第21話 そろそろか? 俺はもう行けっぜ
あの後。
ボコボコにぶっ壊したトレーニングロボの件で、管理責任者から小言をもらった俺は、大して気にせずに部屋まで向かってたぜ。
あ、シルフィアとは一時別行動だ。所属が違うからな。
そもそも、シルフィアは軍属かつヴァーチア直属だけど、俺はドミニア専属だ。今のところは、な。
俺と違って、勝手な行動が出来ねぇワケだ。シルフィアの性格にはハマってるだろうが、俺だったらやってらんねぇね。
つーて、俺は俺でこの作戦をサボる気にもならねぇんだよな。
小さい頃から
空の自由が
ま、アドレーアの下にいるのはなし崩し的だが、悪かねぇぜ。
いずれ自由を探すために離れるかもしれねぇが、それでも今はこれでいい。シルフィアにも会えたしな。
『ゼルシオス様』
なぁんて思ってると、通信が入ってくる。
ったく、しゃーねぇな。
「何だ?」
『作戦準備に移ります。ただちにヴェルリート・グレーセアへと、搭乗していただけますね』
そろそろか。俺もさっき、シルフィアとの模擬試合で体をあたためたとこだぜ。
「もちろんだ。つーか、ここまで待ちくたびれたぜ。俺はもう行けっからよ、機体の準備はキッチリしてくれや」
『既に抜かりなく』
「心強い限りだぜ」
それだけ言って、俺は格納庫まで向かった。
***
「さて、頼むぜ」
ついさっき戦闘をさせたばかりだが、そんなこたぁ言ってる状況じゃねぇ。
俺はヴェルリート・グレーセアを起動させると、各部の調子を確かめる。……いい仕事してんぜ、整備部隊。
「作戦、振り返るか」
深呼吸をして、概要を確認する。
やるべきこと――それは、一にも二にも“
経緯として、高度1,000m以下の空域への侵攻が最初の異常だ。その中でも、本来有り得ない高度に出現した
そして直前の奇襲をはじめとした、戦術的行動。
本能のままに向かってきた
だが、それでも奴らは、“撤退”という行動を取った。戦力を温存するかのように。
これらの異常の真実を知るため、俺たちは急きょ
さて、俺は遊撃隊だったな。これといった命令は無く、作戦内じゃあ自由行動。
つまり――どれだけ
じゃあ、一番槍をもらうとすっかね!
「……よし。やるこたぁ見えたぜ」
『ゼルシオス様。出撃願います』
「あいよ。ちょうどか」
いよいよだな。
俺はさっきと同じように、発艦を済ませる。
「発艦完了。そんじゃ、自由行動ってことで」
『そうですわね。
「あったりめぇだろ!」
元々そのための遊撃隊隊長なんて待遇だったからな!
なんて思ってると、左側に
『ゼルシオス様。行ってらっしゃいませ』
「ライラか。直掩だよな?」
『はい。万一の際は、私がドミニアの最後の盾となりましょう』
「アホか」
素で言っちまった。頭が固すぎんだろ、オイ。
『何でしょう?』
「そんなこたぁさせねぇよ。それに、盾はお前だけじゃねぇ。俺もだよ」
『ゼルシオス様……』
アドレーア……あと、ついでにアドライアとかその他諸々を死なせるなんてクソ食らえだからな。
いざとなったら、遊撃隊の俺も守りに向かうぜ。
「それだけだ。そんじゃ、行ってくっぜ」
『どうか、ご無事で』
「ったりめーだ」
ライラの言葉を受け取ってから、俺は最前線に向かってった。
***
「だいぶ展開してんな……」
槍みてぇな陣形の最先端。
既に、最大多数のアークィスと――一部には、リヒティアもいた。
『ゼル君!』
その中には、シルフィアもいる。
「シルフィアか。お前、支援担当じゃなかったっけ?」
『そうなんだけどね。全距離担当の私は、いざとなったらすぐ近接戦闘にも移れるようにって』
「そうかい。ま、お前の実力なら大丈夫だわな」
『うん……えへへ』
なんか照れてんな。
まぁ、マジでシルフィアなら問題ねぇだろ。
俺は先頭を行くアークィスの邪魔をしないように高度を取りつつ、さらに機体を加速させる。
マッハ10に迫る圧倒的な速度で、編隊をぶっちぎった。
「ひょー、
これだけの速度を出してるにもかかわらず、かかるGは大したもんじゃねぇ。ホント、どんな先端技術使ってんだよ。古代兵器らしいけど。
つーか旧式のシュタルヴィント改でも、Gは全然だったけど。
っと、そろそろ
俺は高度を上げつつ、まばらにいた
「こちらヴェルリート・グレーセア。
『こちらドミニア。ゼルシオス様、異常は見られますか?』
「異常だぁ?」
高度1,000mの現在地から、2,000m近くまで見上げる。
「今の位置からは――」
と、嫌な予感が駆け巡った。
俺は素早く、高度を1,200mまで上昇させる。
『ゼルシオス様、どうされましたか?』
「ちょっと待ってろ! どうも嫌な予感がする……」
アドレーアを黙らせて、
次の瞬間――塔の外壁の一部が、ぐにゃりと曲がったように見えた。
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