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「何かしましょうといっても、何します?」


 おやつでも食べますか? いや、それだといつも通りの私の生活ですね。そういえば、最近私は何も仕事をしていないです。何か仕事になるような事でもしましょうか。


 のんびりと、みんなと仲良く暮らしてはいますが、何もしていないのにだらだらし続けるのは少し不安です。みんなに追い出されては困ります。


「悪魔さん達は何か困ってることかありませんか?」

「困ってることですか?姉御。そうですね……あ、馬が欲しいってエルフの皆さんが言ってやしたぜ!」


 馬ですか。なぜ馬なんでしょう。悪魔たちも理由までは知らないようです。

 そうですね、ここはエルフ達に直接聞きましょうか。


「ということで来ました。シルフィ」

「マーガレット様。これはこれは、我が家にお越しいただきありがとうございます」


 頭を下げられますが……私、なんでエルフにここまで敬われているのかわからないんですよね。前に家を回った時もすごい丁寧に対応されました。


「馬が必要と聞いたんですが」

「そうなんです。農作業をするにあたって重いものの運搬や労働力として欲しいと思いまして……」

「なるほど」


 悪魔たちは力はあまりないですからね。魔法で出来なくもないでしょうけど、アーさんクラスにならないと精密な魔法は厳しいでしょう。

 私がやれば一瞬ですけど、働きたくないし、私一人の力に頼る状況はよくありません。私が倒れたら飢えてみんなが倒れるなんて事にはしたくありませんから。



「野生の馬……厳しいですよね。王国と取引なんてもってのほかでしょうし」


 そもそも、王国は私がここにいることを知っているのでしょうか? 


「他……帝国や神聖国との取引でしょうか?」

「取引ですが、私たちから出せるものがありません」


 たしかにシルフィの言う通りです。出せるものがありませんでした。そもそも悪魔が大量にいるここと取引してくれる所はないでしょう。


「よし、なら魔界から呼びましょう」


 困った時の魔界頼りです。


「何かあった時のために、フェンとアーさんを呼んできてもらえますか?」

「わかりました」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「それで、何を呼び出すのだマーガレット」

「アーさんは何がいいと思います?」

「労働力となる家畜のようなものだろう? 魔牛か?」


 魔界の牛さんですか。たしかに、家畜としてはいいのかもしれません。


「だが、魔牛は魔界の貴族が飼ってる事が多い。報復としてこちらに乗り込んでくる可能性もある」

「牛さんは却下です。別のものにしましょう」


 うーん、家畜って考えるから難しいのかもしれません。大きめの生き物くらいに考えてみましょう。


 大きさで制限をかけたゲートを開きます。さて、なにが出るでしょう。あ、なんかゲートに入ってきてますね。

 けど、ちょっと反応がおかしいような。


「……主よ。凄まじい魔力をゲートの向こうから感じるのだが」

「やっぱり私の勘違いではないようですね。ゲートを閉じましょう」


 不味いものが入る前に、ゲートを閉じます。


 閉じましたが、魔界側から再びゲートが開けられようとしてますね。これはまずい予感がします。


「アーさん、バレンタインを呼んできてください。あとみんなを待避させるのも」

「承知した!」

「……来るぞ、主よ!」


 急いでアーさんに動いてもらいますが、間に合いません。ゲートが開き、巨大な龍の頭がこちらの世界に出てきます。


『グハハハハ!俺を呼び出したのは貴様か!人間!』


 呼ぶものを間違えました。なんで家畜を呼ぼうとして龍が来るんですか。

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