板チョコ

ツヤツヤと美しく光る健康的な褐色の肌。

バッキバキに割れたマリアナ海溝よりも深い溝。

浮き出る角は鋭く固い印象があるが、じっくりと、舐め回すように見てみれば(実際に舌を這わすのもありだ)意外や意外、全てが柔らかく女性的な曲線で構成されているのである。


ああ! 神が作りたもうた人体の神秘に似た調和のとれた美しさ。


そう、板チョコである。


読者諸君は甘いものが好きだろうか?

私は好きである。いや、愛している。

どのくらい愛しているかといえば、五家宝で作った実印を、メイプルシロップとバターをたっぷりと吸ったパンケーキにこれでもか! と押し付け、婚姻届にノータイムで判を押すほどだ。もちろん、チョコペンで記入した。お相手の欄には誰を、いや何と書こうか……。


そんなシュガーハッピーな脳で馬鹿げた妄想を夜な夜な繰り広げるくらいには甘党の私だが、特にチョコレートが好きだ。そして、中でも板チョコが好きなのだ。

洒落た小さい箱に詰められた宝石のように美しく可愛らしい、馬鹿みてえに高いチョコレートももちろん好きだし、チョコチップの入ったカントリーなクッキーも好きだし、子供の頃の好きなお菓子ぶっちぎり第一位だったあのチョコレートパイも、いまだに大戦争を繰り広げているあいつらも(私はどちらも好きです)、チョコレートと名のつく菓子は全て好きなのだ。好きなのだが、結局のところ、板チョコに落ち着くのである。


板チョコとは、全てのチョコレート菓子の始まりである。素材とも言うべきそれはしかし、それだけでも存在することを許されているのである。こんな存在が他にあるだろうか? 何も足さず、何も引かず、華美な装飾もなく、ただ。だからこそ何者にも成れる。


まさに色即是空である。


そんな、お菓子界のお釈迦様に今日もかぶりつく、食欲という煩悩にまみれた私が涅槃に至る日はまだまだ遠いようである。

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夜中にバターをかじる私は 肉級 @nikukyunoaida

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