24 雪合戦(2)

「うわぁ、隊長! 子供達の攻撃ヤバいっす!」

「そうッスよ! あんなもん食らったら俺ら死んじまいやすぜ!?」

「うるさい! 悪魔がその程度で狼狽えるな! 子供達の攻撃は苛烈だが、持久力はない。気合で維持しろ!」


 アーさんの檄が飛びます。これはもう戦争なのではないだろうかというレベルの本気度合いです。


 子供達は一日中バレンタインと訓練してることもありますから、かなり洗練された部隊行動をとっています。


 バレンタインの築いてきた信頼は分厚いようで、子供達は一瞬たりとも疑うことなくバレンタインの指示に従っています。


 舞台の編成も、悪魔、人間、エルフの得意な能力を上手く組み合わせていますね。


「大丈夫ですか? アーさん」

「問題ない。泣き言を言ってはいるが、上級悪魔の集まりだぞ。そう簡単には負けん」

「けど、身体強化の精度は圧倒的に子供達が上ですよ?」

「そうなのだ……雪玉が洒落にならない威力になってる」


 ズドンって音がしてますからね。というか、魔法でつくった櫓ですが、魔法を使ったのは作る部分に対してで、雪そのものを強くした訳では無いので子供達の雪玉で少しづつ崩れてます。


「……そんなに時間が無いようだな。よし、我がいこう」

「フェンもついて行ってあげてください。アーさんとフェンなら落とせるはずです」


 フェンとアーさんがはりきって敵陣に殴り込みをしかけに行きました。悪魔の中でも実力者達がそれに続きます。


 あと少しなら耐えられますし、私がなにかする前に勝負が着くでしょう。


 ……あれ? 子供達の陣地、なんか大人がいません? あれって……金髪? まさか、ブッチャー団ですか?


「俺たちは子供達につくぜ! おらぁ、やっちまえ」

「「「おおおおお!」」」


 あの金髪……やってくれますね。ただ突っ込んできてるだけですが、時間を稼がねばここが落ちます。


 風魔法で浮きながら、子供達を見下ろします。凄い勢いの雪玉が飛んできますが、全部魔法の防壁で止めてるので私には当たりません。


 ていうかあの勢いの雪玉が私に当たったら怪我をします。私、あんまり身体強化するの得意じゃないんです。主に出力が高すぎるせいで。


「子供達、ブッチャー団、覚悟はいいですか?」


 返答とばかりに大量の雪玉が飛んできます。いいでしょう、見せてあげます。


 これが、大人の本気です。


「どーん!」

「「「うわぁぁぁぁ?!」」」

「ぎゃぁぁぁあ」


 魔法で大量の雪を持ち上げ、それを全部雪玉にして無差別全包囲攻撃です。金髪だけはちゃんと狙いますけど。


 子供達は……慌ててはいましたが、ちゃんと遮蔽物に隠れるか撃ち落とすかしてますね。……どういう対処能力なんでしょう。


「マーガレット様は狙っても無駄だ! 櫓を落とすぞ!」

「させませんよ」


 子供達は狙いを私から櫓に変えますが、雪玉を投げる暇など与えません。投げた雪玉をすぐさま回収して一瞬の隙もなく全包囲に雪玉を投げ続けます。


 はやくしてください、アーさん、フェン。このままだと……ん? 子供達の陣地から真っ直ぐ何かが……。


「うわっ?! 魔槍はルール違反でしょうバレンタイン!」

「雪で作ってるからセーフだマーガレット!」


 雪?! ほんとだ、魔槍ではなく、魔力でかためた雪です。雪玉かどうかは怪しいですが、ルール違反ではないですね。


 というか、いまの間に子供達の何人かが弾幕を抜けました。


 まずいです。割と本気で。


 大人気なさすぎる手段ならいくらでも子供達を止める方法はありますが、一応これは遊びです。そんな手段は選べません。


 困っていると、子供達の陣地から悲鳴が上がります。そっちを見ると、そこには勝鬨をあげるヤニムと、ボロボロのフェン、アーさんがいました。


「大人の勝利だァァァァァ!」


 ヤニム、まだ生きてたんですか。

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