29 爆会祭(3)

「さぁー! 始まりました爆会祭! 司会はみんなのアイドル、ミレーちゃんが務めます! さっそくですが出場チームを紹介していきましょう!」


 ミレーはルールーが連れてきた人々の中にいた、元楽団員です。歌と踊りが得意なようですが、人前に出るのがかなり好きみたいで、今回の祭はミレーが司会を務めます。


 ノアの村中がミレーに注目しています。みんな話を聞いて偉いですね。


「出場チームは全部で6つです! それでは最初のチームを紹介しましょう! 泣く子も黙る、悪魔公アーさん率いる悪魔チーム!」


 悪魔たちを中心に歓声が上がります。アーさんはかなり本気なようで、悪魔たちの中でも強い面子を集めたようですね。


 ふふふ、アーさんといえども私の作った馬鹿王子の像はそう簡単には壊せませんよ?


「ふたつめのチームは……元気いっぱい! ですがその実力は大人顔負け?! 子供たちチーム!」


 ふたつめのチームは子供たちですね。選抜メンバーだと聞きました。バレンタインは混ざっていないようですが……別のチームで出るんですかね?


「みっつめのチームは、魔槍姫バレンタインと、魔狼フェン、そしてビービートルのカブさんで構成されたチーム魔魔虫です!」


 カブさん?! まさか参加するとは……しかもフェンも参加してますし、いつ練習したんでしょう?


「よっつめは、文官リーダーの2人が率いる、シルフィ、ルールーによる文官チームです! このチームからは何やら意気込みが届いているようですね……なになに」


 ミレーが懐から紙を取り出しました。


「祭の準備で溜まりに溜まったストレスを魔法に載せます。狙いは像の顔面! だそうです! 気合十分ですね」


 文官達は大変そうでしたからねー。にしても、馬鹿王子の像の顔面を狙うなんて、すばらしいですね。ぜひ全チームにやって欲しいですが……。


「いつつ目行きましょう! 金髪率いるブッチャー団チームです! えー、こちらはマーガレット様あてに手紙があるようです。見てろマーガレット! だそうです。おー、かなり調子に乗ってますね」


 すごいブーイングが会場に響き渡ってます。ミレーも冷たい声になってます。


 別にそれくらいのメッセージなら構わないんですけど……みんなそこまで気にしなくても大丈夫ですよ? 金髪は気に食わないですが、しょぼんとしてたら可哀想です。


 ……いや、前言撤回しましょう。金髪はこの逆境にとても燃えてるみたいです。まぁ頑張ってもらいましょう。


 にしても、聞いてたチームは5つだったような? 6チームもいましたっけ?


「ラストチームは……まさかのゲストが緊急参戦です! チーム魔王です!」


 ええええええ、何やってるんですかあの人?! 魔王が気軽に祭りに参加しているところもそうですが、私と一体一ですら喋れないような人見知りですよね? こんな人前に出たら……。


「うむ、私は魔王だ! 魔王らしく、一撃の元に粉砕して見せよう!」


 あれ? 普通に喋ってます。むしろ堂々としてますね。


 あ、ラムさん。はいはい、魔王さんは多くの人の前に出ると魔王としてのスイッチがはいると。


 演説とかしなきゃいけないですもんね、いつも人見知りだと立ち行かないでしょう。


「6チーム揃いましたね! では、さっそくいきましょう! 悪魔チームの挑戦です!」


 さっそくですね。始まる前にみんなお酒やご飯を用意しているので準備万端です。


 私も、少しですがお酒を持ってきました。美味しいです。フェンをもふもふしたいところですが、爆会に参加してますから邪魔はできません。あとの楽しみにしましょう。


「行くぞ! 悪魔の力を見せてやれ!」

「「「ウッス!」」」


 悪魔チームは……アーさんの魔法に悪魔たちが効果を付与していくタイプですね。


 これはアーさんの魔法の実力が重要です。私の像を崩せますか?


「ゆくぞ……#禍炎獄災__カオスヘルファイア__#!」


 魔法の見た目や威力よりも先に、名前のインパクトが凄まじいです。みんなそっちに意識が持ってかれてるのでは?


 とはいえ放たれた魔法は像にあたって爆炎をあげます。ですが、煙から出てきたのは無傷の馬鹿王子の像です。


「なん……だと……?!」


 アーさんの魔法はかなり強力なものでしたが、まだまだ甘いですね。


 本気で作りましたから、ふふふ。


「ぐぬぬ……マーガレット、次は壊してみせるぞ!」

「悪魔チーム、敗退です! 思った以上の防御力ですが、はたして壊せるチームはいるのでしょうか?! 次は子供たちチームです。準備をお願いします!」


 あっさり進んではいますが、爆会とはこういうものの様なので問題ないです。


 みんなも楽しんでくれてますしね。


「あの……マーガレットさん。聞きたいことがあるんですが」

「マトン君。どうしました?」


 いつのまにかラムさんの後ろにいました。


「さっきの魔法、山がひとつ吹き飛ぶレベルの破壊力だったんですけど、どうしてみんな平然としてるんですか? というか、なんであの像は無傷なんですか?!」


 おお、すごい捲し立ててますね。


 なんでと言われると困りますが……魔法の練習はよくやっているからでしょうか? あれほどの魔法は見ませんが、よく爆発はしてますからねー。


「あの像が無傷なのは私が本気で作ったからです」

「本気って……本気でやったからと言ってあそこまでの硬度を誇る物を作れるんですか?」

「魔法ですもん。つくれますよ?」


 魔法はイメージですから。基本何だって出来るはずです。常識から外れるほど魔力の消費が凄まじく増えていきますが。


「細かいことは気にしないものだぞマトン。ですよね、マーガレットさん?」

「ラムさんの言う通りです。楽しみましょう!」


 祭はまだまだ続きますよ!

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