第5夜 書店員

「閉店ですね、店長」

「あぁ…最近は紙で本を読まない人が多くなってきているみたいだね、僕は紙派なんだけど」

「私もですよ、なんだか寂しいですね」

「うん、出版社もWebに切り替えていくんだろう…」

「私も本が好きだから、ちょっと寂しい気もしますね」

「そうだね、なんだか店を閉めることより、そういう時代なんだなと感じるほうが…なんだかね…寂しいような気もするね、僕は」

「手伝いますよ、箱詰め」

「ありがとう」

「紙の匂い…本に囲まれていると、不思議と落ち着くんです」

「ハハッ…図書館にでも勤めれば?」

「図書館に店長はいませんから…店長…私」

「ダメだよ…」

「心残りを…増やしたくないんです…お願い…」

「抱きしめるだけじゃダメなんだね…」

「本の香り…ココで抱いてください…私ずっと…こうしたかった」

「最後に…1度だけ…だよ」

「はい…んんっ…あっあぁ…」

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