白紙から生まれる

僕はなにも与えられなかった

両親はハズレクジをひいた

金も自由もいっぱしの娯楽もない

正しい友を得る機会もなかった

ただでさえなにもないというのに

身をすり減らせと搾取された末に

骨がらのようなモノになった僕は

こうして世の中に放り捨てられた


いやいや そんな顔をしないでくれ

悲観のはなしではないんだから


僕はなにも持たなかったからこそ

脳みそで膨大な世界を構築した

そこらに捨てられている裏紙を

すこしずつ拾い集めてきては

そこにそれを書きだしたのだ


そう まるで こんなふうにね


僕はなにも与えられなかったから

僕はなんでも創れるにんげんに

なることにしたんだよ 自由だ

果てしない自由が 白紙のうえに

生まれて 消えて 捨て 忘れて

書いて 癒して 存在し 会話した


僕はもう他になにもいらなくなった

この白紙さえ持っていればそれでいい

ソコにこの世のすべてがあるんだから

他になにを望むことがあるというんだ

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