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「ぐすっ……私はただ、みんながこの世界に行こうって盛り上がってたから、行ってみようかなって思っただけで……」
「ふむふむ」
このお肉、美味しいですね。味付けがとても私の好みです。この食事を多めに出すようエルフの皆さんに伝えておきましょう。
「聞いてないだろ私の話!」
「聞いてますよ、というかあなたも食べてください。せっかくの美味しい料理が冷めてしまいますよ」
「わ、わかった……」
「いただきます言いましたか?」
いきなり食べようとしましたねちびっこ。だめですよ、ちゃんといただきます言わなきゃ。エルフの人達が作ってくれましたから、こういう挨拶は大事です。
「い、いただきます」
「はい、どーぞ!」
今日の料理を作ってくれたエルフが笑顔でちびっこに返事をします。ちびっこはこういうのが慣れていないのか、少し照れてますね。子供らしくてかわいいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「ごちそうさまでした」」
とても美味しかったです。運動したぶんお腹が減ってましたし、いつもよりもたくさん食べてしまいました。
「よし、それじゃあ話を聞きましょうか。ちびっこ」
「ちびっこじゃない! 魔槍姫、バレンタインだ!」
「……わかりましたよ。バレンタイン、あなたは何しに来たんです?」
「だーかーら! みんなが楽しそうだったから私もこっちに来たんだってば!」
「それで出会ったフェンに対して攻撃したんですか?」
見境なさすぎませんか?
「だって、私は戦いが好きだから……」
「好きだからと言って、何してもいいわけじゃないですよ」
「魔界ではそれしかなかったんだ!」
バレンタインが少し泣きそうになって立ち上がります。フェンも、アーさんも否定しないあたり魔界では力が最重要事項だというのは深く魔界の生き物に結びついているのでしょう。
「魔界ではそうなのかもしれませんが、ここは魔界じゃありません。特に、私はみんなで仲良く暮らしたいんです」
仲良く、のんびりと暮らす。それが私の目標ですから。
「だから、ここでそれを学んでください。いいですね?」
「え、私、ここにいていいのか?」
「え、逆にここに残らないんですか?」
完全にここに残るものだと思っていました。なんで?と言われると自分でもよくわかりませんが……。なんででしょう、この子、生まれが魔界という環境だっただけで案外いい子そうだからでしょうか?
なんか、魔界に戻っても友達いなさそうっていうのもあります。
「……残ってもいいなら、残ってみたい」
「どうぞ。ただみんなを傷つけたら怒りますから」
「わかってる、もう泣かされたくないから戦うのは我慢する」
たしかに、またみんなを傷つけたら泣かします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……なぜ、魔槍姫をここに居させるのだ?主」
「一人ぼっちの子供は可哀想でしょう。ただそれだけです」
フェンはあの子の強い姿しか見てないんでしょうから、あの子が子供だということを忘れているんです。強くても、魔界の中で実力者だとしても、子供であることに変わりはありません。
そして、一人ぼっちの子供は寂しいんですよ。私も子供の頃友達と呼べるような人はいなかったし、作らせて貰えなかったのでよくわかります。
「フェンとアーさんは嫌かもしれませんが……」
「いや、主の決めたことだ。我は従う」
「魔槍姫が皆を攻撃しないのならば、マーガレットの決めたことに文句はない」
「ありがとうございます。二人とも。あ、そういえばアーさん。王国っていまどうなってます?」
定期的に嫌がらせをしてきましたが、現状のことはわかりません。久々にあの国の様子を聞いてみましょう
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