暴露療法の末

感情を扱うということは暴露療法だ

すなわち深いこころの傷に残る痛みを

思い返すことでなにかを得る手段だ


君にはあるかい?途方もない挫折が

痛みを 傷を 噛み締めたことは?


ないとすれば それは君が痛みから

目を逸らして 生きてきた証拠だ

逃げるな 許されない 決して

なくならない 君は許されない


ただし 芸術で君を傷つけるのだから

もちろん 僕が その全責任を持とう

君が 希望や夢や希死念慮を抱いても

必ず 僕が責任をもつと 約束するよ


なぜなら 僕は世界を創り出す存在だ

君の痛みも 君の自由も 君の治療も

僕がそれを握っているんだ 安心しろ


そこらのくだらない思想の 演出家と

僕を決して一緒にしないでくれたまえ

彼らは君がどうなろうと責任をもたない

芸術の末に死ぬ君を 幕が終わるまで

愛してあげるのはこの世界で僕だけだ


僕は 君を 傷つけるつもりだ

僕は 君を 殺してしまうだろう

僕は 君を 最期まで愛している




おい お前 なにを突っ立っている

なにをみているんだ お前 お前だ


お前は 自分が扱っているその作品で

人を 殺している自覚が ないのか?


愚かな 芸術はいつか必ず人を殺す

そんなことすら 自覚してないのなら

世界を つくることはできやしないぞ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る