第四話 とある教室(くらす)の性癖紹介(じこしょうかい)
(個性…キャラ…属性…。いっそのこと自分はゲイだったことにするか?いや、今は多様性を重んじる社会…ゲイはもはや一般的思想だ。くそっ、こんな事になるのなら、もっと学園もののラノベを勉強しておけば良かった)
俺は机に突っ伏し自分の勉学への怠慢を悔いる。
すると教室の扉が音を立てながら開き、外から一人のおっさんが気怠そうに入ってきた。
よれよれのスーツに剃り残しの多い青髭とぼさぼさの髪の毛。
見るからに十代ではない所を見ると、きっと彼がこのクラスの担任なのだろう。
「あー男子諸君。朝のホームルームを始めるから皆席に着きなさい」
「「「「…うぃーす」」」」
担任と思しきおっさんの号令により、周りで騒いでいた男共が席へと着く。
全員が席に着いた事を確認すると、担任の男は黒板に自分の名前を書き始めた。
「えー私がこのクラスの担任になる
青先生と名乗った男性は頭をぼりぼりとかきそう話す。
先生なのに何だかだらしのない人だ。
「…まあ私の話はこれだけにしといて、皆の自己紹介でも始めましょう。とりあえず…名前と趣味、あと性癖なんかを教えてください。それではまずは出席番号一番の———」
自己紹介の時間!
そうだ、ここで強烈な自己紹介をかませば一気にキャラが濃くなるはずだ。
そうと決まればさっそく濃い自己紹介の内容を考えて——ん?
今俺たちの担任、おかしな事を言わなかったか?
「出席番号1番!
体格の良い出席番号一番が高らかにそう自己紹介をする。
彼は自慢の筋肉をこちらに見せつけ、「おっぱいは世界を救う」と叫び席に着いた。
…待て待て待て待て待て!
性癖?おっぱい?それは自己紹介の場で話すことではないだろう!
というか待て、一番目からこんな濃い自己紹介なのか?一体どれだけ盛れば他と違う濃い自己紹介になるんだ!
だが、そんな心の叫びが皆に届くはずがなく、自己紹介はどんどんと続けられていった。
「出席番号4番、
○ルヴァリン君そんな名前だったのか。てっきり本名はヒ○ー・○ャック○ンかと思っていたよ。
「出席番号9番。
エロ本研究ってなんだよ。
「出席番号11番、李桃でーす。趣味はコスプレ。性癖はコスプレイヤーのウィッグからたまに見える地毛でーす」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
可愛らしい李の登場で、一瞬にしてクラス中が盛り上がる。
確かに見てくれは可愛らしいが、そいつ外見以外お前らと大して変わらんぞ。
「じゃあ次は出席番号16番の人。お願いしますね」
他人の自己紹介にツッコミをいれていると、いつ間にか自分の番が来てしまった。
仕方ない。こうなったらアドリブで…。
「ど、どうも、出席番号16番の多々良花道です。趣味は料理。性癖は———」
ここだ!ここしかない。
ここで俺の個性を濃くするんだ!
俺は知り得る性癖の中でもっとも個性の出るであろうものを思い出し、それを高らかに叫んだ。
「性癖は、○○○○○○○○○○です!」
「「「「……………」」」」
あんなにうるさかった教室が、一気に静まり返る。
聞こえる音といえば、自分の高鳴る鼓動の音と「○○○?」と疑問そうに小さく呟く田中の声だけだ。
「多々良君ありがとうございます。それでは次の方、よろしくお願いします」
先生が淡々と自己紹介の進行を進める。
俺は静かに椅子に座ると、大声で泣きそうになる自分を必死に抑えた。
「吾輩の番だな。よーし、皆の者聞けい!吾輩は出席番号17番。闇を統べる皇帝、闇野ダークネスであ———」
自己紹介はその後滞りなく進んだ。
ホームルームが終わると俺たちは体育館に向かい、そこで入学式が行われた。
その後は校則や授業などの説明を聞き、学校自体は午前中で終了した。
後日。
俺はクラスのみんなから変態紳士の称号を授与された。あんなに欲しかった属性を、俺は手に入れることができたのだ。
やったぁ!やったぁ…ヤッタァ………。
あの、すみません。
属性って埋め立てゴミの日に出せば大丈夫でしょうか?
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