第26話 魔剣士と炎帝と氷帝の昼


「はぁっ、はぁっ」


「ちょっと、やりすぎたかな?」


 フェルニーナとレイシスタは座り込んだまま息を整える。そんな二人にキリヤが近づく。


「どう見てもやり過ぎだろ」

 

「だよねー。あ、さっきはありがとう。キリヤが守ってくれたんだよね」


「私の方も、助かったわ。自分で障壁を張る余裕も無いほど熱中するなんて……」


「うん。私も少し反省かな」


 落ち込む二人にキリヤがかける言葉を迷っていると、担任が近づいてくる。


「二人とも大いに反省しろ。はぁ、今日の授業はここまで。今回は目をつむるが、お前ら二人は特に力があるんだから自重しろよ」


「「はい、すみませんでした」」


 こうしてレイシスタ=フロール転入最初の授業は終わった。



 _________

 昼休み


「やっとお昼だー!」


 レイシスタは勢いよく立ち上がる。


「シスタうるさいわよ」


「だってお腹空いたんだもん。キリヤとニーナ、二人とやり合ってお腹ペコペコだよ。ニーナはお昼どうするの?」


「彼と一緒に食べるつもりだけど、一緒に来る?」


 フェルニーナの提案に、レイシスタは頷き、屋上に向かった。



 _______


「はい。キリヤくん。約束してたお弁当」


「おぉ、サンキュ」


 キリヤはフレイナから弁当箱を受け取り、開ける。


「へぇ~、ニーナの料理か」


「……食べたいなら私のを分けてあげるわ」


「やったぁ!」


 フェルニーナとレイシスタも互いの弁当を開ける。

 フェルニーナの弁当は米、肉、野菜とバランスのいい構成。対するレイシスタの弁当は肉オンリー。


「レイシスタの弁当は、何というか個性的だな」


「そうでしょ。私の地元だと毎日のように狩に出て肉ばっかりだったからね」


「全く。ほら、野菜を上げるから食べなさい」


「えぇ~。……あ、美味しい」


 レイシスタは次から次へとフェルニーナの弁当を口に運ぶ。


「シスタ、食べ過ぎ」


「ごめんごめん。代わりに私の肉食べていいよ」


「そう?じゃあ遠慮なく」


 二人は互いの弁当を交換し合い、食事を進める。


「うん。フレイナの弁当美味いな」


「ね。さすがニーナ」


「お口に合ったのなら何より。それでキリヤくんはどうして遅刻してきたの?」


「ん?あぁ、ただの寝坊だ」


「寝坊って、……もしかしてキリヤくん寮に入ってないの?」


「入ってないぞ。前にも言った通り金が無いからな。今は街の隅にあるボロ宿に泊まってる」


「なるほど。だからあそこに居たんだ。……ごちそうさま」


「そういうことだ。ごちそうさま」


 三人は弁当箱を片付ける。

 そしていると、屋上の扉が開く。


「兄貴!コーヒーを買ってきました!」


 扉を勢いよく開いたディルは、キリヤにコーヒーを渡す。


「ありがとな。……やっぱ美味いな」


「喜んでいただき何よりです!それで、なぜフロール嬢がここに?」


「ニーナに誘われてね。ところで君は……ごめん名前何だっけ?」


「あなたね……」


「仕方ないじゃん、まだ学校に来てから一日目だし」


「ま、それもそうだろ。ディル、自己紹介してやれ」


「はい!俺の名前はディルガス=ライデルト。ライデルト家の次男にして、キリヤの兄貴の舎弟です!」


「お、おぉ~。キリヤの舎弟か。貴族を射程にするなんてやるね」


「まぁ成り行きでな。ちょっと戦ったら懐かれた」


「なるほど。……そういえばキリヤって色んな魔剣持ってるけど、どうやって持ち運んでるの?」


「普通に鞘に入れてだけど?」


 キリヤは腰の鞘を撫でる。

 そのキリヤの鞘を見て、三人は首を傾げる。


「鞘にってそりゃあ鞘には入ってるけど」


「まぁ見た方が早いだろ。まずは、『斬魔』」


 鞘から『斬魔ノ魔剣』を抜く。そして床に突き立てる。そして空っぽの鞘に手をかざす。


「次に、『風魔』」


 その瞬間、空っぽだった鞘に魔剣『風魔』が現れる。キリヤは現れた風魔を抜く。


「えっ!?」


「なっ!?」


「おぉ!」


 三人はどこからともなく鞘の中に現れた魔剣に驚く。


「その鞘って、魔道具なの?」


「その通り。この鞘は無限に剣を収納することが出来る」


 キリヤが風魔を鞘に納めると、その瞬間に風魔が消える。そして空になった鞘に斬魔を納める。


「収納の魔道具。剣限定とは言え無制限の収納ってかなりのレアものね」


「まぁ今の時代剣限定の収納なんて誰も欲しがらないけどね。その魔道具もそうだけど魔剣とかもどこで手に入れたの?」


 キリヤはコーヒーを飲み干し、レイシスタの疑問に答える。


「魔剣は金稼ぎのため旅に出た先々で出会ったんだよ。鞘は師匠から貰ったものだ」


「「師匠?」」


 三人は師匠という言葉に反応する。


「俺に戦い方やソロモンの指輪のことを教えてくれた師匠だ。いまは妹の看病をしてくれてる」


 四人が話しているとチャイムが鳴り、四人は教室に戻った。

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