第三話 僕は属性が少ない
優しい俺は、銀杏にそれは作りものだと教えてあげる。
銀杏はその事実を聞くと、ガクガクと膝を震わせ地面へと項垂れた。
「そ、そんな…あれが…フィクションだったと言うのか…」
「なんでエッセイ本だと思ったんだよ。どう考えてもただのエロ漫画だろうが」
「あ、あまりにも出来が良かったので……」
だからって本当の事だと思うなよ……。
ちなみに、後ろでは未だに田中が「わからせ…」と呟き首を傾げている。
どうやらそこまでエロ本に詳しくないようだ。
そんな時、
「話は全部聞かせてもらったよ。さっきから可愛いとか可愛いとか…なにオレ抜きで可愛いについて話しているんだい?」
項垂れる銀杏の向こうから、むさ苦しい教室とは正反対の可愛らしい声が聞こえてきた。
「やあ、オレの名前は
李桃と名乗った男?は、内側を赤く染めた長い黒髪をバサッと手で払うと、こちらに向かってウィンクを飛ばしてくる。
整った容姿と低身長に細身の体。
一見すれば可愛らしい女の子だが、何となく漂ってくるオーラで分かった。
奴は俺らと対して変わらない…と。
「はぁ…、貴様は失格だ。帰れ」
いつの間にか立ち直っていた銀杏が忖度せずそんな言葉を李に放つ。
すると李は少しだけ眉を顰めたものの、決して笑顔は崩さず、落ち着いたトーンで反論してきた。
「えーなんでー、オレ可愛いじゃん、綺麗じゃん。バエるじゃん。写真売れば儲かる事間違いないでしょ」
「理由は単純。媚びすぎた商品というのは、売れるには売れるが長続きはしない。簡単に言うとお前は臭過ぎるのだ!」
「オレが?臭い?ナンデ?360度どこを見ても可愛さしかないでしょうが。銀杏は見る目ないなー」
李は手を横にやり、やれやれと言いたげな顔で首を横に振る。
しかし銀杏は臆することなく李に意見を続けた。
「ああ臭過ぎるとも。貴様は真の可愛さと言うものを理解していない。よって商品化する価値は貴様にない」
「屋上へ行こう………ひさしぶりに………。キレちまったよ………」
「良いだろう、相手になってやる。だが負けたからって先生にはチクるなよ。内申書が怖いからな!」
ついに李の堪忍袋の緒が切れ、両者睨みを効かせたまま見つめ合う。まさに一触即発だ。
…くそっ、こんな面白いことが始まるんだったら、近くのコンビニでポップコーンとペ〇シを買っておくべきだった。
今から行って間に合うかな……。
そんなことを悔いていると、後ろからもう一つの可愛らしい声が聞こえてきた。
「わかった、わかったのだ!わからせとは、きっと勉強を教えることなのだろう。どうだ、合っているか?」
後ろでずっとわからせについて考えていた田中が、無邪気にもそんな事を言ってくる。
すると、メンチの切り合いをしていた銀杏がそんな田中を指差しこう叫んだ。
「見ろ!これが真の可愛さだ。素人目から見ても商品価値があるのが分かるだろう!」
「………がふぅ」
李が見えない血反吐を吐く。
そして彼はそのままよろよろと近くの椅子に座ると、燃え尽きたように真っ白になった。
「オレの完敗だよ…。こんな可愛いさに勝てるはずがない…」
「いや、そんな事はない。適材適所という言葉は、商売において重要な意味を持つ。貴様にも立派な適所があるはずだ」
「い、銀杏……君は良い奴だな」
「ああ、貴様はいつか金になりそうだからな」
銀杏は爽やかな笑顔でそう話す。
何となく気付いていたが、銀杏はクズだな。
あと李桃、奴は見た目こそ女性だが中身は純度100%の男子高校生で間違いない。
俺が何となく二人のことを理解し始めていると、田中が不思議そうに訊ねてきた。
「……?なんの話をしていたのだ?」
「田中…いや、闇野。お前は良いんだ。お前はそのまま純粋でいてくれ。ほら、そろそろホームルームが始まるんじゃないか?席に着いておこう」
「そうだな!それにしてもお前は良い奴なのだ。吾輩を助けてくれたし、礼として吾輩の臣下にしてやろう!」
「ワーイヤッタア」
俺は空虚な笑顔を浮かべ、初めて高校で友人が出来た事を喜んだ。
拝啓お父さんお母さん。
高校で初めてお友達ができました。
童顔白髪厨二ショタ一人称吾輩の友人です。
とても属性が盛られています。
他にも友人になりそうなやつがいます。
黒髪ショート高身長金持ちクズ野郎と内側が赤色の黒髪ロング美人ナルシスト男子高校生です。
こいつらもなかなか属性が盛られています。
………お父さんお母さん。
僕も……僕も実は宇宙人だったぐらいの属性を持った方が良いのでしょうか?
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