第8話 初報酬!

 街の門に帰ってくると、行く時と同じ衛兵が、まだ門番の任務についていた。

「帰ってきました〜。はいギルドカードです。」

「おかえり。上手く行ったかい?」

「はい。おかげさまで。」


 お礼を言ってギルドカードを受け取ろうとすると、衛兵さんが、

「良かった。冒険者として確かな一歩だね。これからも着実にな。…応援してるヒョウ〜。」

と、さっきの語尾でいじってきた。

「ぐぬぬ!殴って良いかにゃ!?」

ユイナが拳をにぎって唸ると、

「ごめん、ごめん、冗談だ。さっき微笑ましかったから、つい。本当に応援してるから。」

と笑いながら手を振って謝っていた。


「むぅ。それなら罪滅ぼしに泊まる場所紹介してくれにゃ。」

「うん?宿決まってないのかい?」

「昨日この街に来たところにゃ。テントを使える場所ならそれでも良いにゃ。」

「あっ、僕も寮を出ないといけないので、教えて貰って良いですか?」

ユイナと共に衛兵さんに宿泊先を聞くと、

「そうだなぁ。テントならこの道を真っ直ぐ行った広場の一部が、冒険者に開放されているから使えるよ。衛兵が管理してるし、見回りもするからそこそこ安心かな。

宿だと俺の親戚の店で良ければ、その広場の前の道を右に曲がると、『白い狐亭』という宿があるよ。ちょっと古いけど、値段も安めで、料理も美味しいと思う。俺の名前のセトの紹介って言えば、少しはサービスしてくれるかも。」

とテントが使える広場と良さそうな宿をお得な情報と共に教えてくれた。

「ありがとうございます。参考にさせてもらいます。」

「助かったにゃ。ありがとにゃ〜。」

「あぁ、またなー。」

衛兵のセトさんに挨拶をして、門をくぐり街へ入っていった。



「さてまずはギルドに報告かな。」

「うん。そうするにゃ。」

ということで宿を決める前に、冒険者ギルドに常設依頼達成の報酬を貰いに行くことにした。


 ギルドに入ると、受付カウンターにアスラさんがいたので、アスラさんの列に並んで順番を待った。


「あ、ライルさん、ユイナさん、おかえりなさい」

受付嬢のアスラは僕達に気付くと笑顔で迎えてくれた。

「アスラさん、常設依頼のゴブリンを倒してきたので、納品お願いします。」

とゴブリンの討伐証明部位を取り出すと、

「お!やりましたね。初依頼達成、おめでとうございます!!」

と言って、アスラは満面の笑みで手を叩いて祝ってくれた。

「ありがとうございます!」

「ありがとにゃ~」

事務的な対応じゃなく祝ってくれた心遣いに、依頼達成の実感が湧き、嬉しくなって、ユイナと共に笑顔になっていた。


ゴブリンの討伐証明部位を確認したアスラが、

「おっ、3匹分ですね。1匹3銀貨ですので、9銀貨となります。」

と報酬を渡してくれた。


「9銀貨、ちょっと宿に泊まるのは厳しそうにゃ~」

それを見たユイナが尻尾とケモミミをへにゃっとしながらつぶやいたので、

「1人分なら大丈夫だよ。今日はユイナが1人で倒したから、全部持ってったら良いよ。僕はまだ寮を使えるし。」

と譲ろうとしたが、

「それはダメにゃ!パーティーは平等に分けるにゃ。それに怪我なく倒せたのは、ライルが索敵して注意を引いてくれたからにゃ。」

とこれは大事なことと、ユイナは頑として受け入れなかったので、

「分かったよ。じゃあ4銀貨ずつで。残りは共同にしよっか。」

と平等に分けることになった。


報酬の分け方が決まると、ユイナが

「それより、ライルも近接用の武器がいるにゃ。守りやすさが全然違うにゃ。」

と提案してきた。

それを聞いて近接用の武器を持つ自分を思い描いてみたが、

「うーん。でも何ができるのか…アスラさんお勧めってあります?」

といまいちピンとこなかったので、受付嬢のアスラに聞いてみた。すると、

「扱い易さなら短剣や、メイスや棍棒などの打撃武器、両手が塞がっても良いなら棍や槍でしょうか。牽制と手数を増やすという意味でなら弓もありますが。」

とアスラは様々な冒険者を見聞きした経験を元に、可能性がありそうなのを挙げてくれた。

「弓は嫌な予感がするからやめてくれにゃ。」

「不器用さには自信があるから分かってるよ…棍棒拾っておけば良かったかな…」

と思わずつぶやくと、

「ゴブリンのですか?あれは粗悪品だからあまりお勧めしませんよ。」

とアスラは渋い顔で答えていた。

「ですよね〜。少し考えてみます。ありがとうございました。」


 お礼を言って、出て行こうとするとアスラは

「いえいえ、またいらして下さい。

あっそうだ、報酬を効率よく稼ぐなら、討伐のついでに薬草とかを採取するのも良いですよ。

判別して採取するのに知識が必要ですが。」

と報酬を増やすためのアドバイスもしてくれた。

するとユイナが

「薬草集めれば良いのか?それなら私が判るから任せるにゃ!」

と胸をドンと叩いていた。

「え、ユイナ薬草分かるの!?」

「フフン、豹族の部族出身なら当たり前にゃ」

胸を張ったユイナが自信満々に言うので、確認のためアスラにギルドで買い取ってもらえる薬草を挙げてもらい、薬草毎の特徴や採取方法をユイナに聞いてみるとほぼ完璧であった。

「す、すごい!」

「部族でイヤってほどやらされたからにゃ。加工はできないけどにゃ~。」


まさかユイナにこんな特技があるなんて、ホントに助かるし、出会えて良かった・・・ちょっと脳筋だと思っていたこと、心の中で謝っておこう・・・これは、見捨てて置いて行かれないように頑張らないと・・・と少し気合いを入れ直しながら、ギルドを後にしたのだった。

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