第38話 地下組織 静かなる緑炎

 ディリオスたちはアンナ・ランバートに案内されていった。

アンナはある建物のドアの前に立つ屈強な大男の元へ足早に駆け寄ると、分かりやすいほど理解できる話をした後、手招きしてきた。


ディリオスは屈強な大男に対して死というものが、理解できるほどの眼光を見上げて飛ばした。大きな男は後ずさりして近くから離れた。


アンナはそれを見て更に喜んでいた。

建物に入って彼女についていった。


「ディリオス様。これは幻術です」サツキがすぐに気づいた。

「女だとて騙すつもりなら容赦なく消す。お前もお前の仲間たちも全てを、この世から消してやる」


アンナは焦った。何一つ通用しない事ではなく騙すつもり等皆無だった。問題ないと思って幻術はかけたままにしていたが、説明不足だと思い直した。


「騙すつもりなんてありません。問題ないと思っていただけです。この建物は幻術ですが、何も仕掛けるつもりはないです」

「幻術を解け。邪魔だ」


サツキは幻術者の場所もすぐに当てた。

ディリオスはそこに向かってナイフを飛ばした。


そして微かな感触が当たるまで、ナイフを飛ばして止めた。床に血が滴り落ちた。

幻術は解けていき、本来の姿を見せた。


見破られたのは初めてであったネイサン・バルスの眉間には、ディリオスの投げたナイフがほんの少しだけ刺さっていた。


ネイサンは自分が見えていないのに、見えている程の精密さに驚嘆し、さらに眉間に一瞬だけ刺さって止めた力量に対して大汗をかいていた。

黒衣の男はナイフを手元に戻して腰にしまい込んだ。


「まだ何かあるなら今のうちに言っておけ。そのほうが身のためだ」

アンナは色々考えたが思いつかなかった。


「アツキ。お前が調べろ」

「わかりました」


「安心しろ。痛くはない、隠し事を探るだけだ」

「お前にとってもそのほうが安心だろう」

震える女にアツキは触れた。


「わかりました。どうやら本物のディリオス様を探している模様です。その為に今まで偽物が多すぎたため、試練を用意しているようです。


アンナ自身と幻術能力者のネイサンは、ディリオス様が本物だと思っていますが、他の者たちはまだ見てないので不明です。この地下を根城として六名の能力者がいるようです」


ディリオスは闇の中の光明を探すように色々考えたが、自分を探す意味が分からなかった。

「あと、今はもうしていないようですが、ドークス帝国に天使や悪魔を売っていたようです」


「なんだと!?」


「大天使もこいつらの仕業か?」


「はい。そのようです。闇市での競売で勝ち取った大天使を更に高値でドークス帝国に売りつけたようです。記憶を隅々まで調べていますが、このアンナは多くを知らないようです。


今回のように地下にいるよりも地上にいる事のほうが多いようで、内情もそれほど知っていないようです。任務は刃黒流術衆のディリオスを探し出すことのようです」


「俺を探している理由はなんだ?」


「それがこの女は知らないようです」


「わかった。ご苦労」

アツキは彼女から離れた。


彼女は驚きが隠せなかった。

「試練に関してはどうなさいますか?」


「まあいい。試練ならすでに今まで何度もくぐり抜けてきた。お前たちに害が及ぶようなら一気に片付ける」


女は自分がいる事も無関係に言い放つ男の言葉は、噓偽りない本音だと感じた。御供の誰一人として疑う者がいなかったからだ。


「もういいぞ。案内しろ」


 彼女は試練を止めるよう、言おうと初めて思った。

今まではもしかしたら本物かもと、思うことは何度かあった。

だが、本物は想像できないほど別格だった。


ディリオスの能力はまだ見ていないが、御供の凄さだけでも驚嘆に値した。

噂以上に凄かった。彼女は案内しながらあまりの凄さに口元が緩んでいた。


「試練を止めるよう説得してきますのでここでお待ちください」


「いや、お前たちのボスとやらが愚かでなければ、お前は暗示か何かにかかったと思うはずだ。いつも通りにしていろ。俺が欲しいのはリュシアンの情報だけだ。お前たちも各自自由に行動しろ」


「わかりました。それではこのまま行きます」


彼女は最後の道を進んでいった。地面だけ綺麗に整備された部屋に案内された。彼女は檀上のほうへ上がっていった。


 ディリオスたちは部屋の中央に行き、檀上を見上げた。


「初めまして、私はアイロス・レアードと申します。ようこそおいで下さいました。一度お目にかかりたいとずっと思っていました」


「そうは見えない。会いたいと本当に思っているなら、上から言葉を発するべきではないだろう。俺を格下だと思っているなら後悔することになるぞ」彼は殺意を込めて言った。


辺りが凍りつくようにディリオスの殺気で満ちていった。

彼をよく知る三人は生きた心地がしなかった。


檀上に上がったアンナも冷や汗をかいていた。

アイロスと言う名の者が合図をした。


彼らの足元の床は鉄で出来ていたが、一瞬水のようになって再び固まった。ジュンだけは一瞬にして、物影へと移動していた。

三人は鉄で拘束された。


「ここは俺に任せて下さい」アツキが無邪気に背後から言ってきた。「最近は強さが実感するほど上がってるんですよ」


「じゃあお前に任せるよ」笑い混じりにディリオスは返答した。

「兄さんじゃまだ無理よ」


「サツキが言うなら間違いなく無理だな」笑いながら言った。

「まあ、見てて下さい」アツキはそう言うと力を体内で練っていった。「わぁ。ホントにすごいわ」


アツキは練り上げた力を開放した。彼らを縛りつけている鉄に亀裂が入った。

「くぅぅ、無理でした。すいません」


「でも悪くなかったぞ。相当強くなってるな」

「ですね。わたしも兄がここまで強くなってるとは、思ってませんでした」


アンナ以外の周囲の者たちは、三人を見て何を考えているのか、不思議そうに見ていた。拘束されているとはとても思えないほど、一切焦りを感じていない様子に奇妙な感覚を抱いた。


 檀上から一人の女が下りてきて亀裂を修復していった。

「カミーラ」アイロス・レアードが檀上から声をかけた。


女は檀上を見た。「強度も増しておけ」ボスと呼ばれる男がそう言うとカミーラはエネルギーを更に練り込んでいった。


「サツキはどうする?」

「わたしは兄と同じくらいなので無理です」


「いい判断だ。ジュン、手出し無用だ。すぐに終わる」

消えた女に対して男は独り言のように言った。


「だめだな。脆すぎる。こんなのが試練とは、見くびられたものだな」そう言うとディリオスは一瞬だけ力を開放した。

真四角の巨大な鉄の塊がボロボロと崩れていった。


「いや、これは余興です。突破されたのは初めてですが、本物かどうか試させて頂きます。ブライアン!! 出番だぞ」


皆が静まり返った。本気なのかと思うような形相で、皆がアイロスを見た。

っちまっていいのか?」ニヤつきながらその男は立ち上がった。


アツキとサツキはすぐにその場を離れた。強さは本物だと見抜いたからだった。

「少しはマシな奴がいるんだな」ディリオスは男を褒めた。


「少しだと!?」そう言うとブライアン・キッドマンは目で追えないほどの速さで間合いを詰めると黒衣の者に拳を打ち込んだ。ディリオスはカウンターで腹部を蹴りつけたら男は滑るように地面を後退していった。


「お前も能力者か?」ブライアンは聞いてきた。


「まあな、だが能力はつかわん。お前程度なら体術だけで十分だ」


「一々感に障る野郎だ。ぶっ殺してやる!」


「さっさと来い。お前みたいなクズに用はない」

カチンときた男は全力で殴ってきた。


ディリオスはそれを真正面から受けた。彼は片手で、足も微動だにせずブライアン・キッドマンの全力の拳を受け止めた。


ジュンも影から出て二人と一緒に見ていた。

驚いていないのは三人だけだった。


「お前、何者だ?」


「俺は刃黒流術衆の将ディリオスだ」


「噂には聞いてるが本物みたいだな。久々に本気が出せるぜ」

そう言うとブライアンは戦闘スタイルを変えた。


明らかにただの喧嘩屋ではない、本物の格闘家の構えを見せた。


 アイロス達はブライアン・キッドマンが圧倒されている事と、今まで本気で戦っていなかった事に対して、驚きを見せていた。


「俺は全力でいくぞ」


「ああ、全く問題ない。全力で来い。俺能力を使わずに少しだけ力を見せてやる」ブライアンは嬉しそうに高笑いした。


彼は無造作に突っ込んで来て、大きく回し蹴りを放ってきた。速くはないが力が込められている事はすぐに気づいた。


黒衣の男はその蹴りを片手で受け止めた。受け止めた時に連動してそのまま足を曲げて腕に絡みつけ、その足でディリオスの体を引き寄せながら、拳を放った。


その拳をディリオスは受け流して、距離を詰めてアッパーカットを見舞った。ブライアンは宙に舞った。ディリオスは落ちて来る者に肘を腹部に入れた後にそのまま裏拳を胸に入れた。


男は吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がってきた。その顏は先ほどまでのニヤついた顏ではなく、戦士の顏をしていた。


そして今度は拳を構えて少しずつ近くに寄り合っていき拳と拳を交差させて、力を互いに推し量った。ブライアンは額から汗が出ていたことに対し、漆黒の男は余裕の表情を見せていた。


ある程度まで拳を押し倒してから、ディリオスは手をクルクルと回転させて男の拳を大きく横に流した後に掌底を胸に放った。そして後退りする男は持ちなおしてすぐに拳を放ったが、受け流され裏拳を顏の側面から叩き込まれた。


ブライアンは一歩も動かずに、彼の裏拳を受けたまま言った。


「あんたの本気を見せてくれよ。俺が勝てねぇのはもう分かった。ここにいたのは他に行くところが無かったからだ。あんたが俺が認めるほどなら、俺はあんたについて行ってあんたの為に戦うぜ」


「わかった。本気を見せてやる。見せるだけでいいのか? それとも殴って欲しいのか?」


「本気で戦ってほしい。俺は身体精神エネルギーが異常な程高い能力者だ。常にエネルギー供給しているから、今の裏拳も耐える事が出来た。常人なら今ので即死してたはずだ。俺も全力で殺しにいくから、あんたも全力で戦ってくれ」男は戦士の目で訴えた。


「わかった。死なない程度に本気で沈めてやる」彼は黒衣を脱ぐとアツキに投げた。あまりの重さに床に沈んだ。そして黒刀をサツキに投げ渡して愛用のナイフ五本は壁に投げて突き刺した。


それを見たブライアンは再び大笑いした。涙が出るほど高らかに笑った。そして笑い終わると今まで誰にも見せた事のない顏をしていた。真剣な表情を見せていた。


ディリオスは一息入れて静かに呼吸をしだした。

まるで高波が来るように、彼の力は壁や地面を震わせていき、明らかに力が高まっていくのを感じていた。三人も初めて見るディリオスの本気への興味は尽きなかったため目が離せないでいた。


ディリオスはそこから更に体中に力を入れていった。

「はあああぁぁぁぁぁああああああ!!」

振動が止まった。


「死ぬなよ」一言だけ発して彼は消えた。ブライアンの腹部に一撃見舞うと彼は天上に叩きつけられた。そして落ちてくる者に再び下から蹴り上げるとそのまま後頭部を殴りつけその腕の肘を再び後頭部に沈めた。絶え間なく攻撃を入れ続けていた。


明らかに鍛錬している事が分かるような、連続攻撃の攻撃が止むこと無く、見事に繋げられていた。


落ちそうになっている体に数十発拳打を速度を上げながら入れていくと、両足首を持ってそのまま地面に叩きつけた。その両足首を持ったまま無理矢理引っ張り上げて立たせて、彼の周囲を高速で回転しながら拳打を入れていった。


倒れそうになると、倒れさせないように周囲から数十発の拳打を入れていって足蹴りを顎に入れて、宙に舞った落ちてくるまでに浅く一息いれて地面に落ちると同時に顔面に拳をぶち込んだ。


ブライアンはピクリとも動かなくなった。一応脈を確認したが生きていた。三人の元に戻り、黒衣と刀やナイフを受け取った。


「ちなみに今くらいの全力なら一時間以上は戦える」

呆れるほどの強さに三人は笑えたが、他の者たちは静まり返っていた。


「おい、立てるか?」

「……大丈夫だ。これからはあんたが大将だ。冗談だとばかり思ってたが、あんた本気で天魔と戦うつもりなんだな」


「そうだ。負けるつもりもない」

「俺はあんたの命令なら何でも聞く」


「安心しろ。そう思ってるのはお前だけじゃない。それにそれは俺の望みではない。役に立ちたいなら強くなれ」


「俺はあんたの部下たちの中でどのくらい強い?」

「百位以内には入れるかもな」


「ふふふっ……くっ」仰向けで血を吐きながら笑っていた。


「世界は広いなー」と仰向けのまま彼は、本音を口にした。ディリオスは黒衣を羽織ると横たわっているブライアンの所まで行って手を出した。


彼は彼の手を握って立ち上がった。


「さてと、お前に聞きたいことがある」彼は上を見上げた。

「ヴァンベルグのリュシアンのことだ。この街に来たはずだ、正直に言わないなら能力を使うだけだ」


この場を制したディリオスに歯向かおうとする者は皆無だった。「ブライアン、連れてこい」

「あいよっと」彼は椅子に座っていた者を椅子ごと蹴って下ろした。


「アツキ。徹底的に調べろ」

「はい。お任せください」アツキは額に手を当てて調べ出した。


「リュシアン王子はここに来ていました。そしてそいつの血を飲ませました」


「ブライアン、どうゆうことだ?」


「そいつの能力は自分の血を一滴でも飲ませれば、操り人形のように出来るのが能力だ。その力を使って天使や悪魔をドークス帝国に売りつけていた」


「リュシアン王子は部下三人とここに来たようです」


「よく分からんなリュシアンが来たのなら何故俺を探していたんだ? 逆に隠そうとするはずなのに何故だ?」


この地の主アイロス・レアードは黙っていた。


「おい。大将が聞いてんだ。話さねぇとどうなるかわかるよな? アイロス」ブライアンは脅しつけた。


「……ヴァンベルグだ。あんたが倒した悪魔は敵じゃなかった。イシドル・ギヴェロンが自ら呼び寄せた者だったのに、あんたが殺したから話がややこしくなった」


「あの悪魔は要するにイシドル・ギヴェロンの守護者だったわけか?」


「そうじゃない。イシドル・ギヴェロンは高位の悪魔になりたかったんだ。その為にリュシアン王子やナターシャ王女も配下全てを捧げるつもりだったのに、あんたがナターシャを逃がして、その悪魔を殺したから条件が上がったんだ。


リュシアンを餌にしてお前を呼び寄せるのが目的だったが、リュシアンは俺たちの予想よりも強かった。

生きたまま捕まえるはずだったのに逆にこっちがやられた上に逃げられた。


だからあんたを先に捕まえて、時間稼ぎしようとしただけだ。

来る奴来る奴、皆が飯目的の偽物ばかりで、俺の部下も数人くれてやったが、神の遺伝子が弱いとか訳のわからねぇ事ばかり言われて、正直焦ってた所にあんたが来たわけさ」


ディリオスはアンナを見た。彼女は首を横に振っていた。

「リュシアンが来た時は正直驚いたぜ。俺たちが敵であり、捕まえようとしている相手だったとは微塵にも思ってなかった」


「リュシアンがここへ来たのはいつ頃だ?」

「もう二カ月近く前だ」


「二カ月だと!? 俺が悪魔を倒してすぐ後じゃないか?!」


「ディリオスがイストリア城塞に戻った日か次の日くらいに一体何があったんだ?」


「俺は何もしらねぇよ。何も……そう言えばリュシアンが言ってた。なんでもハウンド特殊部隊の事を調べたら、とんでもない事があったとかなんとか……南にも西にも逃げ場がないから隠れる場所が欲しいとか言ってたから、上手く騙して全員地下牢に隠してる。最後の切り札だったのに……俺はこれで終わりだ……」


アツキに目を向けた。「こいつの配下たちは知っていたのか?」

彼は首を横に振った。「おそらく記憶が改ざんされています。僅かに残っている記憶は我々のようなフードを被った者の記憶だけですので、配下たちが知っていたかどうかは不明です」


「おそらくそいつは高位悪魔の下っ端だ。俺がヴァンベルグで倒した悪魔も黒いフードを被っていた。奴らは塔から出てくる悪魔とは別で高位魔神直属の悪魔のようだ」


「地下牢にいるんだな。どうやらそのリュシアンってお人が貢ぎ物だったなら寝食はしっかり取らせてたはずだ」


「ああ。行こう」


「ただ面倒なのが、こいつの能力はこいつじゃ解呪できねぇ。術者であるこいつと距離が離れれば自動で解呪されるが、かなり離れないと自動解呪はできねぇぜ」


「解呪の当てはある。そこまで行けばとりあえず安全だ」

「ここから近いのかい?」


「ああ。だが四人とも朦朧もうろうとしてるだろう。少し時間はかかるが荷馬車に積んで連れて行こう」


 地下牢に向かおうとした時、アンナ・ランバートと男が話しかけてきた。


「私はトレヴァー・オルコックと言います。鉄に沈めたのは私の能力です。何も知らずにアイロスを信じ切っていました。私の命もお預けしたいのですが、一緒に行ってもいいですか?」


「わたしも力になれると思うので連れってほしいです」

ディリオスはブライアンを見た。


「悪い奴らじゃないことは俺が保障する。こいつらが裏切るような真似をしたら俺が殺すから頼みを聞いてやってくれ」


漆黒の男は頷いた。

「アンナ、地下牢まで案内してくれ」

「はい! こっちです」


「お前たちに先に言っておくが、ブライアンが百位以内と言ったのは上段じゃないからな。皆、毎日欠かす事無く鍛錬している。


ブライアンは実戦派のようだからまだいいが、アンナとトレヴァーはしばらくは自分たちがどれほど無力かを知ることになるが、頑張れよ」


 他にも数名いたが、ひとまずはリュシアンの様子を見ることを優先して、彼らは最下層の地下牢に進んだ。暗い地下牢に続く階段には松明が各所に掛けられていた。アンナは火を灯しながら更に地下へと進んでいった。


地下牢にはまだ火は灯していなかったが、広々としていて複数名入れられていた。彼女はその地下牢を通り過ぎて、更に奥にある狭い牢屋の前まで行くと火を灯した。


もしもの事が無い為に、他の囚われている者とは別にしたのだろうと察した。

ディリオスは声を暗闇に向かって声をかけた。

「リュシアン! 俺だ、ディリオスだ」


彼からの返事は無かったが、一人の男が返事を返してきた。

「刃黒流術衆のディリオス様ですか?」


「そうだ。助けにきた。ここはもう我々が制圧したから安心してくれ。お前はリュシアンの部下か?」


「はい。側近のレオニード・ラヴローです。ナターシャ王女をお預けした時にも、王子の近くにいた者です。ハウンド特殊部隊では副長をしておりました」


「お前は洗脳されてないようだが、何故だ?」


「私の能力のおかげです。特殊能力である解呪の能力者でしたので、暗示にかかったフリをしていました」


「そうだったのか。色々聞かねばならない事が多そうだ。とりあえずこの地下牢から皆を出してから話を聞こう」


「ありがとうございます。貴方さまだけが頼りに、今日まで生きてきました」

「アンナ、扉を開けてくれ」


彼女は頷いて牢屋に触れた。牢屋は砂になって崩れた。

「隣の牢屋に入っているのは誰なんだ?」アンナを見ながら聞いた。


「わたしはディリオス様を入口で探せと命令されていただけなので、殆どは外に出ていたのでわかりません」


「旦那。ここに入っているのは旦那の名を語った奴らですぜ。後回しにしても問題ねぇ」


「そうか。わかった」

ディリオスは松明をアンナから受け取ると牢屋の中に入っていった。

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