第30話 力の代償 2

「……やってくれましたね。ユウヤ様」


 一方、寂れた王の間では、ノエルが悩ましげにユウヤを見つめていた。ユウヤはその巨体を縮こまらせて申し訳なさそうにノエルを見つめる。


「す、すいません……」


「謝ることはありませんよ、ただ、そうですね……私はアナタに対する認識を少し改めなければなりませんね」


「え……」


 悲しそうにノエルは溜息をつく。その周りに位置する騎士団のメンバーも、リーナを除いて完全にユウヤを怖がっているようだった。


「……俺、この国から出て行ったほうがいいですよね。あはは……すいませんでした……」


「は? 何を言っているのです?」


 と、優しそうなノエルの顔が厳しくユウヤを睨む。ユウヤはつい物怖じしてしまった。


「え? だって……」


「それだけは許しません。アナタは既にこの国になくてはならない存在となった、いえ、いなくなってもらっては困るのです。既に、ヴァレンシュタイン王の元には兵士百人が皆殺しにされたという情報が遅かれ早かれ伝わるでしょう。頭に血が登りやすい王のことです。すぐにその十倍、いえ、百倍の兵を寄越してくるに違いありません」


「そんな……」


「ですから、いかにアナタが恐怖の対象であっても、私はアナタをこの国から追い出すことはできないのです。わかってくれますね?」


 決して否定の返事をさせない威圧感がノエルにはあった。ユウヤはただ黙って俯くしかなかった。


「そうと決まれば、誰か、ユウヤ様に鎧を作って差し上げる職人を紹介して差し上げなさい」


 騎士団のメンバー全員がえっ、と声を漏らす。


「先ほどその途中だったでしょう? 新入りの面倒を見てあげるのは騎士団の役目です。ですから、やってあげなさい」


「わかりました。で、でしたら私が――」


「リーナはダメです」


 元気よく前にでたリーナをノエルが厳しい声で遮る。


「な……なぜですか? 姫様」


「アナタは団長でしょう? 新入りの面倒を見るなら、団長より下の位のものが見るべきなのでは?」


「しかし――」


 ノエルの瞳はリーナの反論を許さないものだった。リーナは大人しく黙ってしまった。


 なんだ? 普通にリーナにやってもらえばいいじゃないか。


 リーナは既に俺が化物染みているっていうことを知っているんだから。なのに、どうしてわざわざ面倒臭いことを姫様は押し付けるんだ?


 ユウヤは少し不満に思いながらも黙ったままだった。


「では、皆さん。下がってください。私は疲れました」


 ノエルがそういうとリーナ以外の騎士団のメンバー足場やに王の間を去って行ってしまった。


「おい! みんな!」


 リーナが呼び止めても誰一人返事をしようとしない。そのまま王の間の扉を開けて出て行ってしまった。


「……ノエル様」


 恨めしそうな目で、リーナはノエルのことを見る。


「リーナ。騎士団の問題です。私はこれ以上口を挟むことではありません」


 ノエルもそういって王宮の間から出て行ってしまったのであった。

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