第5話 笑顔の幼女

「では改めて、わたくしは魔王軍最高幹部、レビナス・アウグストと申します。魔王様に会えて光栄です」

「わたしはクロユリ」


金髪に紅眼のレビナスは幼女のわたしにひれ伏した。

その他の魔族もわたしに深々と頭を下げた。


わたしとカトレアはレビナス一行に案内された洞窟の中に避難していた。


「でも、なぜわたしが魔王だとわかるのかしら?どうみてもニンゲンの幼女じゃない」

「先代の魔王様の予言でございます。漆黒のニンゲンが死神の大鎌を奮うと」


全身真っ黒なわたしは確かにそうかもしれない。

さっきの戦闘で黒髪のニンゲンはいなかった。

もしかしたら黒髪は迫害か絶滅かなにかあったのかもしれない。


「クロユリ様、お聞きしたいのですが」

「なに?」

「そちらの半魔とはどのような関係でしょうか?」

「半魔?」

「私の事よ」

「どういう事?カトレア」


カトレアは自分がニンゲンと魔族の間に生まれた半魔だと語った。


半魔はニンゲンよりも長命であり、歳をとるスピードも遅い。

また、人間達からは化け物扱いされ、魔族達からは半端者であり、穢れていると下げずまれる。


カトレアの姿がこの5年変わらなかったのは、半魔であるかららしい。


嫌われ者である半魔の自分をわたしに打ち明けたくなかった為にあの時誤魔化したのだろう。


「レビナス」

「はっ」

「カトレアはわたしの育ての母。侮辱は今後許さない」

「承知致しました」


カトレアもわたしと同じく忌み嫌われている者だと知って、より情が湧いた。

世界を滅ぼすという目的も、なんとなくわかる。


「さて、この女についてだけど」


わたしたちを襲ってきたニンゲンの女騎士

敵の中でもかなりの手練だった。

素人のわたしでは全く歯が立たなかった。


それでも死ななかったのはわたしがおそらく不死身であり、魔王たらしめる魔力の賜物だろう。


手練の女騎士は私を睨みつけながら呻いている。


「カトレア、知りたい情報をリストアップして欲しい。レビナス、今後の予定をその間に聞きたい」

「かしこまりました」


前世で虐められていたわたしは脳内でよく復讐をしていた。

そうして我慢していた。


どうやって殺そうか。

どうやったら苦しむか。


そればかりを考える日も多かった。


わたしはもう取り返しがつかない程に歪んでいる。

さっき、わたしはヒトを殺した。

なんにも思わなかった自分が怖くなったのは一瞬だけだった。

壊れてる。壊された。


ああ、前世の世界に戻れたとしたら、あのクラスのみんなを一人一人殺したい。先生もみんな。


目には目を。痛みには痛みを。苦しみには苦しみを。


「クロユリ様、今後の予定ですが、南西の果ての我らが城、魔王城へ向かいます」

「そう」

「魔王城へ行けばクロユリ様の身体的成長はおそらく飛躍的に伸びますし、魔力量も桁違いに上がります」


幼女を卒業できるのはありがたい。

まだ産まれて5年だけど、魔王だからかな?

この世界の概念とかはまだ全くわからない。


「魔王であるクロユリ様には早急に力をつけて頂かなければいけませんので」

「勇者でも現れるの?」

「はい。ニンゲンたちは勇者召喚の儀式を行っているそうですので」

「勇者、ね」


穢らしい。

勇ましい者。

わたしの知ってる世界にそんな人はいなかった。


「わかったわ」


状況によっては勇者召喚前にニンゲンたちを殺す方が早いかもしれない。

……異世界で魔王なんてするなら、爆弾の作り方とか効率のいい惨殺方法とか勉強しておけばよかったわ。


「では貴女の拷問を始めるわ」


わたしが女騎士の方を向くと女騎士は身体を震わせた。


まるで化け物を見たかのような態度に傷付いた。

酷いよね。こんなに幼い姿なのにね。


「カトレア、折れている手足を治してあげて」

「わかったわ」


手足を縛ってあるが、骨が折れてるから拷問しづらい。


「とりあえず、貴女のお名前を教えてくれるかしら?」

「世界を滅ぼす魔王に名乗るななどッ!……」

「お願いしている間に話してくれた方が楽だと思うわよ」


わたしはカトレアの小袋から取り出したペンチで足の爪を1枚剥がした。

前世のペンチより使いづらいから、肉もちょっと削り取ってしまった。


「声を上げないのはありがたいわ。うるさいと困るもの」


こんなところではどれだけ叫んだって来るのはせいぜい魔物くらい。


「じゃあまず、貴女が生きている間にされるかもしれない拷問を紹介していくわ。パッと思いつく限りで話すけど、どんどん増えるから気を付けてね?」


笑顔でお話してるのに、女騎士はブサイクになるほど顔を歪ませた。

せっかく美人なのにね。


「まずは貴女の爪を1枚ずつ剥がす。それから手足の指も折る。関節ごとに折れたらもっと細かく折れるかもしれないから、頑張って折るわね。それでも吐かないなら弱火でじっくり炙る。少しずつ自分の肉が焦げていく匂いを嗅いでもらいたいのよね。炙りながら皮膚の皮を剥いでいく。せっかく綺麗なお肌だけど、仕方ないわよね。お胸を削いでみるのもいいわね。どんな断面図になるのかしら。あ、ちゃんと傷口は治癒するから安心してね。ぺったんこになっちゃうけど、出血死するよりはいいもの。貴女のお胸大きいし、自分で食べてみるのもいいかもしれないわね。感想を聞かせてね?そう言えばニンゲンの指って美味しいって聞いたわ。知ってる?細かい事をできる繊細な筋肉の発達してる指は美味しいらしいの。その頃には指の骨が折れてパンパンに腫れ上がってしまっているけど、ちゃんと治癒してしてからにするわ。血が溜まってると味が落ちるかもしれないもの。綺麗な指をしてるから、盛り付けもしてあげるわ。指が無くて掴めなくても大丈夫よ。わたしが食べさせてあげる。子守りとか看病とかは得意なの。安心してね。餌を食べ終わっても吐かなかったならそうね、同じ女としてしたくはないけど、女としての尊厳を削いでいくのがいいかしらね。足の腱を切れば歩けないし立てなくなるから、ゴブリンとかオークを探して死なない程度に気持ちよくなってもらうわ。お口と前と後ろ、手が2本もあるし、何匹同時に相手できるか楽しみだわ。女騎士だから体力とかありそうだもの。辛そうだったら回復魔法かけてあげるわ。もしも死んじゃったら、ちゃんと家族の元に送り届けてあげるから死にたいなら安心して死んでね。淫らな姿を晒すことにはなってしまうけどごめんなさいね。それからそれから」





女騎士はキルリアという貴族出身の騎士らしい。

爪を1枚剥いだだけで泣きながら話してくれた。


魔王復活の前兆を察知して調査に来たこと。

勇者召喚についてはあまり知らなかった。

国の現状とかあとはそのくらいだった。


質問に答えた後は放心状態になってしまったので、仕方がないから殺した。

拷問出来なかったのは残念な気がしたけど、素直に話してくれたからそこは許すことにした。


「雨が上がったら出発しましょ」


江戸時代の拷問とか外国の身体が伸びる拷問とか他にも色々あったけど、仕方がない。


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