつ、まず腹に一撃入れる。
ウロコ下の柔らけぇ肉をブッ叩く……のはそうなのだが、基本的に打撃は衝撃だ。内側に浸透させ、内臓や骨っつー組織にダメージを与える。
表面を硬いウロコで覆ってても、問題なく通じる。これが殺せってんなら、もっと威力を強めてたが……今はそうも言ってらんねぇし、そもそも殺しちゃいけねぇんだよな。
「いい声で鳴くじゃねぇか、あぁ?」
ヴェルリート・グレーセアの打撃は、とりあえず通じてるみてぇだ。悲鳴そのものな絶叫が上がってるからな。
怒りに任せた左手――左前脚か? まぁそんな爪が迫ってきてんのを、俺は軽くかわす。気配察知さまさまだぜ、攻撃ポイントも回避方法もバッチリ分かるかんな!
「さっきの速さはどうしたんだ? ほら、俺ばかり当たっちまうじゃねぇかよ!」
セリフを聞いてると、自分でも意外だと思うぐれぇのSっぷりだ。こんな変態の素質なんて……あっ、あったわ素質。アドレーアにカラダを代償にするよう迫った契約の時だわ。
なんて思ったが、娘竜にはこれくらいがちょうどいい気がすっぜ。
自分がしてきたのを、そっくりそのまま味わわせてやる。このまま手も足も出させず、「参った」を引きずり出してやらぁ!
俺がもう一撃を叩き込んだとき、娘竜が高熱を放ってるのを察知する。
「クソ、
何でか耐熱仕様なヴェルリート・グレーセアじゃなけりゃ、身動きが取れずに文字通り溶けちまう熱さだ。
今の俺は気配だけで感知してるが、コクピット内は快適そのものな温度だぜ。これ、新種の共感覚じゃねーのかな。
なぁんてボーッとしてる余裕もねぇ。娘竜の動きは、高熱フィールドを出して終わりじゃねぇからだ。
一撃必殺の威力を持つ爪や、槍みてぇな尻尾の先端が襲い来るのを、俺は気配と勘を頼りに、紙一重だが確実に避ける。
「どんどん熱くなってきてんな……どこまで熱くすりゃ気が済むんだ?」
たぶん俺らが溶けるまで、っつーセルフツッコミはしねぇ。
この状況じゃ、避けてばかりじゃ話になんねぇな。
「オラッ!」
回避の隙を突いて、光って見えたウロコに拳を叩き込む。
と、残像まで光って見えるぜ。目の錯覚じゃねぇよな? つか、なんか腕白くなってねぇか?
「もう一発、食らっとけ!」
背後から抱きかかえるように迫った爪を急上昇でかわすと、背中にカカト落としを見舞う。
アドシアで繰り出す足技だ、威力が違うぜ。さすがに効果テキメンなようで、すぐ悲鳴が上がる。……ん?
当たった箇所、逆に溶けてんじゃねぇのか?
娘竜の背中が、液状化してるように見えるぜ。
さて、やりすぎんのもアレだ。母竜から怒られちまう。たぶん間違いなく。
どう見てもありゃ娘想いだし。
「じゃあ、シメのキツーいやつ、食らってみっか?」
娘竜を見下ろすようにしながら、俺は拡声器をオンにして聞こえるように言ってやる。
自分より小さい存在であるヴェルリート・グレーセアだが、一方的になぶられ――いや、殴られたのがこたえたのか、怯える気配が漂ってきた。
だが……それで止めてやるほど、俺は優しくねぇ。
過去に
「喋れるんなら、降参しろよ? もっとも、ちゃんと俺が殴り終わってから……だがな」
なんで俺が殺す手前まで殴っておきながら、殺さなかったか?
そりゃあ簡単だ。「ここまで殴りゃ死ぬ」ってのまで、気配で分かってっからだよ。
さて、あんま長く恐怖を与えても、ヤケを起こすかもしんねぇのでとっととやるか。
「いくぜクソ竜。面白半分で艦隊をメチャクチャにしただけ、きっちり食らいやがれ」
言葉が終わると同時に、俺はまず腹に一撃を入れる。ズシンと重い手ごたえ、
そこで息つくヒマも与えず、追いついてから胸を連打する。さながら、“
さらに蹴飛ばした勢いに追いついてから、背中へのカカト落としと腹の蹴り上げを複数回セットで見舞ってやる。上下めちゃくちゃに揺すぶられた娘竜は、悲鳴を上げる余裕すら
「仕上げだ!」
最後に、ムカつく顔に左右フックを叩き込んで、ついでに右足での蹴りも叩き込んでから、アッパーカットをブチ込む。
全力を出した一撃は、綺麗に娘竜の巨体を吹っ飛ばした。……とりあえず、チリに返ってねぇので生きてんな、うん。
「……で。『降参』は?」
「こ、降参します! だからもう痛くしないでぇ!」
お、ようやく喋ったな娘竜。竜姿のままだから、声と見た目がぜんぜんつり合わねぇけど。
とりあえず、ちゃんと降参したようなので、話を続ける。
「お前、人間の姿になれるよな?」
「はっ、はい!」
「じゃあなってから、
言われた娘竜が、慌てて人間の姿になる。
ズームして見ると、うーん、やっぱ母竜と似てんな。おっぱいもきっちりでけぇし。
そういうワケで、俺の竜退治はこれにて一件落着を迎えたってこった。
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